2009'09.10.Thu
前にマガで流したアンケートのお礼小話。
空メでアンケ代わりだったので、CP毎にお礼文でした。
ヴェスのも流す気でいたのに、結局放置になったという(苦笑
とりあえず多いので分けます。
まずはシンフォ。
ロイゼロ
ぱたぱたと駆ける音が聞こえてきたと思えば、後ろからぎゅっと抱き締めてくる二本の腕。振り返れば紅い髪が肩の辺りでふわふわ揺れている。
「どうしたんだ、ゼロス」
呼び掛けてみても顔を埋めたまま動く様子は無い。その様子が何だか小さな子供の様で、可愛いなぁと思いつつも、その腕を優しく引き剥がして顔を覗き込んだ。
紅い髪に包まれた白い顔の中心で、翡翠色の眼が揺れている。その瞳と眼が合った瞬間、ぱちりと音を立てて瞬き、その白い頬が赤く染まった。
(理由は分からないけど、可愛いから良いか)
そう微笑みながら、真っ赤に染まった頬にキスを落とした。
クラゼロ
夜も更けた路地裏。暗い闇の中そこに紛れるように立っている男を見つけ、静かに近付く。けれど彼には分かっていたのか、微動だにせずに閉じていた瞳をゆっくり開いて、微かに溜め息を吐いた。
「何よ天使サマ、俺と会うのがそんなに嫌」
ふざけるようにそう言えば鋭い視線が更に鋭くなった。そんなに怒ることでも無いだろうに。こっちはわざわざ時間を作ってやってんだっての。
「……他人の夜遊びに文句は言わないが」
静かな声と共に腕を掴まれた。鋭い視線は俺の首筋辺りに突き刺さっている。自分からは見えないが、多分先程の女に跡でも付けられたんだろう。
「なら俺様がどうしようと勝手でしょ」
そう言って腕を振り払おうとするが、思いの外強い力にびくともしない。
「……おい、ちょっと天使サマ」
「しかし、恋人の夜遊びは許す訳にはいかんな」
意地悪く笑いながらそう言って、首筋に噛み付くように口付けられた。
ミトゼロ
真っ赤に染まったその空間にふわりと降り立つ。鼻を突く血の香りが更に舞い上がった。
「お前はそれで良かったのかい」
紅い髪を真っ赤に染めた彼にそう問い掛ける。答えが返ってこない事は知っている。けれども言わずには居られなかった。
割られた輝石の散らばる胸元に手を添えれば、そこは酷く冷たかった。閉じられたまま開く事の無くなった唇に指を添えれば、そこには生前の柔らかさのかけらも無くて。
その固い唇に最初で最後の優しいキスを落とした。
「お前は本当に哀れな子だね、ゼロス」
ゼロス受(ジニゼロ)
ぱらぱらと本を捲る彼を横から眺めていた。その表情はいつもとは違い真剣で、何だか不思議な気持ちになってしまう。
「何ぼーっとしてんだ、がきんちょ」
僕の視線に気付いた彼がその手を止めて怪訝な顔で見てくる。何だか残念に思いながらも、何でもないとノートに視線を戻した。
「ほら、さっき言った公式の解答ここに載ってるだろ、だからこれを…」
それを横から指差す彼の言葉を聞いていれば、やっぱり彼は頭が良いんだろうなと分かる。何でそれを隠そうとするのかは分からないけど。
「おい、ジーニアス。お前さっきから何か上の空じゃねえの。俺様からは教わるのは癪だってか」
考え事をしている僕が気になって仕方が無いのか、少し苛立ちながら拗ねた様にペンを置く彼に笑いが漏れる。
「てめ、」
「だってゼロスが可愛いのがいけないんだよ」
そう言うと、予想外の言葉に固まってしまう彼に、更に笑いが漏れた。
エミリヒ
「リヒターさん」
聞き慣れたアステルの声でそう呼ばれるのに、未だ慣れない。姿さえ同じなのだ。見る度にアステルが戻ってきたと錯覚してしまいそうになる。それを咎めるかのように、その呼び方で辿々しく彼は俺を呼ぶのだ。
「……エミル」
そして俺は俺に言い聞かせるように彼の名を呼ぶ。そうでもしなければ混同してしまいそうだった。
「リヒターさんは僕と生きてるんです」
最初の頃とは違う強い声で彼は言う。まるでアステルみたいに。目を閉じればもうどちらかなんて分からない。
このまま、錯覚したまま過ごして行ければ良いのに。
「僕はアステルさんとは違う、前をみて下さい。リヒターさん」
