2009'12.21.Mon
困るとこういうことするのは相変わらず。むしろ今更上げるのか(苦笑
ということでメルマガログ9月分です。
仲間に頼まれて久しぶりに足を踏み込んだそこは、机の上から溢れた書類達が床にまで散らばって足の踏み場も無い様な状況だった。余りの荒れ具合にどこかの魔導士みたいだな、と呆れの溜め息を吐きながら、床の隙間を探しては少しずつ奥に進む。
「……ったく、本当にここに居るのかよ」
部屋の奥も相変わらずの様子で、仕方無く足を翻そうとすれば、がたり、という物音がして、足を止めた。続けて積み上がった書類が崩れる音が大きく響いた。
「……痛ぁ、あー…やっぱりベッドに積むんじゃなかったかな……て、あれ?」
その崩れた書類の山の中からぼそぼそと聞き慣れた声が聞こえてきた。呆然とその場に立ち尽くしていれば、見上げてきた顔と目が合う。
「……せーねん?」
ぼさぼさの髪に隠れた翡翠色の寝ぼけ眼が、真っ直ぐに俺を見つめていた。
「それでわざわざここまでねぇ……ご苦労なことで」
「依頼のついで、だ。城に寄る仕事が有ってな」
「別に同じじゃないの。……それにしても、驚いたでしょ」
「まぁな、こりゃあリタの家より酷いだろ」
一時的に片付けられたテーブルの上に並べられたコーヒーカップを手に取り、部屋を見渡しながらそう苦笑する。そんな俺の様子に彼も苦笑しながら、淹れ立てのコーヒーに口を付けた。
「騎士団の再編成に結構手間取っちゃってて、あんまりダングレストにも顔出せて無いのよ。だからユニオン関係のもごっちゃになっちゃってさ、この有り様ってわけ」
一口飲んでから、そう言って溜め息を吐く。その表情は疲れ切っていて、いつも見ていた飄々として胡散臭いおっさんの姿とはかけ離れていた。辛うじて服はレイヴンだけれど、ぼさぼさの髪は下ろされたまま、乱れた前髪に片目も隠れていて、それらが表情に相まって更に隊長主席としての彼の姿を彷彿とさせていた。
「その分じゃ休みも殆ど取ってないんだろ」
「今は時間が惜しいからねぇ、仕方ねえわよ」
そう言って誤魔化す様に、いつもの張り付けられた笑みを向けられる。その姿が余りに無理をしていて、それを見ているだけの自分に歯痒くなった。手伝える事は何でも手伝うと言っておきながら、結局は、彼の仕事は彼にしか出来ない事ばかりで、俺達は彼の噂を遠くで聞いているだけだったのだ。
「……なぁ、俺達にも出来る事は、」
「前にも言ったけど、これはおっさんが逃げたツケだもの。青年達の気持ちは嬉しいけど、俺自身で片付けたいの」
ごめんね。と申し訳無さそうに目尻を更に下げながら呟く。その姿にそれ以上何も言えなくて、誤魔化す様に冷えた甘ったるいコーヒーを一気に飲み干した。
「じゃ、とりあえずおっさんは生きてたみたいだし、帰りますか」
「生きてた、って酷いわね」
「あんたが全然連絡寄越さないのがいけねぇんだろ」
「おっさんは忙しいのよ、そんなに俺が気になるならまた来れば良いでしょー」
「そうだな、今度は全員でおっさんの様子、見に来てやるよ」
帰り際に笑いながらそう言えば、彼にはそれが予想外だったらしく目を大きくしながら呆気に取られていた。その姿はやっぱり見慣れたおっさんで、何だか安心してまた笑いが漏れた。
「だから、それまで勝手に倒れるんじゃねぇぞ、おっさん」
「な、何よその言い分っ……」
「おっさんの命は凛々の明星のものなんだろ」
そう言えば、一瞬困った様に固まって、すぐに小さく笑い始める。次第に大きくなるそれに、同じ様に笑みを向けた。
「もう、本当に容赦ないんだから……わかったわよっ、おっさん元気に頑張るから、青年達も必ずみんな揃って元気な顔見せなさいよねっ」
そう高らかと宣言された台詞に、当たり前だろとそう返せば、彼は静かに微笑んだ。その顔に満足して相変わらず書類の散らばる部屋を後にする。
そしてまたこの部屋にみんなを連れて来ないとな、とそう誓って、城を後にした。
『予定は未定で未来は不確定。』
選択制お題より。
配布元:Abandon
