2008'06.30.Mon
何気にラタの完全ネタバレ。むしろラスト(苦笑
気にしない方だけどうぞ。
ゆっくりと階段を降りる度、憎悪と後悔と懺悔と恐怖でこの身が震えるのが分かる。それだけではない。中に取り込んだ魔族の力が己が世界の空気を感じ取って歓喜に震えているのだ。
もう随分と自分は堕ちてしまった。こんな様を彼が見たところで哀しむだけだと解ってはいた。けれどもう戻れはしない。彼の為、世界の為に、俺は。
「アステル……、済まないな」
奴の、『彼』の力によって閉じられた開く筈はない、開けてはならない扉に手を掛けて。
彼、の苦しみを想像しながら、この身を堕とした。
振り返る先には彼の姿をした奴が、彼が、泣きそうな目でこちらを見ていた。
けれどもう、戻れない。
「済まないな、………エミル」
気にしない方だけどうぞ。
ゆっくりと階段を降りる度、憎悪と後悔と懺悔と恐怖でこの身が震えるのが分かる。それだけではない。中に取り込んだ魔族の力が己が世界の空気を感じ取って歓喜に震えているのだ。
もう随分と自分は堕ちてしまった。こんな様を彼が見たところで哀しむだけだと解ってはいた。けれどもう戻れはしない。彼の為、世界の為に、俺は。
「アステル……、済まないな」
奴の、『彼』の力によって閉じられた開く筈はない、開けてはならない扉に手を掛けて。
彼、の苦しみを想像しながら、この身を堕とした。
振り返る先には彼の姿をした奴が、彼が、泣きそうな目でこちらを見ていた。
けれどもう、戻れない。
「済まないな、………エミル」
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2008'06.14.Sat
ミトゼロ ゼロス戦。
ふわりと揺れる羽はまるで全てを悟っているかのようだった。
「お前も大概狂っているね」
喉に添えられた短剣が微かに皮膚を切って一筋の赤い線を生み出す。それでも微動だにしない喉元を眺めながら嘲笑う。翡翠の眼は、少しも揺れない。
「まぁ、此処まで面倒を見た甲斐はあったって事なのかな」
カランと音を立てて短剣は彼の足下に落ちる。ふわりと赤い髪を靡かせてしゃがみ込み、それを拾った。至極大切そうにただの短剣を握って、腰の鞘にしまう。
「ミトス様の為ですから」
翡翠の眼が嬉しそうに笑った。
醜い笑顔を貼り付けて、仲間と呼んでいた者達と対峙する。橙色の羽を背から生やして、切りかかっていく様を間接的に見ていた。ロイド達は戸惑いを隠せずにいたけれど、それでも直ぐに向かい討つ。彼は最初こそ飄々とした戦い方をしていたけれど、直ぐにその表情は余裕を無くしていく。元々が多勢に無勢。圧倒的な力を有しない彼の行く先など目に見えている。
彼が本当に望んでいたことなんて、とうの昔から知っていたのだ。分かっていて彼を駒として育てた。憎い人間には変わりなかったのに、何故か今の今まで側にいた。どこか似ている部分が僕達にはあったのかもしれない。結局僕が手放さなかっただけなのだ。彼は彼自身の望みの為に行動しているに過ぎない。
気が付けば彼は息を上げていて、もうこの戦闘は長く続かないだろう。思い付く先の光景に通信を切ろうとすれば、彼は上を見上げてまるで目が合わせるかのようにして。
静かに、笑った。
ゆっくりと腹部から抜かれた剣は真っ赤な血を滴らせながら床へと転がる。刺した張本人は茫然と立ち尽くしていた。彼はそんな様に苦笑しながら床に倒れ込んだ。 かつて彼が仲間と呼んだもの達が、彼のそばに駆け寄る。今にも泣きそうなロイドが、彼を抱き起こそうとしていた。
彼はやんわりとその腕を払って、首を振る。
「俺の輝石、ちゃんと壊せ、よ」
彼がそう言ったのか辛うじて通信で拾える。けれどそれはもう本当にか細い声だった。躊躇するロイドの腕を掴んで、ゆっくりと胸の輝石へと誘導する。耐えきれず泣き出すロイドに、彼は。
