2009'08.31.Mon
永久天使性結晶症なゼロスのお話。
長くなったので2つに分けました(苦笑
「何故、隠すのだ」
部屋に着いて直ぐに彼が放ったのはその一言。それを聞いた瞬間、誤魔化しの笑みを浮かべようとするも、やっぱり誤魔化せ無いかと諦めて、用意された椅子に座りながら、溜め息を吐いた。
その俺の様子を静かに眺めながら、けれど素早く俺のグローブを外していく。されるが儘、彼の驚きの顔を眺めていた。
「ここまで進行していたとは……」
彼が見つめていたのは俺の腕。白い肌に浮き出る様に表れているのは結晶化した皮膚。まるで石そのものの様になったそこは、無機質な硬さを示していた。
「……前に言った筈だろう、お前はクルシスの輝石に、」
「拒絶反応があるから極力付けるな、だろ?」
静かに放たれる言葉に、その続きを先に言いながら苦笑すれば、見なくても分かるほど発せられる怒気。まるで言い付けを守らない子供を叱る様なそれに、いや、寧ろその通りかと更に苦笑した。
「……何が、可笑しいのだ」
「いんや、別に。つか仕方ないでしょうよ、これ付けねぇと俺様達ここに来れないし」
そう言えば彼は唯無言で俺を見つめてくる。その真っ直ぐな視線に段々居心地が悪くなってきて、部屋を後にしようと立ち上がった。
「待て、神子よ」
「……何だよ、お叱りはもう終わったでしょ」
すると再び腕を掴まれて、また椅子に座らされる。訳が分からず戸惑っていれば、目の前に出されたのは今まで必死に集めてきた、コレットの、そしてこの俺の症状を治す事が出来る素材。
マナリーフとジルコン、そしてマナのかけらだった。
しかもドワーフにしか出来ない筈の精製も既にされていると、薬状のそれらを手渡される。後は飲むだけだ、と。
「なんで、これ……」
「かつての神子の中にも同じ症状になった者は居たからな、もしもの為にと貯蓄されていたのだ」
いきなりの事に面食らっていれば、何事も無かった様に素っ気なく返される。少し考えれば分かる事だ、なのに思い浮かびもしなかった事実に恥ずかしくなって、それを誤魔化す様に極めて冷静に言葉を返した。
「だからってなんで俺に、……」
「こうでもしなければお前は隠し通すつもりだろう?」
問えば、ふっ、と目に見えるように軽く笑われて、そう言葉を続けられる。まるで全てを見抜かれているようで、かなわない、と肩を竦めた。
「………わかったよ、貰っとくわ」
渋々そう言って手渡された薬をまじまじと見る。その辺で見る物と変わりない粉末状のそれは、とても綺麗な色をしていた。意を決してそれを口に流し込む。全て飲み込めば、ぐらりと視界が揺れた。
ふと目を開くと視界に映ったのは天井。ゆっくりと周りを見渡せば、そこで漸く自分がベッドで寝ている事に気が付いた。慌てて飛び起きれば、横から聞こえてきたのは苦笑。
「何をそこまで慌てているのだ、先程からは数分しか経っていないぞ」
そう言われて、途端に恥ずかしくなり顔を背けた。そのまま己の腕を見れば先程よりは引いた症状に、小さく安堵する。
「それよりも、皆が待っているんではないのか」
「……はぁ、だからさっき慌てたんだろーが」
まるで心配する様に、しかしのん気に言われたそれに、呆れの溜め息を吐く。それに更に苦笑していた彼は、一転して真面目な声色で小さく呟いた。
「無理はするな、……ゼロス」
まるで父親の様な優しげな声に、一瞬動きが止まる。けれど直ぐ様それに応える様に、
「……、ありがと」
そう小さく呟いて、真っ赤になった顔を見せない様に彼に背を向けて、今度こそ部屋を後にした。
「ゼロスっ!!どこ行ってたんだよ心配したんだぞっ!」
「わりぃロイド君、俺様広くて迷っちまってたわ」
案の定、街の中央に戻れば凄い顔した皆が待ちかまえていた。いつもの様に茶化しながらその叱咤をかわせば、そのまま呆れられる。いつも通りのそれに、ばれてないなと安心した。
「ねぇ……ゼロス」
移動を再開して少しした頃、後ろからコレットに呼び止められる。彼女からは珍しいな、と振り向いてそれに応えれば、小さな手のひらが、俺の腕を掴んできた。
「身体はもう大丈夫なの?」
心配そうな声でこっそり呟かれたその言葉に、驚きを隠せなかった。動けずにいる俺に、更に彼女は続ける。
「さっきのゼロス、辛そうだったから」
そう言う彼女は、俺よりもずっと辛そうに身体を引きずっている。そんな彼女だからこそ俺の異変に気付いたんだろうか。
「心配しなくても俺様はへーきだぜぇ、今度は、」
コレットちゃんの番でしょ。
そう最後に小さく呟けば、返ってくるのは安堵の微笑み。それにまた俺も微笑み返して、他の皆にはばれない様に二人で小さく笑った。
「歪曲した無痛。」
選択制お題より。
配布元:Abandon
10万打リクエストで永久天使性結晶症なゼロスを唯一気付いたクラトスがこっそり治す、でした。
コレットは気付いてるんで唯一じゃなくなってしまいましたが、彼女なら気付いてると思いまして。神子んび最高(笑
なんか色々詰め込んだら長くなってしまいました。久しぶりだよこんな長いの。
オタオタ様、こんなので宜しかったでしょうか?
