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日記兼短文落書置場..........。

日記だったり短文や絵を載せたり等々何でも賄えなノリで。

2025'05.10.Sat
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2010'09.10.Fri

それは、唐突に、訪れた。


金属が肉を斬る音や魔術の爆音が響き合う中、大きく布が地面を擦る音が響く。誰かが倒れたその音に、戦っていた皆の視線が一瞬だけ音の出所に向かう。

「レイヴンッ!!」

誰かの悲痛な叫びが、そこに響いた。



「なーに、そんなに心配されるとおっさん照れるんだけど」
固いベッドの寝心地の悪さに目を覚ませば、神妙な顔をした皆が自分を取り囲む様に見つめていた。直前の記憶が戦闘中で終わっている事から、ああ、倒れたのか、と他人事の様に考える。
あまりに皆が真剣に自分を眺めているものだから、その空気を壊す様に、敢えてそんな軽口を叩いた。
「っ、いったー!リタっちいきなりは酷っ」
途端返ってきたのはばしん、という鈍い音と平手打ち。その相手を見上げる様に見れば、涙を目に溜めながら睨み付けている少女と目があった。いつも気丈に振る舞う彼女のその表情に、準備していた軽口の続きを失う。ゆっくりと周りを見渡せば、己の失態の大きさを改めて知る事になった。
「……見たのね、これ」
胸元に視線を向けながらそう言えば、誰かが息を飲む音がする。その様子に苦笑しながら、極力落ち着いた声で言葉を続けた。
「見た目はあれ、だけど、結構平気なのよ?」
「嘘付くんじゃ無いわよ」
それを遮る様に発せられたのは先程の彼女の声で、睨み付ける視線はそのままに、強い語気でそう言い切られる。
「魔導器との接続部が壊死しかけてるじゃないっ……こんな状態で動くなんて自殺行為よっ!!」



静まり返った夜の町のひんやりと冷えた空気は少し肌寒かった。今は包帯でぐるぐる巻きにされた左胸を見下ろしながら、それを落ち着ける様に深く息を吐く。反動で深く吸い込めば、肺を満たす空気の冷たさが何だか心地良かった。
死んでなお生き長らえた身体がここに来て限界を訴え始めた。前から望んでいた事の筈なのに、いざそれが訪れると、今度はまた死ぬのが怖くなった。今はまだ死にたくないと、純粋に思った。
それ以上に、皆を悲しませたく無いと、強く思って、いた。
「……もう、潮時かしらね」

「何が、かしら?おじさま」

背後から唐突に聞こえた声に振り返れば、微笑を浮かべた彼女がいつもと同じ様に静かに立っていた。
「酷い人ね、勝手に出ていくなんて。みんな心配しているわ」
変わらず微笑でそう少し寂しげに告げられる。表情は崩してはいないけれど、その声色は本気だった。
「……ジュディスちゃんは、どうしてここに?」
「嫌な想像をしたく無かったから」
そう言いながら真っ直ぐに見つめてくる瞳は微かに安堵の色を湛えていて、それの意図を掴めずにいる自分を小さく笑う。
「でも、杞憂だったみたい」
そう笑った彼女の顔は、酷く綺麗だった。


「ねぇ、おじさま」
宿へと戻る帰り道、まるで連れ添う様に二人並んで歩いていた。比較的治安の良い町だからと言っても、女性一人を夜の暗闇で歩かせるのは良心が痛んだのだ。無論、彼女が返り討ちにしてしまう様子も頭には浮かんでいたが、それはそれだ。
「何かなージュディスちゃん」
「私達って、何なのかしら?」
憂いを帯びた表情でそう問われれば、頭の隅で自分勝手な想像が浮かんでは消えた。彼女がそんな気を持っていてくれているとは、思っていない。
「……まー、若人達の言葉を借りるなら、仲間なのかしらね」
「あら、意外ね」
「俺様そんな薄情じゃないわよ!」
無難に応えようと言葉を返せば、少し驚いた表情とその台詞が返ってくる。それに大袈裟に肩を落としながら、心外だという様にそう応えた。
「そうかしら?私はてっきり一方通行かと思っていたわ。だって、」

「       」

そう悲しげに告げる彼女の瞳は酷く真っ直ぐで、沸々と湧き上がる罪悪感に、その瞳から目を逸らすことしか、今の自分には出来なかった。




『「だって、情を寄せてないのならば、最初から仲間でも何でもないでしょう?」』
結構長めの10のお題2より。
配布元:Abandon(http://haruka.saiin.net/~title/0/)




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