優しく、笑って。
ぷつ、という音と共に通信を切った。すると訪れるのは静寂。自分以外誰もいない寂しい部屋を静かに後にした。
「でも、一応僕はお前を愛しているんだよ」
背を向け死地に向かう彼にそう言えば、彼は困ったように、笑って。
「それ、このタイミングで言いますか」
悲しそうに呟いた。
マガで流したミトゼロミトス戦話となんとなく対な話。
どっちでも損な役回りのロイド(苦笑
ふわりと揺れる羽はまるで全てを悟っているかのようだった。
「お前も大概狂っているね」
喉に添えられた短剣が微かに皮膚を切って一筋の赤い線を生み出す。それでも微動だにしない喉元を眺めながら嘲笑う。翡翠の眼は、少しも揺れない。
「まぁ、此処まで面倒を見た甲斐はあったって事なのかな」
カランと音を立てて短剣は彼の足下に落ちる。ふわりと赤い髪を靡かせてしゃがみ込み、それを拾った。至極大切そうにただの短剣を握って、腰の鞘にしまう。
「ミトス様の為ですから」
翡翠の眼が嬉しそうに笑った。
醜い笑顔を貼り付けて、仲間と呼んでいた者達と対峙する。橙色の羽を背から生やして、切りかかっていく様を間接的に見ていた。ロイド達は戸惑いを隠せずにいたけれど、それでも直ぐに向かい討つ。彼は最初こそ飄々とした戦い方をしていたけれど、直ぐにその表情は余裕を無くしていく。元々が多勢に無勢。圧倒的な力を有しない彼の行く先など目に見えている。
彼が本当に望んでいたことなんて、とうの昔から知っていたのだ。分かっていて彼を駒として育てた。憎い人間には変わりなかったのに、何故か今の今まで側にいた。どこか似ている部分が僕達にはあったのかもしれない。結局僕が手放さなかっただけなのだ。彼は彼自身の望みの為に行動しているに過ぎない。
気が付けば彼は息を上げていて、もうこの戦闘は長く続かないだろう。思い付く先の光景に通信を切ろうとすれば、彼は上を見上げてまるで目が合わせるかのようにして。
静かに、笑った。
ゆっくりと腹部から抜かれた剣は真っ赤な血を滴らせながら床へと転がる。刺した張本人は茫然と立ち尽くしていた。彼はそんな様に苦笑しながら床に倒れ込んだ。 かつて彼が仲間と呼んだもの達が、彼のそばに駆け寄る。今にも泣きそうなロイドが、彼を抱き起こそうとしていた。
彼はやんわりとその腕を払って、首を振る。
「俺の輝石、ちゃんと壊せ、よ」
彼がそう言ったのか辛うじて通信で拾える。けれどそれはもう本当にか細い声だった。躊躇するロイドの腕を掴んで、ゆっくりと胸の輝石へと誘導する。耐えきれず泣き出すロイドに、彼は。
優しく、笑って。
ぷつ、という音と共に通信を切った。すると訪れるのは静寂。自分以外誰もいない寂しい部屋を静かに後にした。
「でも、一応僕はお前を愛しているんだよ」
背を向け死地に向かう彼にそう言えば、彼は困ったように、笑って。
「それ、このタイミングで言いますか」
悲しそうに呟いた。
マガで流したミトゼロミトス戦話となんとなく対な話。
どっちでも損な役回りのロイド(苦笑
2008'05.20.Tue
スカアティ(SN3)
潮の音を聞きながら甲板から眺める景色は穏やかな日常。長くは続かないと解っているけれど、それでも続く事を願わずにはいられない。
「センセ」
ふわりと香った甘い香りに振り返れば、彼が優しい笑みを浮かべていた。彼も、昔の傷を抱えて生きているというのに、私に変わらずに笑みを向けてくれる。彼の顔をよぎる影には前から気付いていたのに。
「大丈夫、貴女酷い顔してるわよ」
「………だめですね、考えれば考えるほど悪いことしか想像出来なくて」
心配そうに聞いてくる声に、無理矢理笑みを作って答えようとしたけれど、それは為されずに崩れた不器用な顔を返してしまう。溜め息とともに情けない声が出てしまった。