翡翠の眼が俺を見つめていた。
リヒター受(アスリヒ)
彼が俺のせいで陰口を叩かれている事は知っている。唯でさえその才能に嫉妬している奴は多いのだ。その上ハーフエルフを友人と言っていれば、良く思わない奴らが増えるのは目に見えていた。
「俺と関わるのは、もう止めろ」
「何で、僕はリヒターだから仲良くしたいのに」
だからと思って忠告しても、彼は聞く耳を持たない。何だかんだ言っても彼は頑固なのだ。
「リヒターは気に病む必要は無いんだ、言いたい奴には言わせておけば良い」
その自信はどこから来るのか。全く気にした様子も無く言い放つ彼に苦笑する。まるで俺が世話焼きみたいじゃないか。
そう言えば彼は笑って。
「みたいって、だってリヒターはそうじゃない」
意地悪くそう言った。
ノーマル(ゼロしい)
それは何らいつもと変わらない。
街に着けば必ずと言っていいほど彼はふらりとどこかに消え、気が付けば知らない女と楽しそうに談笑している。そう、いつもの事だ。皆もそれが当たり前かのように触れずにいて、あたしも同じ様に気にしないようにしていた。
彼の、あの顔を見るまでは。
いつものように彼が消えて、皆が宿に向かった時、何故かあたしは宿には行かずに街を歩いていた。まるで彼みたいだと思いながらも、ふらふらと街を眺めていれば、遠くに見えた彼の姿。
街中で声を掛けたんだろう女に手を振り別れる彼に、声を掛けようと近付こうとした瞬間。
ふと消えた、彼の表情。
まるで氷の様に冷たく無表情の彼に恐怖を覚えた。茫然と立ち尽くすあたしに気付いたのか、またいつもの表情に戻りへらへらと笑う。
「あれぇ、珍しいじゃねえの。しいなが一人でふらふらしてるなんて」
「……別に良いじゃないかい」
そのいつもの様子に、まるでさっきのは錯覚だったのかと思えてくる。戸惑うあたしを知ってか知らずか、彼はいつもの様に軽口を続ける。その声は耳には入らず、あの彼の表情だけが頭から離れなかった。
(もしかしてあいつの本当の顔は、)
次はアビス。
空メでアンケ代わりだったので、CP毎にお礼文でした。
ヴェスのも流す気でいたのに、結局放置になったという(苦笑
とりあえず多いので分けます。
まずはシンフォ。
ロイゼロ
ぱたぱたと駆ける音が聞こえてきたと思えば、後ろからぎゅっと抱き締めてくる二本の腕。振り返れば紅い髪が肩の辺りでふわふわ揺れている。
「どうしたんだ、ゼロス」
呼び掛けてみても顔を埋めたまま動く様子は無い。その様子が何だか小さな子供の様で、可愛いなぁと思いつつも、その腕を優しく引き剥がして顔を覗き込んだ。
紅い髪に包まれた白い顔の中心で、翡翠色の眼が揺れている。その瞳と眼が合った瞬間、ぱちりと音を立てて瞬き、その白い頬が赤く染まった。
(理由は分からないけど、可愛いから良いか)
そう微笑みながら、真っ赤に染まった頬にキスを落とした。
クラゼロ
夜も更けた路地裏。暗い闇の中そこに紛れるように立っている男を見つけ、静かに近付く。けれど彼には分かっていたのか、微動だにせずに閉じていた瞳をゆっくり開いて、微かに溜め息を吐いた。
「何よ天使サマ、俺と会うのがそんなに嫌」
ふざけるようにそう言えば鋭い視線が更に鋭くなった。そんなに怒ることでも無いだろうに。こっちはわざわざ時間を作ってやってんだっての。
「……他人の夜遊びに文句は言わないが」
静かな声と共に腕を掴まれた。鋭い視線は俺の首筋辺りに突き刺さっている。自分からは見えないが、多分先程の女に跡でも付けられたんだろう。
「なら俺様がどうしようと勝手でしょ」
そう言って腕を振り払おうとするが、思いの外強い力にびくともしない。
「……おい、ちょっと天使サマ」
「しかし、恋人の夜遊びは許す訳にはいかんな」
意地悪く笑いながらそう言って、首筋に噛み付くように口付けられた。
ミトゼロ
真っ赤に染まったその空間にふわりと降り立つ。鼻を突く血の香りが更に舞い上がった。
「お前はそれで良かったのかい」
紅い髪を真っ赤に染めた彼にそう問い掛ける。答えが返ってこない事は知っている。けれども言わずには居られなかった。
