2008'06.10.Tue
穏やかな日差しの中、青々と繁る葉の下に男が二人。片方はその立派な幹に身を預け、もう片方はその側で完全に横になっていた。
ゆっくりとした時間が過ぎている。彼らにとってそれは一時的な息抜きでしかなかったが、何故かそう感じさせる雰囲気がそこにはあった。
「……ねー、ロイドくん」
「…ん、」
「平和、だよな………」
「ああ、そうだな」
静かな風にふんわりと揺れる長い紅髪を横たわる男は下から触りながら何気ない会話を続けていく。その様は恋人達の甘い一時に違いなかったが、彼らにはそれが特別なものに感じられて仕方なかった。
明日になれば今日のこの時間もかき消されてしまうような厳しい日々がまた始まる。覚悟して臨んだ事だ。止めるなど決して考えもしないが、それでも時には全てを忘れたくなることだって、ある。
この今の時間はまさにそれを叶えてくれるような、そんな時間だった。
「……ちょっ、ロイドくすぐったいんだけど」
「お前の髪ってさらさらだよな」
「……そりゃまあ、それなりに手入れしてるし」
「それに柔らかいし」
「まぁ、猫っ毛だし……」
「いい匂いがする」
男は軽く身を起こして柔らかい髪に鼻を寄せ、そのまま一房に口付ける。ふわりと香るシャンプーの匂いに頬を緩ませた。相手の顔を紅髪の隙間から覗けば、少なからず照れているのが見て取れる。
「ゼロスって、かわいいよな」
「え、な……いっ、うわっ」
ぐいっと一房を引っ張れば、幹に預けていた体がバランスを崩して倒れ掛ける。慌てる相手を楽しげに眺めながら、男は手を紅髪に埋めて引き寄せた。
そのまま下から口付ければ驚いた顔がまじまじと見え、くぐもった声が響く。紅髪がカーテンのように降り掛かっていて、とても綺麗だった。
その幻想的な様子を眺めながら、何度も何度も咥内を味わう。やがて苦しそうな声が上から降ってきて、男は渋々口を離した。
頭を引き寄せていた腕の力を抜けば、そのまま地面へと背中から倒れ込む。つられるように相手も手前に倒れ込んだ。
肩で息をする相手の頭をゆっくりと撫でる。相手が一際赤くなった顔を上げればどちらともなく笑いが零れた。
「平和だよなぁ」
「ほんとだぜ」
「………なぁ、ゼロス」
「ん…なに、ロイド」
「もう少し、いいか……」
そう言いながらも腕には既に力が籠もっていて、返事を返す前に再び口は塞がれる。
繁った葉の風に揺れる音だけが、静かに 響いていた。
2008年版ロイゼロの日。
始終ほのぼのを通したつもりなんですが、如何でしょう。
ラタの発売直前にあえてED後二人旅で。
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