ということでメルマガログ9月分です。
仲間に頼まれて久しぶりに足を踏み込んだそこは、机の上から溢れた書類達が床にまで散らばって足の踏み場も無い様な状況だった。余りの荒れ具合にどこかの魔導士みたいだな、と呆れの溜め息を吐きながら、床の隙間を探しては少しずつ奥に進む。
「……ったく、本当にここに居るのかよ」
部屋の奥も相変わらずの様子で、仕方無く足を翻そうとすれば、がたり、という物音がして、足を止めた。続けて積み上がった書類が崩れる音が大きく響いた。
「……痛ぁ、あー…やっぱりベッドに積むんじゃなかったかな……て、あれ?」
その崩れた書類の山の中からぼそぼそと聞き慣れた声が聞こえてきた。呆然とその場に立ち尽くしていれば、見上げてきた顔と目が合う。
「……せーねん?」
ぼさぼさの髪に隠れた翡翠色の寝ぼけ眼が、真っ直ぐに俺を見つめていた。
「それでわざわざここまでねぇ……ご苦労なことで」
「依頼のついで、だ。城に寄る仕事が有ってな」
「別に同じじゃないの。……それにしても、驚いたでしょ」
「まぁな、こりゃあリタの家より酷いだろ」
一時的に片付けられたテーブルの上に並べられたコーヒーカップを手に取り、部屋を見渡しながらそう苦笑する。そんな俺の様子に彼も苦笑しながら、淹れ立てのコーヒーに口を付けた。
「騎士団の再編成に結構手間取っちゃってて、あんまりダングレストにも顔出せて無いのよ。だからユニオン関係のもごっちゃになっちゃってさ、この有り様ってわけ」
一口飲んでから、そう言って溜め息を吐く。その表情は疲れ切っていて、いつも見ていた飄々として胡散臭いおっさんの姿とはかけ離れていた。辛うじて服はレイヴンだけれど、ぼさぼさの髪は下ろされたまま、乱れた前髪に片目も隠れていて、それらが表情に相まって更に隊長主席としての彼の姿を彷彿とさせていた。
「その分じゃ休みも殆ど取ってないんだろ」
「今は時間が惜しいからねぇ、仕方ねえわよ」
そう言って誤魔化す様に、いつもの張り付けられた笑みを向けられる。その姿が余りに無理をしていて、それを見ているだけの自分に歯痒くなった。手伝える事は何でも手伝うと言っておきながら、結局は、彼の仕事は彼にしか出来ない事ばかりで、俺達は彼の噂を遠くで聞いているだけだったのだ。
「……なぁ、俺達にも出来る事は、」
「前にも言ったけど、これはおっさんが逃げたツケだもの。青年達の気持ちは嬉しいけど、俺自身で片付けたいの」
ごめんね。と申し訳無さそうに目尻を更に下げながら呟く。その姿にそれ以上何も言えなくて、誤魔化す様に冷えた甘ったるいコーヒーを一気に飲み干した。
「じゃ、とりあえずおっさんは生きてたみたいだし、帰りますか」
「生きてた、って酷いわね」
「あんたが全然連絡寄越さないのがいけねぇんだろ」
「おっさんは忙しいのよ、そんなに俺が気になるならまた来れば良いでしょー」
「そうだな、今度は全員でおっさんの様子、見に来てやるよ」
帰り際に笑いながらそう言えば、彼にはそれが予想外だったらしく目を大きくしながら呆気に取られていた。その姿はやっぱり見慣れたおっさんで、何だか安心してまた笑いが漏れた。
「だから、それまで勝手に倒れるんじゃねぇぞ、おっさん」
「な、何よその言い分っ……」
「おっさんの命は凛々の明星のものなんだろ」
そう言えば、一瞬困った様に固まって、すぐに小さく笑い始める。次第に大きくなるそれに、同じ様に笑みを向けた。
「もう、本当に容赦ないんだから……わかったわよっ、おっさん元気に頑張るから、青年達も必ずみんな揃って元気な顔見せなさいよねっ」
そう高らかと宣言された台詞に、当たり前だろとそう返せば、彼は静かに微笑んだ。その顔に満足して相変わらず書類の散らばる部屋を後にする。
そしてまたこの部屋にみんなを連れて来ないとな、とそう誓って、城を後にした。
『予定は未定で未来は不確定。』
選択制お題より。
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