割られた輝石の散らばる胸元に手を添えれば、そこは酷く冷たかった。閉じられたまま開く事の無くなった唇に指を添えれば、そこには生前の柔らかさのかけらも無くて。
その固い唇に最初で最後の優しいキスを落とした。
「お前は本当に哀れな子だね、ゼロス」
ゼロス受(ジニゼロ)
ぱらぱらと本を捲る彼を横から眺めていた。その表情はいつもとは違い真剣で、何だか不思議な気持ちになってしまう。
「何ぼーっとしてんだ、がきんちょ」
僕の視線に気付いた彼がその手を止めて怪訝な顔で見てくる。何だか残念に思いながらも、何でもないとノートに視線を戻した。
「ほら、さっき言った公式の解答ここに載ってるだろ、だからこれを…」
それを横から指差す彼の言葉を聞いていれば、やっぱり彼は頭が良いんだろうなと分かる。何でそれを隠そうとするのかは分からないけど。
「おい、ジーニアス。お前さっきから何か上の空じゃねえの。俺様からは教わるのは癪だってか」
考え事をしている僕が気になって仕方が無いのか、少し苛立ちながら拗ねた様にペンを置く彼に笑いが漏れる。
「てめ、」
「だってゼロスが可愛いのがいけないんだよ」
そう言うと、予想外の言葉に固まってしまう彼に、更に笑いが漏れた。
エミリヒ
「リヒターさん」
聞き慣れたアステルの声でそう呼ばれるのに、未だ慣れない。姿さえ同じなのだ。見る度にアステルが戻ってきたと錯覚してしまいそうになる。それを咎めるかのように、その呼び方で辿々しく彼は俺を呼ぶのだ。
「……エミル」
そして俺は俺に言い聞かせるように彼の名を呼ぶ。そうでもしなければ混同してしまいそうだった。
「リヒターさんは僕と生きてるんです」
最初の頃とは違う強い声で彼は言う。まるでアステルみたいに。目を閉じればもうどちらかなんて分からない。
このまま、錯覚したまま過ごして行ければ良いのに。
「僕はアステルさんとは違う、前をみて下さい。リヒターさん」
翡翠の眼が俺を見つめていた。
リヒター受(アスリヒ)
彼が俺のせいで陰口を叩かれている事は知っている。唯でさえその才能に嫉妬している奴は多いのだ。その上ハーフエルフを友人と言っていれば、良く思わない奴らが増えるのは目に見えていた。
「俺と関わるのは、もう止めろ」
「何で、僕はリヒターだから仲良くしたいのに」
だからと思って忠告しても、彼は聞く耳を持たない。何だかんだ言っても彼は頑固なのだ。
「リヒターは気に病む必要は無いんだ、言いたい奴には言わせておけば良い」
その自信はどこから来るのか。全く気にした様子も無く言い放つ彼に苦笑する。まるで俺が世話焼きみたいじゃないか。
そう言えば彼は笑って。
「みたいって、だってリヒターはそうじゃない」
意地悪くそう言った。
ノーマル(ゼロしい)
それは何らいつもと変わらない。
街に着けば必ずと言っていいほど彼はふらりとどこかに消え、気が付けば知らない女と楽しそうに談笑している。そう、いつもの事だ。皆もそれが当たり前かのように触れずにいて、あたしも同じ様に気にしないようにしていた。
彼の、あの顔を見るまでは。
いつものように彼が消えて、皆が宿に向かった時、何故かあたしは宿には行かずに街を歩いていた。まるで彼みたいだと思いながらも、ふらふらと街を眺めていれば、遠くに見えた彼の姿。
街中で声を掛けたんだろう女に手を振り別れる彼に、声を掛けようと近付こうとした瞬間。
ふと消えた、彼の表情。
まるで氷の様に冷たく無表情の彼に恐怖を覚えた。茫然と立ち尽くすあたしに気付いたのか、またいつもの表情に戻りへらへらと笑う。
「あれぇ、珍しいじゃねえの。しいなが一人でふらふらしてるなんて」
「……別に良いじゃないかい」
そのいつもの様子に、まるでさっきのは錯覚だったのかと思えてくる。戸惑うあたしを知ってか知らずか、彼はいつもの様に軽口を続ける。その声は耳には入らず、あの彼の表情だけが頭から離れなかった。
(もしかしてあいつの本当の顔は、)
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