リクエストありがとうございました!
長くなったので2つに分けました(苦笑
「何故、隠すのだ」
部屋に着いて直ぐに彼が放ったのはその一言。それを聞いた瞬間、誤魔化しの笑みを浮かべようとするも、やっぱり誤魔化せ無いかと諦めて、用意された椅子に座りながら、溜め息を吐いた。
その俺の様子を静かに眺めながら、けれど素早く俺のグローブを外していく。されるが儘、彼の驚きの顔を眺めていた。
「ここまで進行していたとは……」
彼が見つめていたのは俺の腕。白い肌に浮き出る様に表れているのは結晶化した皮膚。まるで石そのものの様になったそこは、無機質な硬さを示していた。
「……前に言った筈だろう、お前はクルシスの輝石に、」
「拒絶反応があるから極力付けるな、だろ?」
静かに放たれる言葉に、その続きを先に言いながら苦笑すれば、見なくても分かるほど発せられる怒気。まるで言い付けを守らない子供を叱る様なそれに、いや、寧ろその通りかと更に苦笑した。
「……何が、可笑しいのだ」
「いんや、別に。つか仕方ないでしょうよ、これ付けねぇと俺様達ここに来れないし」
そう言えば彼は唯無言で俺を見つめてくる。その真っ直ぐな視線に段々居心地が悪くなってきて、部屋を後にしようと立ち上がった。
「待て、神子よ」
「……何だよ、お叱りはもう終わったでしょ」
すると再び腕を掴まれて、また椅子に座らされる。訳が分からず戸惑っていれば、目の前に出されたのは今まで必死に集めてきた、コレットの、そしてこの俺の症状を治す事が出来る素材。
マナリーフとジルコン、そしてマナのかけらだった。
しかもドワーフにしか出来ない筈の精製も既にされていると、薬状のそれらを手渡される。後は飲むだけだ、と。
「なんで、これ……」
「かつての神子の中にも同じ症状になった者は居たからな、もしもの為にと貯蓄されていたのだ」
いきなりの事に面食らっていれば、何事も無かった様に素っ気なく返される。少し考えれば分かる事だ、なのに思い浮かびもしなかった事実に恥ずかしくなって、それを誤魔化す様に極めて冷静に言葉を返した。
「だからってなんで俺に、……」
「こうでもしなければお前は隠し通すつもりだろう?」
問えば、ふっ、と目に見えるように軽く笑われて、そう言葉を続けられる。まるで全てを見抜かれているようで、かなわない、と肩を竦めた。
「………わかったよ、貰っとくわ」
渋々そう言って手渡された薬をまじまじと見る。その辺で見る物と変わりない粉末状のそれは、とても綺麗な色をしていた。意を決してそれを口に流し込む。全て飲み込めば、ぐらりと視界が揺れた。
ふと目を開くと視界に映ったのは天井。ゆっくりと周りを見渡せば、そこで漸く自分がベッドで寝ている事に気が付いた。慌てて飛び起きれば、横から聞こえてきたのは苦笑。
「何をそこまで慌てているのだ、先程からは数分しか経っていないぞ」
そう言われて、途端に恥ずかしくなり顔を背けた。そのまま己の腕を見れば先程よりは引いた症状に、小さく安堵する。
「それよりも、皆が待っているんではないのか」
「……はぁ、だからさっき慌てたんだろーが」
まるで心配する様に、しかしのん気に言われたそれに、呆れの溜め息を吐く。それに更に苦笑していた彼は、一転して真面目な声色で小さく呟いた。
「無理はするな、……ゼロス」
まるで父親の様な優しげな声に、一瞬動きが止まる。けれど直ぐ様それに応える様に、
「……、ありがと」
そう小さく呟いて、真っ赤になった顔を見せない様に彼に背を向けて、今度こそ部屋を後にした。
「ゼロスっ!!どこ行ってたんだよ心配したんだぞっ!」
「わりぃロイド君、俺様広くて迷っちまってたわ」
案の定、街の中央に戻れば凄い顔した皆が待ちかまえていた。いつもの様に茶化しながらその叱咤をかわせば、そのまま呆れられる。いつも通りのそれに、ばれてないなと安心した。
「ねぇ……ゼロス」
移動を再開して少しした頃、後ろからコレットに呼び止められる。彼女からは珍しいな、と振り向いてそれに応えれば、小さな手のひらが、俺の腕を掴んできた。
「身体はもう大丈夫なの?」
心配そうな声でこっそり呟かれたその言葉に、驚きを隠せなかった。動けずにいる俺に、更に彼女は続ける。
「さっきのゼロス、辛そうだったから」
そう言う彼女は、俺よりもずっと辛そうに身体を引きずっている。そんな彼女だからこそ俺の異変に気付いたんだろうか。
「心配しなくても俺様はへーきだぜぇ、今度は、」
コレットちゃんの番でしょ。
そう最後に小さく呟けば、返ってくるのは安堵の微笑み。それにまた俺も微笑み返して、他の皆にはばれない様に二人で小さく笑った。
「歪曲した無痛。」
選択制お題より。
配布元:Abandon
10万打リクエストで永久天使性結晶症なゼロスを唯一気付いたクラトスがこっそり治す、でした。
コレットは気付いてるんで唯一じゃなくなってしまいましたが、彼女なら気付いてると思いまして。神子んび最高(笑
なんか色々詰め込んだら長くなってしまいました。久しぶりだよこんな長いの。
オタオタ様、こんなので宜しかったでしょうか?
リクエストありがとうございました!
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