2011'09.27.Tue
カウンターが凄いことになってますね・・・。いろいろ申し訳無さで一杯(苦笑
今回の文はついったで言ってたアルミラ話です。エレンピオス話なんでネタバレ注意。
久しぶりに少し長めに書けた気がする。このままおっさん連作の残りも書きたいな・・・。
更新履歴はpcいじれる時に直します(苦笑
陽が落ちて、空が薄暗く染まる夕刻。変わることなく灯り続ける人工的な光が、街全体を明るく照らしていた。20年来に見る景色は、その薄れた記憶の中で見たものと何ら変わりなかった。
昔こっそりとよく遊びに来ていた高台のこの公園も、変わった所と言えばそこに生える草花が減った程度だ。
そこから見渡せる街全体の姿は、昔は好きだった、筈なのに。
今ではただ無機質に存在する建物の集まりにしか、見えなかった。
「こんな所にいたのか、アルヴィン」
きいきいと風に揺れるぶらんこの音を、凛とした声が掻き消す。ゆっくりと振り向けば、少し呆れた顔をした彼女が立っていた。
「ジュードがお前のことを探していたぞ、行かなくて良いのか?」
「たまには一人でぼんやりしたい時も人にはあんだよ、おたくには分からねえかも知んねえけど」
「失礼な奴だな、私でも人のその様に感傷に浸る、という行為は理解しているぞ」
そう言うと、心外だとでも言うように少し不機嫌に頬を膨らませる。その様子に本当に精霊らしくないな、と小さく笑った。
「そんじゃあ俺を見なかった事にしてくれっと嬉しいんだけど」
そう言って背を向けて手を振った。別にジュードに悪気は無いが、今は会いたい気分ではないのだ。お願いだからほっといて欲しかった。
「それは断る」
背後から聞こえてきた台詞は正反対のもので、振り向けば真っ直ぐとした視線が俺を見つめていた。
「・・・なんで、だよ」
「私自身もお前の事が気になるのだ」
思わず震えてしまいそうになる声をどうにか誤魔化して問えば、返ってきたのはまるで告白のような答えだった。
呆気にとられる俺を尻目に、何食わぬ顔で彼女は続ける。
「私の居ない間に、お前たちの間に何かあったのには気付いている。というか気付かない方がおかしいだろう、よそよそし過ぎる」
「・・・ああ、そういうことか」
「ん?何のことだ?」
意味が分からないと首を傾げる彼女に、何でもねえよと苦笑する。納得出来ていないのか、うんうん唸っている姿を横目に、より一層暗くなった遠い空を眺めた。
「俺が、あんな事までして帰ってきたかったのは、本当にここだったのかと思って、な・・・」
「お前もアルクノアの者たちも、この世界に帰りたかったのだろう?」
「そうだな・・・色んな人間の、お宅の命を奪ってでも帰りたかった筈の、場所なんだよな」
決して顔を見ないまま、自嘲気味にそう呟く。色んなものを投げ捨てて必死に縋り付いていたものの現実の姿に、ただ虚しさが募るだけだったのだ。
「まさか、後悔しているのか」
「・・・さあな、わかんねぇよ」
実際、よくわからなかった。帰ってきたと解ったとき、確かに嬉しかった。バランの姿を見た時、少なからず安堵したのだ。
けれど街のこの姿が、今まで投げ捨ててきたものに見合っているとは、到底思えなかった。
そんな俺の言葉に、何か考え込んでいた彼女が静かに口を開く。
「・・・黒匣について、私はただ精霊を殺す人に過ぎたる物だと思っていた。しかし、今のこの世界には欠けてはならない物なのだということも、理解したつもりだ。お前は、自分の生まれた世界を否定するのか?」
しっかりとした口調でそう続けて、真っ直ぐに俺を見つめてくる。何も言えずにいる俺に、少し笑って。
「私は人と精霊を見守ることを、諦めてはいないぞ」
自信満々にそう言い放った。
「・・・本当に、ミラは強いよな」
胸を張って堂々としているその姿に、思わずそう零れる。それを聞いて、また彼女は笑った。
「何、私はただ人間が好きなだけだよ」
その顔は、まるで全てを愛する母親みたいな、優しい笑顔だった。
「はは・・・本当、適わねえわ」
選択制お題より。
配布元:Abandon
アルミラというか精神的ミラアル(笑
今回の文はついったで言ってたアルミラ話です。エレンピオス話なんでネタバレ注意。
久しぶりに少し長めに書けた気がする。このままおっさん連作の残りも書きたいな・・・。
