2008'06.14.Sat
ミトゼロ ゼロス戦。
ふわりと揺れる羽はまるで全てを悟っているかのようだった。
「お前も大概狂っているね」
喉に添えられた短剣が微かに皮膚を切って一筋の赤い線を生み出す。それでも微動だにしない喉元を眺めながら嘲笑う。翡翠の眼は、少しも揺れない。
「まぁ、此処まで面倒を見た甲斐はあったって事なのかな」
カランと音を立てて短剣は彼の足下に落ちる。ふわりと赤い髪を靡かせてしゃがみ込み、それを拾った。至極大切そうにただの短剣を握って、腰の鞘にしまう。
「ミトス様の為ですから」
翡翠の眼が嬉しそうに笑った。
醜い笑顔を貼り付けて、仲間と呼んでいた者達と対峙する。橙色の羽を背から生やして、切りかかっていく様を間接的に見ていた。ロイド達は戸惑いを隠せずにいたけれど、それでも直ぐに向かい討つ。彼は最初こそ飄々とした戦い方をしていたけれど、直ぐにその表情は余裕を無くしていく。元々が多勢に無勢。圧倒的な力を有しない彼の行く先など目に見えている。
彼が本当に望んでいたことなんて、とうの昔から知っていたのだ。分かっていて彼を駒として育てた。憎い人間には変わりなかったのに、何故か今の今まで側にいた。どこか似ている部分が僕達にはあったのかもしれない。結局僕が手放さなかっただけなのだ。彼は彼自身の望みの為に行動しているに過ぎない。
気が付けば彼は息を上げていて、もうこの戦闘は長く続かないだろう。思い付く先の光景に通信を切ろうとすれば、彼は上を見上げてまるで目が合わせるかのようにして。
静かに、笑った。
ゆっくりと腹部から抜かれた剣は真っ赤な血を滴らせながら床へと転がる。刺した張本人は茫然と立ち尽くしていた。彼はそんな様に苦笑しながら床に倒れ込んだ。 かつて彼が仲間と呼んだもの達が、彼のそばに駆け寄る。今にも泣きそうなロイドが、彼を抱き起こそうとしていた。
彼はやんわりとその腕を払って、首を振る。
「俺の輝石、ちゃんと壊せ、よ」
彼がそう言ったのか辛うじて通信で拾える。けれどそれはもう本当にか細い声だった。躊躇するロイドの腕を掴んで、ゆっくりと胸の輝石へと誘導する。耐えきれず泣き出すロイドに、彼は。
優しく、笑って。
ぷつ、という音と共に通信を切った。すると訪れるのは静寂。自分以外誰もいない寂しい部屋を静かに後にした。
「でも、一応僕はお前を愛しているんだよ」
背を向け死地に向かう彼にそう言えば、彼は困ったように、笑って。
「それ、このタイミングで言いますか」
悲しそうに呟いた。
マガで流したミトゼロミトス戦話となんとなく対な話。
どっちでも損な役回りのロイド(苦笑
ふわりと揺れる羽はまるで全てを悟っているかのようだった。
「お前も大概狂っているね」
喉に添えられた短剣が微かに皮膚を切って一筋の赤い線を生み出す。それでも微動だにしない喉元を眺めながら嘲笑う。翡翠の眼は、少しも揺れない。
「まぁ、此処まで面倒を見た甲斐はあったって事なのかな」
カランと音を立てて短剣は彼の足下に落ちる。ふわりと赤い髪を靡かせてしゃがみ込み、それを拾った。至極大切そうにただの短剣を握って、腰の鞘にしまう。
「ミトス様の為ですから」
翡翠の眼が嬉しそうに笑った。
醜い笑顔を貼り付けて、仲間と呼んでいた者達と対峙する。橙色の羽を背から生やして、切りかかっていく様を間接的に見ていた。ロイド達は戸惑いを隠せずにいたけれど、それでも直ぐに向かい討つ。彼は最初こそ飄々とした戦い方をしていたけれど、直ぐにその表情は余裕を無くしていく。元々が多勢に無勢。圧倒的な力を有しない彼の行く先など目に見えている。
彼が本当に望んでいたことなんて、とうの昔から知っていたのだ。分かっていて彼を駒として育てた。憎い人間には変わりなかったのに、何故か今の今まで側にいた。どこか似ている部分が僕達にはあったのかもしれない。結局僕が手放さなかっただけなのだ。彼は彼自身の望みの為に行動しているに過ぎない。
気が付けば彼は息を上げていて、もうこの戦闘は長く続かないだろう。思い付く先の光景に通信を切ろうとすれば、彼は上を見上げてまるで目が合わせるかのようにして。
静かに、笑った。
ゆっくりと腹部から抜かれた剣は真っ赤な血を滴らせながら床へと転がる。刺した張本人は茫然と立ち尽くしていた。彼はそんな様に苦笑しながら床に倒れ込んだ。 かつて彼が仲間と呼んだもの達が、彼のそばに駆け寄る。今にも泣きそうなロイドが、彼を抱き起こそうとしていた。
彼はやんわりとその腕を払って、首を振る。
「俺の輝石、ちゃんと壊せ、よ」
彼がそう言ったのか辛うじて通信で拾える。けれどそれはもう本当にか細い声だった。躊躇するロイドの腕を掴んで、ゆっくりと胸の輝石へと誘導する。耐えきれず泣き出すロイドに、彼は。
優しく、笑って。
ぷつ、という音と共に通信を切った。すると訪れるのは静寂。自分以外誰もいない寂しい部屋を静かに後にした。
「でも、一応僕はお前を愛しているんだよ」
背を向け死地に向かう彼にそう言えば、彼は困ったように、笑って。
「それ、このタイミングで言いますか」
悲しそうに呟いた。
マガで流したミトゼロミトス戦話となんとなく対な話。
どっちでも損な役回りのロイド(苦笑
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