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日記兼短文落書置場..........。

日記だったり短文や絵を載せたり等々何でも賄えなノリで。

2025'05.10.Sat
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2011'10.10.Mon
書けないと悩んでいたら、唐突に何かが降臨したから勢いで書き上げました。
バラアルなんでネタバレたっぷり注意。




目の前で広げられるそれを、ただ呆然と眺めていた。なぜこんな事になっているのか、なんて聞いたところで期待した答えは返ってこないだろうし、聞く気にもなれない。そんな俺の様子を気にすることもなく、着々と狭いテーブルは埋め尽くされていった。
「はい、アルヴィンの分」
横から渡された小皿を渋々受け取れば、そこには綺麗に切り分けられたピーチパイが乗っている。テーブルを埋める勢いで並ぶ小皿にも、同じものが乗っていた。

「で、いったいどういう風の吹き回しだよ」
目の前の光景も漸く落ち着き、自分以外が席に着いたのを確認してから、そう皆に問い掛けた。
すると返ってきたのは呆気に取られたような顔ばかりで、逆にこっちが呆気に取られてしまう。
「え、だって…」
「何だよ、確かに俺はピーチパイ結構好きだけどさ、わざわざこんな状況で食うもんじゃねえだろ」
場所が場所だけに、このピーチパイもバランが用意したものだろう。それは分かる。最終決戦かも知れないから、その前に最後の一休みもまあ、分かる。
だがそれにしては豪勢に準備し過ぎだろう。お茶とパイがここぞと並べられたテーブルと、それを嬉々として眺める皆に、疑問を感じずには居られなかった。

「アルフレド」
そんな怪訝な瞳を向ける俺を、極めてマイペースな響きの声が呼ぶ。やけに意味ありげな笑みを浮かべながら、じっと俺を見ていた。
「今日が何の日か、覚えていないのかい?」
そう言って、部屋にある暦を指差す。まあ20年も違う世界で暮らしていれば分からなくなるのかも知れないけど、と少し寂しそうに続けられた。
「は?何の……」

「誕生日、おめでとう…アルフレド」



思えばエレンピオスを離れてから、色々な事があり過ぎて暦を気にしてなんて居られなかった。リーゼ・マクシアの暦は程なくして無理矢理覚えたけれど、それがエレンピオスでいつになるのかなんて、分かるはずもなかった。
それまで一番に祝ってくれていた母さんも、俺を見てくれなくなってしまっていたから、誕生日なんて、俺の中では無意味な物になり果てていた。
ただ暦が一周したから一つ年を取った、それだけだった。
「……そうか、今日だったのか」
20年振りに眺める暦表に、忘れかけた古い記憶を呼び戻しながら、そう呟く。思っていた以上に懐かしく感じて、思わず泣きたくなった。
「それで、これってわけか」
「…うん、僕達バランさんから聞いて、てっきりアルヴィンは分かってるんだろうって、」
そう言って申し訳無さそうに言葉を濁す少年に、だからなんでお前はそうなんだと内心苦笑する。このままでは益々暗くなるのが分かって、いつもの様に、自然と茶化す言葉が口から零れた。
「なーんでそこで落ち込むのかね、優等生。これでも俺、喜んでるんだぜ?」
そう言えば、最初の頃とは違う、少し訝し気な視線を俺に向けてから、静かに笑った。その大人な顔に、また少し胸が痛む。
「それにしてもバラン、よく覚えてたな」
それを誤魔化すように、さっきと同じ笑みを浮かべている彼に問いかけてみれば、その笑みを一層深めて。

「俺がアルフレドのこと、忘れるわけがないだろう」
何気なく、そう言った。


「………サンキュー、バラン…」

久し振りに口にしたピーチパイは、少し甘くて、懐かしい味がした。


選択制お題より。
配布元:Abandon


バラアルを書こうとしたのにジュード君が結構出張って来ちゃいました。
しかもやっぱり結構シリアスにもなってしまった(苦笑
多分リーゼ・マクシアの暦はエレンピオスとは全然別物だろうなと思って。

