2008'10.22.Wed
ED後、ゼロスとコレットが結婚して子供が居ます。何気に救われない話なので、ご注意くださいませ。
「そうか、ついにこの町から出てくのか」
「うん……ごめんね、ロイド。貴方からゼロスを奪っちゃって」
「何言ってるんだよ、これで良かったんだって何度も言っただろう」
「……でも、ゼロスは」
「俺はあいつと一緒に居たらいけないんだよ。ゼロスには生きてて貰いたいからな」
「うん、わかってる」
「……これは俺のエゴなんだよ。コレットを巻き込んだのは悪いと思ってる、でも、他の奴には頼めないしな」
「巻き込まれたなんて思ってないよ、私もゼロスには生きていて欲しいもの」
「そっか……」
「……ごめんねロイド、そろそろ行かないと」
「ああ、最期にお前の顔が見れて、良かったよ」
木に囲まれた古びた家を背にして、静かに扉を閉めた。昔と変わらず、町とは離れた場所に存在するその家は、寂しそうに佇んでいる。遠目でその家を見送って、その空間から立ち去った。
今にも溢れそうな涙を堪えながら、町へと向かう道を早足で降りる。町の入り口では彼が待っていてくれた。その姿を見るなり堪えていた涙が零れ落ちる。そんな私を彼は優しく抱き締めてくれた。
一番泣きたいのは貴方の筈なのに。
「おかえり、コレット」
静かな声で優しい笑顔で、私を慰めてくれる。私の、旦那様。
それは数年前の事。
「久し振りだなぁ、コレットちゃん」
珍しくこの家に訪れた彼は、昔と変わらない様子で明るく振る舞っていた。私もあの頃の仲間に会わなくなって随分と経っていたから、彼に会えたのがとても嬉しかった。久し振りに昔話に花を咲かせようかと思ったけれど、彼の様子は何だかおかしくて、嫌な予感が頭をよぎった。
「ロイドは、一緒じゃないんだね」
そう言えば、彼は途端に表情を暗くして俯く。それだけで私は解ってしまった。もう、そんな時が来てしまったのだと。
「……つい1週間前に、倒れたんだ。命に別状は無いけど、もう旅は続けらんないって、よ」
もう何度も繰り返した。何度も何度も私達は別れを繰り返して、もう私達しか残って居なかったのに。私達は2人っきりになってしまう。
「それでさ、……コレット」
絶望にも似た悲しみに耽っていると、彼が稀に聞く真摯な響きで私の名前を呼ぶ。彼にしては珍しいその呼び方に背筋がぞくりとした。跳ねるように頭を上げて彼を見れば、彼は優しく笑って。
「俺達、結婚……しないか」
泣きそうな声でそう言った。
今思えばこれは必然だったのかも知れない。長い時を生きる事になってしまった私達は、時から取り残された。周りが目まぐるしく変わっていく中で、私達だけは変わらずに、あの時のまま。なんで、なんて考えなくても解ってた。
同じ場所に居続ければやがて奇異の目を向けられ、逃げるようにいろんな場所を転々としていた。最初は先生とジーニアスも一緒だったけれど、彼等は先に逝ってしまった。3人だけになって、それでも2人はエクスフィア回収の旅を続けていたから、私は独りで隠れるように過ごしていた。
寂しくなかった、とは言わない。でもこの寂しさを共有できる人は2人以外にもう居なかった。もう終わりにしてしまおうと何度思ったか分からない。でも1人で死んでいく方がもっと怖かった。
彼の言葉の返事を泣きながら返していた時、私は心のどこかで安堵していた。漸く独りから抜け出せるのだと、楽になれると。彼は私と同じだから。他のみんなとは違う、同じ境遇の、私の分身。きっと何もなければこれからも同じ時間を共に生きていける。ロイドには本当に酷いと思うけど、彼がロイドの側から離れて、私の所に来てくれたのが本当に嬉しかった。
彼が、ロイドと共に逝ってしまう心配は無くなったのだから。
彼がロイドの側から離れて、私の元へ来てくれた時、本当はロイドに言われた事を解ってたの。彼は本当にロイドを愛して居たから、ロイドは本当に彼を愛していたから。私もロイドを信じていたし、彼を愛していたから。
一番苦しいのは彼だって解ってるのに、私は、私のエゴでそれを見ない振りをした。
私は本当は、とても醜い女なんだよ。
彼がこの子を優しく抱きしめる度に、彼は何処にも行かないと思えて、心の底から安心する。彼が父親になる姿なんて想像出来なかったけど、今では立派な父親になったと思う。でもそれ以上に不安な事があった。
