2009'11.20.Fri
『優しい光は誰を殺すのか。』
「優しいわね、青年は」
ぽつりと呟かれたそれは、まるで風に紛れるかの様に消える。見据えた翡翠の瞳は静かに笑っていて、逆にそれが酷く儚げで、恐かった。
まるで何処かに消えてしまいそうで。
抱き締めた身体は小さくて、腕の中にすっぽりと収まってしまう。このまま逃がさなければ、彼は消えずに居てくれるだろうか。
「青年、せーねん………ユーリ」
耳元で何度も俺を呼ぶ彼の声がとても心地よくて、一層腕に力を込めて、彼との距離を縮めた。
「ちょ、ユーリ、苦しいわよ」
「良いからもう少し抱きしめられてろよ、おっさん」
そう言えばたれ気味の目をきょとんとさせてから、笑みを浮かべて俺の頭をぽんぽんと叩いた。まるで子供扱いのそれに不機嫌な顔を向ければ、声を上げて笑った。
「青年もまだまだ甘えたなのね、おっさん安心したわ」
「別に俺は、そんなつもりねぇぞ」
それはまさに子を見つめる親の様で、気恥ずかしいような、悔しいような、そんな気分だった。
「うんうん、分かってるわよ、俺はそんな青年が大好きだもの」
そう言ってにっこり笑う彼は、やっぱりどこか寂しげで、そんな表情を見たく無くて、もう一度強く抱き締める。
耳元で聞こえたのは、溜め息混じりの小さな苦笑だけだった。
選択制お題より。
配布元:Abandon
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