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日記兼短文落書置場..........。

日記だったり短文や絵を載せたり等々何でも賄えなノリで。

2025'05.10.Sat
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2010'06.10.Thu

もう定番になりつつある、困った時のログ上げ(苦笑
もうちょっと我慢して、ゼロジェゼロがもう少しで上げられる筈、なんだ。

バレンタインネタですが、珍しくD2でジュハロジュなんか書いちゃいました。
D2ホント大好きなんです。





こぽりと音を立てて液体が揺れるフラスコを眺めながら、小さく溜め息を吐く。そこで漸く、この部屋に来てしまった事を後悔するも、時は既に遅かった。



その日の地上軍駐屯地は、天地戦争真っ只中なのにも拘わらず、どこか浮き足立った雰囲気が漂っていた。
パーティのメンバーも例に漏れず、普段でさえ落ち着きが無いというのに、まるで祭りに向かうかの様に騒ぎ立てていた。
そんな最中呼び出されたのはハロルドの部屋だ。しかも一人で来いと名指しで、である。悪い予感しかしなかった。しなかったのだが、約束された手前、行かないというのもどこか気が引けた。
『そんな事思うなんて、坊ちゃんも随分丸くなりましたね』
「それは嫌味か、シャル?」
『違いますよ、僕は純粋に嬉しいんですから』
「……ふ、あいつ等に感化されたのかも知れないな」
話しながら足を進めていれば、狭いラディスロウの中では直ぐに目的地に着く。
悪い予感しかしないその部屋の扉を眺めていれば、何だか奇妙な匂いが漂って来た。やはり帰るかと踵を返そうとすれば。
「ちょっと遅いわよ、いつまで待たせるつもり?」
シャッターの開く音と共に響いた甲高い声に、頭が痛くなった気がした。



「……一体僕に何の用なんだ?」
「何って、決まってるじゃない」
そう言って振り向く彼女の手には、茶色の液体が入ったビーカーやフラスコが握られている。こぽりと粘度を持った音に甘い匂いに中身は薄々感づいていたが、入っている物が物だけにその答えだけは認めたく無かった。

「私の特製チョコレートの毒見係よ」

瞳をきらきらさせながらそう言う彼女に、たまらず頭を抱える。自分で毒見と言うのだから手に負えない。
『どんまいですよ、坊ちゃん』
宥める様なシャルの声が、その時ばかりは疎ましく思った。



「そろそろバレンタインでしょ、今年は例年以上に物資が無いし。兄貴や他の男共にあげるチョコだから、ま、良いじゃない」
フラスコから注がれる液体は、これまた研究用だろう長方形のガラスケースを茶色く満たしていく。何とも食欲が減衰する光景だが、確かに今の地上軍の現状ではこれが限度なのかも知れないと、妙に納得してしまった。
「見た目はアレだけど、別に変な物は入れて無いわよ?」
「……それで、僕はどれを食べれば良いんだ?」
「あら?予想してたより潔いじゃないの」
「揉めた所で変わらないだろう」
そう言って手を差し出せば、彼女は空になったビーカーを置きながら一つ溜め息を吐いた。
「なんだ、つまんないわね」
「……、僕で遊ぶな」
『坊ちゃんは何だかんだでからかい甲斐がありますもんね』
「あらシャルティエ、分かってるじゃない」
「……シャル、」
咎める様に強く名を呼べば、ぴたりと悪ふざけを止めて声が止む。その様子を彼女は笑いながら眺めていた。
「本当に面白いわねぇ、あんた達」
「……何がだ」
「あんたとソーディアンシャルティエの人格は全くの他人なのに、同調率がハンパないもの」
そう言うや否やあーだこーだと考え込む様に動きが止まった彼女に、それは良いのかとガラスケースに収まったままの液体チョコを指差した。
「あ、これは後。あんたが食うのは、こっち」
先程までの様子が無かった様にチョコを抱えてくる彼女に苦笑する。頭の回転が良すぎるのも如何なものか。
薬品の並ぶ机の上の隙間に置かれたチョコを眺めれば、それは先程までのガラスケースに入ったチョコと何ら変わりは無い。違いと言えば冷えて固まっている事位だ。
「変な物は本当に入っていないんだろうな?」
「信用無いわねぇ、平気よ、平気。そんなに不安なら私も一口食べてあげよっか?」
「別に、いらん」
あからさまに馬鹿にする様な笑みを浮かべられれば、それは拒否するに決まっている。思わずそう言ってしまってから、直ぐに己の行動を後悔した。
渋々渡されたチョコを口に運ぶ。恐る恐るというその様子を、彼女は笑いながら見ていた。
「どう?」
「…………別に、普通のチョコだが」
いざ口にしてみれば、それは何ら普通のチョコの味しかしなかった。確かに、何も入れていない、と言っていたが、それでは僕を呼んだ意味も無い筈だ。意味が分からないと頭を悩ませていれば、また笑う彼女の声が聞こえてきた。
「ぐっふっふ、大成功ね」
「な、何がだ…」
「なーんでもなーい。も、戻って良いわよ」
含んだ様に笑う彼女に、何やら悪寒が走るが、その答えを知らされる事無く部屋から追い出された。
一体何だったんだと愚痴を呟くも、その返事は帰って来ない。渋々、あてがわれた部屋に帰るしかなかった。



『……全く、遠回し過ぎるんだ、あの人は』
「シャル、何か言ったか?」
『何でもありませんよ、坊ちゃん』






選択制お題より。
配布元:Abandon




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