彼に似た柔らかい赤い髪を撫でていると、とても気持ちよさそうにしているこの子は、とてもすくすく育っている。周りの子供達と何ら違わない。それはとても嬉しい事だけれど、本当にこの子が普通の子だったら。
「……また、置いて行かれるのかな」
時の止まってしまった私達より、時の動いているこの子は、きっと先に逝ってしまう。また2人になってしまう。
「たとえそうだとしても、俺はコレットの側にずっといるから、な」
そう言って優しく抱き締める貴方は、誰よりも綺麗に、でも悲しそうに笑っていた。
「ロイドが逝くなら俺だって一緒だ」
「馬鹿なこと言うなよ、お前はまだ生きていけるだろう」
「独りで生きるなんて地獄以外の何物でもない、お前と一緒に旅するって決めてから、ずっと決めてたんだ」
「コレットは……、どうするんだ。あいつはその地獄をずっと耐えてきたんだぞ」
「それでも、俺は……」
「なぁ、ゼロス。俺の願いを叶えてくれないか」
「……ロイド、」
「俺を追って死んだりしないでくれ、お前には生きていて欲しいんだよ」
「………、ずるい。ずるいぜ、ロイド」
「流石にこの年になれば狡くもなるさ」
「だから、さ。ゼロス……」
その笑顔に、それまで忘れていた涙というものが、頬を伝った。
書きたい物を勢いで詰め込んだらなんか所々おかしくなってしまいました(苦笑
補足すると。
クルシスの輝石の影響で天使化が解除出来ず、長い時を昔の姿のまま過ごす神子んびと、エクスフィア回収の為に輝石を付けていたから普通の人よりは寿命が長いけど、それでも寿命が来てしまったロイド君。
神子んびは結婚して隠れながら静かに暮らすんだと思います。自殺は出来るんだろうけど、コレットはゼロスの為に、ゼロスはロイドの為に、死ねないんです。
昔似たような設定でぼろぼろに泣かされた事があって、私も書きたいとずっと思ってたんですよね。
これは泣くには程遠い出来になっちゃいましたけど(苦笑
何はともあれデカダンお題50個全て完了出来ました。1年と3ヶ月ぐらいですね。長かった(笑
また新しいお題借りて頑張りたいと思います。
「そうか、ついにこの町から出てくのか」
「うん……ごめんね、ロイド。貴方からゼロスを奪っちゃって」
「何言ってるんだよ、これで良かったんだって何度も言っただろう」
「……でも、ゼロスは」
「俺はあいつと一緒に居たらいけないんだよ。ゼロスには生きてて貰いたいからな」
「うん、わかってる」
「……これは俺のエゴなんだよ。コレットを巻き込んだのは悪いと思ってる、でも、他の奴には頼めないしな」
「巻き込まれたなんて思ってないよ、私もゼロスには生きていて欲しいもの」
「そっか……」
「……ごめんねロイド、そろそろ行かないと」
「ああ、最期にお前の顔が見れて、良かったよ」
木に囲まれた古びた家を背にして、静かに扉を閉めた。昔と変わらず、町とは離れた場所に存在するその家は、寂しそうに佇んでいる。遠目でその家を見送って、その空間から立ち去った。
今にも溢れそうな涙を堪えながら、町へと向かう道を早足で降りる。町の入り口では彼が待っていてくれた。その姿を見るなり堪えていた涙が零れ落ちる。そんな私を彼は優しく抱き締めてくれた。
一番泣きたいのは貴方の筈なのに。
「おかえり、コレット」
静かな声で優しい笑顔で、私を慰めてくれる。私の、旦那様。
それは数年前の事。
「久し振りだなぁ、コレットちゃん」
珍しくこの家に訪れた彼は、昔と変わらない様子で明るく振る舞っていた。私もあの頃の仲間に会わなくなって随分と経っていたから、彼に会えたのがとても嬉しかった。久し振りに昔話に花を咲かせようかと思ったけれど、彼の様子は何だかおかしくて、嫌な予感が頭をよぎった。
「ロイドは、一緒じゃないんだね」
そう言えば、彼は途端に表情を暗くして俯く。それだけで私は解ってしまった。もう、そんな時が来てしまったのだと。
「……つい1週間前に、倒れたんだ。命に別状は無いけど、もう旅は続けらんないって、よ」
もう何度も繰り返した。何度も何度も私達は別れを繰り返して、もう私達しか残って居なかったのに。私達は2人っきりになってしまう。
「それでさ、……コレット」
