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日記兼短文落書置場..........。

日記だったり短文や絵を載せたり等々何でも賄えなノリで。

2025'05.10.Sat
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2008'11.29.Sat

降り注ぐ雨は弱まることを知らず、辺り一面を濡らしていく。その冷たさは次第に体力を奪い去り、濡れて張り付く衣服は動きを鈍らせる。
「結構酷いわね、これは早く宿に戻らないとキツいかもよ」
重くなった羽織を頭から被り、苦々しい顔を浮かべる彼を下から見上げる。冷たい雨水からあたしを守る、と言って彼はあたしの分まで雨水を浴びていた。
「おっさんは先に戻りなさいよ、あたしは一人でもどうにかなるわ」
「足挫いてる子が何言ってんの、子供はもっと大人に頼るものよ」
そう、あたし達がこんな雨の中町外れで立ち往生してるのはあたしの捻挫が原因。合成素材を探しに町から直ぐの平原でおっさんとあたしと、あとラピードで他のみんなとは別行動していた。この辺の魔物は弱いのばかりだし、何かあれば直ぐに町に戻れる距離だからと、気を抜いていたのは否定できない。魔物の突進を避ける為のバックステップで、雨にぬかるんだ地面に足を取られ右足を捻挫したのだ。
「ラピードが戻ってくるのを待ってたら流石に危ないかも…。リタっち、歩けそうかい」
応急処置で施された治癒術も足の痛みを少し緩和した程度で、より足場の悪くなっている地面を歩くのには無理があった。少し踏ん張ってみても力が入らず膝を付いてしまう。
「やっぱり、無理よ」
そう呟けば彼は何か考えているのか少し上を向いて動かなくなった。その間が何故か長く感じて、無言のその時間に気まずくなる。その間も彼は雨に打たれたままだ。
「しょうがないわ。リタっち、おっさんの背中に乗りなさいな」
彼が深く息を吐いたかと思うと、そう言って羽織をあたしに被せる。いきなりのことに戸惑っている私を無視して、彼は背中を向けてしゃがみこんでいた。
「な、乗れる訳無いでしょそんなとこ」
「そう言わずに早く乗ってよ、俺様冷えちゃう」
そう茶化す彼の姿は今は薄いシャツ2枚だけで、それは雨水を吸って張り付いていた。そう言えば彼は寒さが苦手の筈。今の状態は相当堪えている筈なのに、そんな素振りは一切無い。
「………、仕方ないわね」
あたしの為に我慢しているんだと思うと申し訳無く思えてきて、意地を張るのが馬鹿馬鹿しくなった。苦し紛れにそう言って彼の背中にしがみつけば、そこは思っていたよりも冷たかった。
「あんた、身体随分冷えてるんじゃ」
「んー…リタっちが温かいだけでしょ、子供は体温高いって言うし」
そう言いながら軽々とあたしを背負い上げ、すたすたと歩き始める。その様子に、やっぱり彼は大人何だと思い知った。しがみついた背中は随分と大きい。濡れたシャツが何だか気持ち悪かったけど、不思議とそれに安心した。
すると一気に力が抜けたのか、彼にもたれ掛かる格好になってしまう。もう、そのまま身を預けてしまおうと顔を沈めれば、彼の上げられた後ろ髪が顔に刺さった。
「………邪魔」
「ちょ、リタっち何してんのよ」
するりと髪紐を解けば雨水で湿っていた髪は重力に従って下へと落ちる。突然の事に戸惑う彼を後目に、邪魔物が無くなった後ろ髪に顔を沈めた。


「……、全く」
後ろから聴こえる小さな寝息に、微笑ましくなる。髪紐を解かれたせいで落ちてきた前髪が邪魔だけれど、両手は塞がってしまっているし、何となくこのままで良い気がした。
「帰ったらみんなに何て言われるかね」

雨はもうすっかり上がっていた。



選択制お題より。
配布元:Abandon



水も滴る良いおっさんを目指してみた。
あとはリタに髪紐解かせたかっただけです(笑

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