「私は、あの子を守っていけるのか、わからなくなってしまったんです」
「………、センセ。もうあの子は十分強くなったわ、貴女が気負いしなくても大丈夫」
一度声に出してしまえば堰を切ったように溢れ出す本音。彼は優しく宥めてくれるけれど、そこに存在する彼の本音は別だと気付いている。
「それでも、いざとなったら私が、私が守らないといけないから、だから」
「………」
醜い姿をさらけ出す私を彼は静かに眺めていた。潮の音が大きく聞こえる。耐えきれず私は目を逸らしてしまう。海岸で遊んでいたあの子は集落に行ったのか居なくなっていた。
「ねぇ、アティ」
「…………、なんですかスカーレル」
「本当はね、解ってるのよみんな。貴女に無理をさせてることも、それを避けることが出来ないのも。解っていてこんな事言うんだけど」
横から長い指がふわりと降りてきて頭を撫でられる。いきなりの事に頭を上げれば、こつり、と音が鳴って。
彼の顔が目の前にあった。
「肩の力を抜いて周りを見てみなさい。貴女は独りじゃないんだから」
ね、とまた優しく微笑んで触れるだけのキスをされる。さらさらした髪が頬を撫でて、すぐに離れていった。ひらりと優雅に身を翻して彼は船内へと帰っていく。
私の唇には彼の口紅だけが残っていた。
久しぶり過ぎてゲームのストーリーを忘れたけれど、雰囲気で頑張ってみた。
私は男前なスカーレルが大好き(笑
でも彼は手出さないで引くんだよな…。
生徒は誰でもいいけど、フラグは立たない方向で。
潮の音を聞きながら甲板から眺める景色は穏やかな日常。長くは続かないと解っているけれど、それでも続く事を願わずにはいられない。
「センセ」
ふわりと香った甘い香りに振り返れば、彼が優しい笑みを浮かべていた。彼も、昔の傷を抱えて生きているというのに、私に変わらずに笑みを向けてくれる。彼の顔をよぎる影には前から気付いていたのに。
「大丈夫、貴女酷い顔してるわよ」
「………だめですね、考えれば考えるほど悪いことしか想像出来なくて」
心配そうに聞いてくる声に、無理矢理笑みを作って答えようとしたけれど、それは為されずに崩れた不器用な顔を返してしまう。溜め息とともに情けない声が出てしまった。
「私は、あの子を守っていけるのか、わからなくなってしまったんです」
「………、センセ。もうあの子は十分強くなったわ、貴女が気負いしなくても大丈夫」
一度声に出してしまえば堰を切ったように溢れ出す本音。彼は優しく宥めてくれるけれど、そこに存在する彼の本音は別だと気付いている。
「それでも、いざとなったら私が、私が守らないといけないから、だから」
「………」
醜い姿をさらけ出す私を彼は静かに眺めていた。潮の音が大きく聞こえる。耐えきれず私は目を逸らしてしまう。海岸で遊んでいたあの子は集落に行ったのか居なくなっていた。
「ねぇ、アティ」
「…………、なんですかスカーレル」
「本当はね、解ってるのよみんな。貴女に無理をさせてることも、それを避けることが出来ないのも。解っていてこんな事言うんだけど」
横から長い指がふわりと降りてきて頭を撫でられる。いきなりの事に頭を上げれば、こつり、と音が鳴って。
彼の顔が目の前にあった。
「肩の力を抜いて周りを見てみなさい。貴女は独りじゃないんだから」
ね、とまた優しく微笑んで触れるだけのキスをされる。さらさらした髪が頬を撫でて、すぐに離れていった。ひらりと優雅に身を翻して彼は船内へと帰っていく。
私の唇には彼の口紅だけが残っていた。
久しぶり過ぎてゲームのストーリーを忘れたけれど、雰囲気で頑張ってみた。
私は男前なスカーレルが大好き(笑
でも彼は手出さないで引くんだよな…。
生徒は誰でもいいけど、フラグは立たない方向で。
2008'05.10.Sat
なんと古いパソのほうにこれが眠ってました。
日付は2004年12月13日。