更新履歴はpcいじれる時に直します(苦笑
陽が落ちて、空が薄暗く染まる夕刻。変わることなく灯り続ける人工的な光が、街全体を明るく照らしていた。20年来に見る景色は、その薄れた記憶の中で見たものと何ら変わりなかった。
昔こっそりとよく遊びに来ていた高台のこの公園も、変わった所と言えばそこに生える草花が減った程度だ。
そこから見渡せる街全体の姿は、昔は好きだった、筈なのに。
今ではただ無機質に存在する建物の集まりにしか、見えなかった。
「こんな所にいたのか、アルヴィン」
きいきいと風に揺れるぶらんこの音を、凛とした声が掻き消す。ゆっくりと振り向けば、少し呆れた顔をした彼女が立っていた。
「ジュードがお前のことを探していたぞ、行かなくて良いのか?」
「たまには一人でぼんやりしたい時も人にはあんだよ、おたくには分からねえかも知んねえけど」
「失礼な奴だな、私でも人のその様に感傷に浸る、という行為は理解しているぞ」
そう言うと、心外だとでも言うように少し不機嫌に頬を膨らませる。その様子に本当に精霊らしくないな、と小さく笑った。
「そんじゃあ俺を見なかった事にしてくれっと嬉しいんだけど」
そう言って背を向けて手を振った。別にジュードに悪気は無いが、今は会いたい気分ではないのだ。お願いだからほっといて欲しかった。
「それは断る」
背後から聞こえてきた台詞は正反対のもので、振り向けば真っ直ぐとした視線が俺を見つめていた。
「・・・なんで、だよ」
「私自身もお前の事が気になるのだ」
思わず震えてしまいそうになる声をどうにか誤魔化して問えば、返ってきたのはまるで告白のような答えだった。
呆気にとられる俺を尻目に、何食わぬ顔で彼女は続ける。
「私の居ない間に、お前たちの間に何かあったのには気付いている。というか気付かない方がおかしいだろう、よそよそし過ぎる」
「・・・ああ、そういうことか」
「ん?何のことだ?」
意味が分からないと首を傾げる彼女に、何でもねえよと苦笑する。納得出来ていないのか、うんうん唸っている姿を横目に、より一層暗くなった遠い空を眺めた。
「俺が、あんな事までして帰ってきたかったのは、本当にここだったのかと思って、な・・・」
「お前もアルクノアの者たちも、この世界に帰りたかったのだろう?」
「そうだな・・・色んな人間の、お宅の命を奪ってでも帰りたかった筈の、場所なんだよな」
決して顔を見ないまま、自嘲気味にそう呟く。色んなものを投げ捨てて必死に縋り付いていたものの現実の姿に、ただ虚しさが募るだけだったのだ。
「まさか、後悔しているのか」
「・・・さあな、わかんねぇよ」
実際、よくわからなかった。帰ってきたと解ったとき、確かに嬉しかった。バランの姿を見た時、少なからず安堵したのだ。
けれど街のこの姿が、今まで投げ捨ててきたものに見合っているとは、到底思えなかった。
そんな俺の言葉に、何か考え込んでいた彼女が静かに口を開く。
「・・・黒匣について、私はただ精霊を殺す人に過ぎたる物だと思っていた。しかし、今のこの世界には欠けてはならない物なのだということも、理解したつもりだ。お前は、自分の生まれた世界を否定するのか?」
しっかりとした口調でそう続けて、真っ直ぐに俺を見つめてくる。何も言えずにいる俺に、少し笑って。
「私は人と精霊を見守ることを、諦めてはいないぞ」
自信満々にそう言い放った。
「・・・本当に、ミラは強いよな」
胸を張って堂々としているその姿に、思わずそう零れる。それを聞いて、また彼女は笑った。
「何、私はただ人間が好きなだけだよ」
その顔は、まるで全てを愛する母親みたいな、優しい笑顔だった。
「はは・・・本当、適わねえわ」
選択制お題より。
配布元:Abandon
アルミラというか精神的ミラアル(笑
PR
Post your Comment
カレンダー
カテゴリー
最新記事
2013
/
05
/
03
(
Fri
)
17
:
37
:
24
)
2013
/
03
/
06
(
Wed
)
22
:
28
:
45
)
2012
/
07
/
27
(
Fri
)
07
:
30
:
39
)
2012
/
04
/
13
(
Fri
)
22
:
29
:
04
)
2012
/
02
/
16
(
Thu
)
02
:
05
:
21
)