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日記兼短文落書置場..........。

日記だったり短文や絵を載せたり等々何でも賄えなノリで。

2025'05.10.Sat
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2009'06.08.Mon


がんがんと叩かれる様な痛みに揺れる意識。地面を蹴る足元がふらつくのは必死で堪えるが、両手に構えた剣を振り上げる時には身体がぐらついてしまう。目の前の魔物がどこか遠くに感じられて、流石にやばいなと、熱にぼんやりと浮かされる意識で考えていた。
「虎牙連、斬……っ!」
みんなに感づかれる前に、早くこいつらを倒してしまおう。そう思って繰り出した技は更に頭をぐらぐらと揺らす羽目になってしまって、思わず着地点で膝を着いてしまう。早く立ち上がらないと。そう思っていても足は言う事を聞かず、そこから動く事が出来なかった。
魔物の雄叫びが随分と遠くに聞こえる。視界はぼやけていて何が何だか分からない。けれど危険だと言う事だけは分かっていた。どうにか顔だけでもそっちに向けようと頭を捻れば。
そこにはルカの顔が、あって。


「スパーダッ!!」


彼の動きが何だか今日はおかしいのには気付いていた。いつもなら素早い動きで技を連携していくのに、今日は何だか動作一つ一つに間があって、禄に連携も繋がっていなかった。どうしたんだろうと彼を見れば、辛そうに息を切らしていて、顔色がとても悪かった。更には技の後に膝を着いて動かなくなってしまう。
まさか、と思って彼の方に行こうとすれば、そのすぐ後ろで魔物が襲いかかろうとしていた。それでも彼が動く様子は無い。急いで近くまで駆け寄って勢い良くその魔物を斬り倒した。
倒れる魔物の横で彼は定まらない視線を泳がせていた。尋常じゃないその様子に名前を叫ぶけれど反応は無い。ゆっくりとこっちを向いたと思えば、そのまま身体が倒れ込んできて、とっさに剣を捨ててそれを支える。
抱き抱えた身体は、とても熱かった。




遠くで声が聞こえた。真っ暗な視界の中で聞こえたそれに促されるように瞼を上げれば、そこに見えたのは二つの人影。
銀色とピンクの頭が俺を見下ろしていた。
「スパーダ兄ちゃんッ」
「大丈夫、スパーダ?」
見つめてくる視線は心配そのもの。そう言えば俺は戦闘で体調が悪くて、それで。
「スパーダ、戦闘中に倒れたんだよ?覚えてない?」
そうだ。目の前の、このルカの顔を見てからの記憶は無い。言っている事と合わせて考えても、俺はみんなの前で倒れたんだろう。
「あー…わりぃな、迷惑かけてよ」
「そんな事思ってないよ、大事にならなかったし、良かった……」
「うち、みんなに起きたって知らせてくるでっ」

ばたばたと慌ただしく部屋を後にする足音を聞きながら、さっきから真っ直ぐ見つめてくる翡翠の瞳と目が合う。やけに鋭い視線が突き刺さってきて、そのらしくない様子に戸惑った。
「おい、ルカ……お前、もしかして」
「怒ってないよ。何も言ってくれなかった事を怒ってたりはしないから」
そう言う声色は変に優しくて、いや確実に怒ってるだろ、と心の中で呟く。口にはしない、と言うか出来ない。その分、心配してくれた事もよく分かっていたから。
「とにかく、今は安静にして熱を下げないとね、ただの風邪だって甘く見てると危険だよ」
そう冷静に症状を判断する様子はまさに医者の様で、そう言えばこいつは医者志望だっけかとぼんやり考える。なよなよしてるようで実はしっかりしてるんだよな。そんな風に思いながらルカの方を向けば。
目の前に、その翡翠の瞳があって。

こつん。

「熱は上がって無い、ね。なんかぼーっとしてたけど、大丈夫?辛いならまた横になった方が……スパーダ?」
「………、っ」
軽く音を立てて触れた額が、そう言って直ぐに離れていく。心配そうに見つめてくる瞳に、顔が熱くなった。
不意の出来事に、心臓の音がやけに煩く響く。それに更に戸惑って、動く事も出来なかった。

「みんな呼んできたでー……ってどないしたん?」
「ちょっと、顔赤いわよスパーダ。あんた大丈夫なの?」

出て行く時と同じ音で、けれど増えた足音が部屋の前まで響いてくる。扉が開くと同時に聞こえてきたのはその台詞。それを聞いた瞬間、固まっていた身体がびくっと震えて我に返る。そのまま隠れる様に毛布を被って背を向けた。
「だめよ二人共、病人の前では静かにしなきゃ。でもスパーダ君の目が覚めて、本当に良かったね」
「ベルフォルマもミルダに感謝するんだな」
背を向けた俺に聞かせる様に言われたその台詞に、何の事だと頭を捻る。毛布を被ったまま続きの言葉を待てば、淡々と続けられたその台詞に、また顔が熱くなった。

「お前が起きるまでミルダはずっと付きっきりだったのだからな」
「僕の事は良いんだ、僕に出来るのはこれくらいだし」

毛布越しに聞こえた照れた様な台詞に、尚更、毛布から出る事は出来なかった。





選択制お題より。
配布元:Abandon




10万打リクエストのルカスパです。定番の風邪ネタですが結構書いてて楽しかったです(笑
リクエスト反映出来てるか不安ですが、どうでしょう。
sawori様リクエストありがとうございました!

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