2008'09.12.Fri
親衛隊に見張られた異常な病室から漸く出れたのは終戦から1週間も経ってからの事。この左胸の魔導器について一切他言しないと、また変わらぬ忠誠を誓えと強要されて、そうしなければここから出さないと脅されていた。あの方を疑いたくはないが、状況は全て異常だった。忠誠など誓える筈も無かったが、終戦からの情報を全く聞くことが出来ない状況は不安で仕方が無かったのだ。仲間は部下は本当に生きていないのだろうか。彼女は、キャナリは無事なのだろうか。考えればきりが無かった。仮初めの忠誠を誓う事で、念願の外に出ることを許されたのだ。
「ではお前の目で、全てを見てくればいい」
部屋を出る際のあの方の薄笑いだけは、何故か気になって仕方が無かった。
情報を得るために騎士団本部に向かえば、擦れ違う者全てに奇妙な目で見られた。生きていたのか、と声を掛けてくる者もいた。嫌な考えが頭を巡る。それを振り払うかのように足早に情報部の扉を潜った。
「………では、あの部隊で生き残ったのは私だけ、だと」
そこで聞いたのは最も聞きたくない内容だった。あの場所にいた者で生きていた者はいない。後援の部隊が辿り着いた時には全員が事切れていた、と。私自身もアレクセイ隊に保護されていると情報が入るまで死んだのだろうと思われていたのだ。別部隊だったキャナリも、崖の下で遺体が発見されたと言う。
まるで生きている心地がしなかった。私だけが唯独り生き返り、取り残された。あの状況で唯一生き残ったという事実が私の地位を一部隊長から小隊長へと変えさせたが、それは更なる孤立を生むだけだった。中には私が部下を捨ててアレクセイ隊長の元に逃げ込んだのだろうと言う者もいた。彼に忠誠を誓ったという事実がそれを裏付けてしまっていた。
「全てを見た感想はどうだったかな、シュヴァーンよ」
彼があの時振りに声を掛けてきたのは、私が孤独に押し潰されそうになっていた時だった。あの時と同じ薄笑いを張り付けて、彼は私の部屋に入ってきた。
「苦渋の思いで忠誠を誓った割には、酷い答えしか得られなかっただろう」
可笑しそうに笑う彼に、私は踊らされていたのかと思うととても悔しい気持ちになった。誰のせいでこんな事になったと思っている。
「……あなたは、私を生き長らえさせて何がしたいと言うんですか」
あの時あのまま仲間と共に死なせてくれていれば、この様な苦しみを受けずに済んだのだ。それなのに、何故。
「お前の力が、私には必要なのだよ」
切羽詰まった様にそう問い掛ければ、返ってきたのは酷く優しい響き。錯覚しそうなその甘さを振り払う様に、声を荒げる。
「何故私なんだ、私はこんな結果は望んでいない……」
「ならばもう死んだと思えばいい」
取り乱す私を冷たく一瞥して、彼は一言予想もしていなかった台詞を吐いた。あまりのその言葉に何も言えずに居る私を無視して彼は続ける。
「何も考えず私の道具としてだけ存在していれば、こんな些細な事に苦しむ必要もない」
死にたかったんだろう、と薄く笑われて息を飲む。こんな事認めるわけにはいかないと頭では叫んでいるのに、伸ばされた手が何故こんなにも魅力的に見えるのだ。
「他の奴らとは違って、私はお前を必要としているのだよ。私の元に来い、シュヴァーン」
甘く囁かれる台詞がゆっくりと脳に浸透していき、気が付けば私は、伸ばされたその手をしっかりと掴んでいた。
これなんてヴァンアシュだよ(笑
最初に書いたアレシュヴァの続きみたいな話。寧ろこれ連載したいほどなんですが。
甘い、とは言い難いですよね(苦笑
こんなんでよかったでしょうかね。
「ではお前の目で、全てを見てくればいい」
部屋を出る際のあの方の薄笑いだけは、何故か気になって仕方が無かった。
情報を得るために騎士団本部に向かえば、擦れ違う者全てに奇妙な目で見られた。生きていたのか、と声を掛けてくる者もいた。嫌な考えが頭を巡る。それを振り払うかのように足早に情報部の扉を潜った。
「………では、あの部隊で生き残ったのは私だけ、だと」
そこで聞いたのは最も聞きたくない内容だった。あの場所にいた者で生きていた者はいない。後援の部隊が辿り着いた時には全員が事切れていた、と。私自身もアレクセイ隊に保護されていると情報が入るまで死んだのだろうと思われていたのだ。別部隊だったキャナリも、崖の下で遺体が発見されたと言う。
まるで生きている心地がしなかった。私だけが唯独り生き返り、取り残された。あの状況で唯一生き残ったという事実が私の地位を一部隊長から小隊長へと変えさせたが、それは更なる孤立を生むだけだった。中には私が部下を捨ててアレクセイ隊長の元に逃げ込んだのだろうと言う者もいた。彼に忠誠を誓ったという事実がそれを裏付けてしまっていた。
「全てを見た感想はどうだったかな、シュヴァーンよ」
彼があの時振りに声を掛けてきたのは、私が孤独に押し潰されそうになっていた時だった。あの時と同じ薄笑いを張り付けて、彼は私の部屋に入ってきた。
「苦渋の思いで忠誠を誓った割には、酷い答えしか得られなかっただろう」
可笑しそうに笑う彼に、私は踊らされていたのかと思うととても悔しい気持ちになった。誰のせいでこんな事になったと思っている。
「……あなたは、私を生き長らえさせて何がしたいと言うんですか」
あの時あのまま仲間と共に死なせてくれていれば、この様な苦しみを受けずに済んだのだ。それなのに、何故。
「お前の力が、私には必要なのだよ」
切羽詰まった様にそう問い掛ければ、返ってきたのは酷く優しい響き。錯覚しそうなその甘さを振り払う様に、声を荒げる。
「何故私なんだ、私はこんな結果は望んでいない……」
「ならばもう死んだと思えばいい」
取り乱す私を冷たく一瞥して、彼は一言予想もしていなかった台詞を吐いた。あまりのその言葉に何も言えずに居る私を無視して彼は続ける。
「何も考えず私の道具としてだけ存在していれば、こんな些細な事に苦しむ必要もない」
死にたかったんだろう、と薄く笑われて息を飲む。こんな事認めるわけにはいかないと頭では叫んでいるのに、伸ばされた手が何故こんなにも魅力的に見えるのだ。
「他の奴らとは違って、私はお前を必要としているのだよ。私の元に来い、シュヴァーン」
甘く囁かれる台詞がゆっくりと脳に浸透していき、気が付けば私は、伸ばされたその手をしっかりと掴んでいた。
これなんてヴァンアシュだよ(笑
最初に書いたアレシュヴァの続きみたいな話。寧ろこれ連載したいほどなんですが。
甘い、とは言い難いですよね(苦笑
こんなんでよかったでしょうかね。
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