…3年以上前(苦笑
やっぱりここはあえて一切直さずに載せます(笑
静かな部屋に煙る息苦しい匂い。
それを発する紫煙が静かに立ち上っていく様はまるでか細い人の命のよう。
その様を眺めていると現実から逃れていけるような気がした。
ゼロスはそれを見ながら口に咥え肺まで深く煙を吸い込み、吐いた。
このたびが始まってから何ヶ月ぶりだろう。こうやって煙草を吸ったのは。
元々メルトキオにいたときも人前で吸う事はセバスチャンに禁じられていたし、実際ほとんど吸う事はなかった。
けれど時々、無性に吸いたくなる時がある。
理由は今でも分からないが、その時には隠れて一人で吸っていた。
だから今も旅を共にする仲間から離れて、部屋で一人で吸うつもりだった。そのつもりだった。
ふー、と静かに鼻から煙を吐いたとき、勢いよくドアが開けられた。
「なーゼロス、起きてるよな・・・ってお前煙草なんか吸ってたのか!?」
驚愕を含む声。そうだろうなぁ、俺今までそんな素振り見せたことないし。
「なーによロイド君。俺様が煙草吸ってちゃ悪いワケ?」
そんな軽口を叩きながら、口に持っていっていた煙草を離す。紫煙が、揺れた。
「別にそんなことねえけど・・身体に悪いからあんまり吸うなよ」
「分かってるって。ロイド君に説教はされたくないなぁ」
どうせお前には関係ないだろ、俺がどうなろうと。
もう一度口に咥えて、煙を吐いた。ロイドの顔が煙たさに歪んだ。
なんとなくむかついたから、窓辺に移動して窓の外に顔を向けて、それでも吸うことはやめない。
「なぁ・・・もうそろそろやめろって」
背後から聞こえる、ロイドの叱咤の声。だからどうして俺に構うんだ。
「ロイド君には関係ないでしょーよ。何でそんなに怒るのよ」
全く、いい迷惑だ。煙が嫌なら部屋から出れば良いじゃねぇか。
「だって、お前辛そうだぞ。そこまでして吸う必要ねえんじゃねえの?」
しょうがないでしょ、煙草ってそういうもんなんだから。と振り向いて言いかけたら
「お前今にも泣きそうだぞ」
動きが止まった。
泣きそう?俺が?そんなことはないはずだ。だって俺は人前じゃ絶対そんな素振りは見せない。
「何言ってんのロイド君。俺様が何で泣かなきゃいけないのよ」
極めてふざけて答えた。手にしていた煙草の紫煙が揺れる。
一時の沈黙の後、ロイドが口を動かした。
「・・・・わかってねえならもう良いぜ。俺は戻る。皆には部屋に寄らないよう言っておくよ、みんな煙草嫌いだろうし」
そういってロイドは部屋から出て行った。
扉が閉まる間際、サンキューロイド君、といいながら手にしていた煙草を見る。
ずいぶん短くなってしまったそれを灰皿に押し付け、新しいものに火を付けた。
新しい紫煙が天井に向かって立ち上っていく。
静かにそれを見ながら、思った。
ああそうか。だから無性に吸いたくなったのか。
そう、明日は決断の日。
静かに立ち上るその紫煙が、その行方。
日付からするに高2の冬ですよ。文体は変わったけど根本は変わってないんだなぁと深々と思いましたわ。
日付は2004年12月13日。
…3年以上前(苦笑
やっぱりここはあえて一切直さずに載せます(笑
静かな部屋に煙る息苦しい匂い。
それを発する紫煙が静かに立ち上っていく様はまるでか細い人の命のよう。
その様を眺めていると現実から逃れていけるような気がした。
ゼロスはそれを見ながら口に咥え肺まで深く煙を吸い込み、吐いた。
このたびが始まってから何ヶ月ぶりだろう。こうやって煙草を吸ったのは。
元々メルトキオにいたときも人前で吸う事はセバスチャンに禁じられていたし、実際ほとんど吸う事はなかった。
けれど時々、無性に吸いたくなる時がある。
理由は今でも分からないが、その時には隠れて一人で吸っていた。
だから今も旅を共にする仲間から離れて、部屋で一人で吸うつもりだった。そのつもりだった。