絶望にも似た悲しみに耽っていると、彼が稀に聞く真摯な響きで私の名前を呼ぶ。彼にしては珍しいその呼び方に背筋がぞくりとした。跳ねるように頭を上げて彼を見れば、彼は優しく笑って。
「俺達、結婚……しないか」
泣きそうな声でそう言った。
今思えばこれは必然だったのかも知れない。長い時を生きる事になってしまった私達は、時から取り残された。周りが目まぐるしく変わっていく中で、私達だけは変わらずに、あの時のまま。なんで、なんて考えなくても解ってた。
同じ場所に居続ければやがて奇異の目を向けられ、逃げるようにいろんな場所を転々としていた。最初は先生とジーニアスも一緒だったけれど、彼等は先に逝ってしまった。3人だけになって、それでも2人はエクスフィア回収の旅を続けていたから、私は独りで隠れるように過ごしていた。
寂しくなかった、とは言わない。でもこの寂しさを共有できる人は2人以外にもう居なかった。もう終わりにしてしまおうと何度思ったか分からない。でも1人で死んでいく方がもっと怖かった。
彼の言葉の返事を泣きながら返していた時、私は心のどこかで安堵していた。漸く独りから抜け出せるのだと、楽になれると。彼は私と同じだから。他のみんなとは違う、同じ境遇の、私の分身。きっと何もなければこれからも同じ時間を共に生きていける。ロイドには本当に酷いと思うけど、彼がロイドの側から離れて、私の所に来てくれたのが本当に嬉しかった。
彼が、ロイドと共に逝ってしまう心配は無くなったのだから。
彼がロイドの側から離れて、私の元へ来てくれた時、本当はロイドに言われた事を解ってたの。彼は本当にロイドを愛して居たから、ロイドは本当に彼を愛していたから。私もロイドを信じていたし、彼を愛していたから。
一番苦しいのは彼だって解ってるのに、私は、私のエゴでそれを見ない振りをした。
私は本当は、とても醜い女なんだよ。
彼がこの子を優しく抱きしめる度に、彼は何処にも行かないと思えて、心の底から安心する。彼が父親になる姿なんて想像出来なかったけど、今では立派な父親になったと思う。でもそれ以上に不安な事があった。
彼に似た柔らかい赤い髪を撫でていると、とても気持ちよさそうにしているこの子は、とてもすくすく育っている。周りの子供達と何ら違わない。それはとても嬉しい事だけれど、本当にこの子が普通の子だったら。
「……また、置いて行かれるのかな」
時の止まってしまった私達より、時の動いているこの子は、きっと先に逝ってしまう。また2人になってしまう。
「たとえそうだとしても、俺はコレットの側にずっといるから、な」
そう言って優しく抱き締める貴方は、誰よりも綺麗に、でも悲しそうに笑っていた。
「ロイドが逝くなら俺だって一緒だ」
「馬鹿なこと言うなよ、お前はまだ生きていけるだろう」
「独りで生きるなんて地獄以外の何物でもない、お前と一緒に旅するって決めてから、ずっと決めてたんだ」
「コレットは……、どうするんだ。あいつはその地獄をずっと耐えてきたんだぞ」
「それでも、俺は……」
「なぁ、ゼロス。俺の願いを叶えてくれないか」
「……ロイド、」
「俺を追って死んだりしないでくれ、お前には生きていて欲しいんだよ」
「………、ずるい。ずるいぜ、ロイド」
「流石にこの年になれば狡くもなるさ」
「だから、さ。ゼロス……」
その笑顔に、それまで忘れていた涙というものが、頬を伝った。
書きたい物を勢いで詰め込んだらなんか所々おかしくなってしまいました(苦笑
補足すると。
クルシスの輝石の影響で天使化が解除出来ず、長い時を昔の姿のまま過ごす神子んびと、エクスフィア回収の為に輝石を付けていたから普通の人よりは寿命が長いけど、それでも寿命が来てしまったロイド君。
神子んびは結婚して隠れながら静かに暮らすんだと思います。自殺は出来るんだろうけど、コレットはゼロスの為に、ゼロスはロイドの為に、死ねないんです。
昔似たような設定でぼろぼろに泣かされた事があって、私も書きたいとずっと思ってたんですよね。
これは泣くには程遠い出来になっちゃいましたけど(苦笑
何はともあれデカダンお題50個全て完了出来ました。1年と3ヶ月ぐらいですね。長かった(笑
また新しいお題借りて頑張りたいと思います。
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