ふー、と静かに鼻から煙を吐いたとき、勢いよくドアが開けられた。
「なーゼロス、起きてるよな・・・ってお前煙草なんか吸ってたのか!?」
驚愕を含む声。そうだろうなぁ、俺今までそんな素振り見せたことないし。
「なーによロイド君。俺様が煙草吸ってちゃ悪いワケ?」
そんな軽口を叩きながら、口に持っていっていた煙草を離す。紫煙が、揺れた。
「別にそんなことねえけど・・身体に悪いからあんまり吸うなよ」
「分かってるって。ロイド君に説教はされたくないなぁ」
どうせお前には関係ないだろ、俺がどうなろうと。
もう一度口に咥えて、煙を吐いた。ロイドの顔が煙たさに歪んだ。
なんとなくむかついたから、窓辺に移動して窓の外に顔を向けて、それでも吸うことはやめない。
「なぁ・・・もうそろそろやめろって」
背後から聞こえる、ロイドの叱咤の声。だからどうして俺に構うんだ。
「ロイド君には関係ないでしょーよ。何でそんなに怒るのよ」
全く、いい迷惑だ。煙が嫌なら部屋から出れば良いじゃねぇか。
「だって、お前辛そうだぞ。そこまでして吸う必要ねえんじゃねえの?」
しょうがないでしょ、煙草ってそういうもんなんだから。と振り向いて言いかけたら
「お前今にも泣きそうだぞ」
動きが止まった。
泣きそう?俺が?そんなことはないはずだ。だって俺は人前じゃ絶対そんな素振りは見せない。
「何言ってんのロイド君。俺様が何で泣かなきゃいけないのよ」
極めてふざけて答えた。手にしていた煙草の紫煙が揺れる。
一時の沈黙の後、ロイドが口を動かした。
「・・・・わかってねえならもう良いぜ。俺は戻る。皆には部屋に寄らないよう言っておくよ、みんな煙草嫌いだろうし」
そういってロイドは部屋から出て行った。
扉が閉まる間際、サンキューロイド君、といいながら手にしていた煙草を見る。
ずいぶん短くなってしまったそれを灰皿に押し付け、新しいものに火を付けた。
新しい紫煙が天井に向かって立ち上っていく。
静かにそれを見ながら、思った。
ああそうか。だから無性に吸いたくなったのか。
そう、明日は決断の日。
静かに立ち上るその紫煙が、その行方。
日付からするに高2の冬ですよ。文体は変わったけど根本は変わってないんだなぁと深々と思いましたわ。
2008'05.09.Fri
ロニジュ。
憎み合いも大好き。甘いのも大好き。
私の腐ったテイルズはここから始まったんです(笑
「僕はかつての罪を償う為にここに居るのかもしれない。しかし、後悔はしていないんだ」
彼は、かつては栄華を誇ったしかし今は寂れてしまった生まれ故郷を、どこか遠い眼をしながら眺めて、言った。
それは俺の知っている彼では無く、かの有名な大罪人としての彼のように思える。いや、彼はいつでもこの影を抱き続けていたじゃないか。俺達がその理由を知ったのが随分と遅かっただけで。
「僕はあの選択を悔やんではいないからな」
「……ルーティさんも言ってたぜ、反省はしても後悔はするなってな」
彼女の名前を出すと、彼が少なからず動揺することにも薄々気付いていた。彼女から彼の出生を聞いていたから、理由を知ってからは彼のこの様子も理解出来た。多分この瞬間だけは、彼が彼に戻るのだろう。
「………、そうか」
ほら、呟いたその声は仄かに穏やかだ。そんな彼の年相応の少年の声に安堵しつつも、複雑な感情があるのも事実だ。彼女に話を聞くまで、いや、彼がその人だと知るまで俺の中では彼は極悪人だった。憎んでも憎み足りないほど憎んでいた彼は家族の仇だ。もし生きていて出会う事があったなら、この手で殺してやると思っていたぐらいだ。それなのに、彼が今自分とこうして共に居てくれる事に安堵している。彼が生きていてくれて、いや生き返って来てくれて良かったと、思っている。
「………、どうしたロニ」
「いや、お前で良かったなと思ってな」
物思いに耽って黙り込んでいた俺を怪訝な顔で呼ぶ彼は、どこから見ても彼であって、悪顔の極悪人では決してない。良い意味で裏切られたんだ。
しかし俺の言葉の意図する所から、彼は俺のかつての思いを読み取ったんだろう。彼はとても聡いから。いや、かつて俺が彼に向けて、彼に対する思いを語った事があったから、自ずと分かったのかもしれないけれど。彼は少し悲しそうに、そしてすまなそうに、彼らしくない表情を浮かべていた。
「そんな顔すんなって、後悔はしてないんだろ」
「………、だが僕は」
そう彼は黙り込んでしまう。その様子を静かに眺めながら、ゆっくりと微笑んで頭を撫でてやった。いつもは仮面で隠れている黒髪はさらさらとして柔らかかった。
「昔はどうであれ、今のお前は俺にとって大切な奴になってるんだぜ。お前が落ち込むのを見ていても気分が悪いさ」
「…………、」
綺麗な紫が静かに揺れるのを、俺はとても穏やかな気分で見ていた。
家族の仇を愛してしまった、俺こそが一番、罪深い。
ロニはさらっとくさい台詞を言う、そんな男前(笑
憎み合いも大好き。甘いのも大好き。
私の腐ったテイルズはここから始まったんです(笑
「僕はかつての罪を償う為にここに居るのかもしれない。しかし、後悔はしていないんだ」
彼は、かつては栄華を誇ったしかし今は寂れてしまった生まれ故郷を、どこか遠い眼をしながら眺めて、言った。
それは俺の知っている彼では無く、かの有名な大罪人としての彼のように思える。いや、彼はいつでもこの影を抱き続けていたじゃないか。俺達がその理由を知ったのが随分と遅かっただけで。
「僕はあの選択を悔やんではいないからな」
「……ルーティさんも言ってたぜ、反省はしても後悔はするなってな」
彼女の名前を出すと、彼が少なからず動揺することにも薄々気付いていた。彼女から彼の出生を聞いていたから、理由を知ってからは彼のこの様子も理解出来た。多分この瞬間だけは、彼が彼に戻るのだろう。
「………、そうか」
ほら、呟いたその声は仄かに穏やかだ。そんな彼の年相応の少年の声に安堵しつつも、複雑な感情があるのも事実だ。彼女に話を聞くまで、いや、彼がその人だと知るまで俺の中では彼は極悪人だった。憎んでも憎み足りないほど憎んでいた彼は家族の仇だ。もし生きていて出会う事があったなら、この手で殺してやると思っていたぐらいだ。それなのに、彼が今自分とこうして共に居てくれる事に安堵している。彼が生きていてくれて、いや生き返って来てくれて良かったと、思っている。
「………、どうしたロニ」
「いや、お前で良かったなと思ってな」
物思いに耽って黙り込んでいた俺を怪訝な顔で呼ぶ彼は、どこから見ても彼であって、悪顔の極悪人では決してない。良い意味で裏切られたんだ。
しかし俺の言葉の意図する所から、彼は俺のかつての思いを読み取ったんだろう。彼はとても聡いから。いや、かつて俺が彼に向けて、彼に対する思いを語った事があったから、自ずと分かったのかもしれないけれど。彼は少し悲しそうに、そしてすまなそうに、彼らしくない表情を浮かべていた。
「そんな顔すんなって、後悔はしてないんだろ」
「………、だが僕は」
そう彼は黙り込んでしまう。その様子を静かに眺めながら、ゆっくりと微笑んで頭を撫でてやった。いつもは仮面で隠れている黒髪はさらさらとして柔らかかった。
「昔はどうであれ、今のお前は俺にとって大切な奴になってるんだぜ。お前が落ち込むのを見ていても気分が悪いさ」
「…………、」
綺麗な紫が静かに揺れるのを、俺はとても穏やかな気分で見ていた。
家族の仇を愛してしまった、俺こそが一番、罪深い。
ロニはさらっとくさい台詞を言う、そんな男前(笑
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