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2011'09.27.Tue
カウンターが凄いことになってますね・・・。いろいろ申し訳無さで一杯(苦笑
今回の文はついったで言ってたアルミラ話です。エレンピオス話なんでネタバレ注意。
久しぶりに少し長めに書けた気がする。このままおっさん連作の残りも書きたいな・・・。
更新履歴はpcいじれる時に直します(苦笑





陽が落ちて、空が薄暗く染まる夕刻。変わることなく灯り続ける人工的な光が、街全体を明るく照らしていた。20年来に見る景色は、その薄れた記憶の中で見たものと何ら変わりなかった。
昔こっそりとよく遊びに来ていた高台のこの公園も、変わった所と言えばそこに生える草花が減った程度だ。
そこから見渡せる街全体の姿は、昔は好きだった、筈なのに。

今ではただ無機質に存在する建物の集まりにしか、見えなかった。


「こんな所にいたのか、アルヴィン」

きいきいと風に揺れるぶらんこの音を、凛とした声が掻き消す。ゆっくりと振り向けば、少し呆れた顔をした彼女が立っていた。
「ジュードがお前のことを探していたぞ、行かなくて良いのか?」
「たまには一人でぼんやりしたい時も人にはあんだよ、おたくには分からねえかも知んねえけど」
「失礼な奴だな、私でも人のその様に感傷に浸る、という行為は理解しているぞ」
そう言うと、心外だとでも言うように少し不機嫌に頬を膨らませる。その様子に本当に精霊らしくないな、と小さく笑った。
「そんじゃあ俺を見なかった事にしてくれっと嬉しいんだけど」
そう言って背を向けて手を振った。別にジュードに悪気は無いが、今は会いたい気分ではないのだ。お願いだからほっといて欲しかった。

「それは断る」

背後から聞こえてきた台詞は正反対のもので、振り向けば真っ直ぐとした視線が俺を見つめていた。
「・・・なんで、だよ」
「私自身もお前の事が気になるのだ」
思わず震えてしまいそうになる声をどうにか誤魔化して問えば、返ってきたのはまるで告白のような答えだった。
呆気にとられる俺を尻目に、何食わぬ顔で彼女は続ける。
「私の居ない間に、お前たちの間に何かあったのには気付いている。というか気付かない方がおかしいだろう、よそよそし過ぎる」
「・・・ああ、そういうことか」
「ん?何のことだ?」
意味が分からないと首を傾げる彼女に、何でもねえよと苦笑する。納得出来ていないのか、うんうん唸っている姿を横目に、より一層暗くなった遠い空を眺めた。

「俺が、あんな事までして帰ってきたかったのは、本当にここだったのかと思って、な・・・」
「お前もアルクノアの者たちも、この世界に帰りたかったのだろう?」
「そうだな・・・色んな人間の、お宅の命を奪ってでも帰りたかった筈の、場所なんだよな」
決して顔を見ないまま、自嘲気味にそう呟く。色んなものを投げ捨てて必死に縋り付いていたものの現実の姿に、ただ虚しさが募るだけだったのだ。
「まさか、後悔しているのか」
「・・・さあな、わかんねぇよ」
実際、よくわからなかった。帰ってきたと解ったとき、確かに嬉しかった。バランの姿を見た時、少なからず安堵したのだ。
けれど街のこの姿が、今まで投げ捨ててきたものに見合っているとは、到底思えなかった。
そんな俺の言葉に、何か考え込んでいた彼女が静かに口を開く。
「・・・黒匣について、私はただ精霊を殺す人に過ぎたる物だと思っていた。しかし、今のこの世界には欠けてはならない物なのだということも、理解したつもりだ。お前は、自分の生まれた世界を否定するのか?」
しっかりとした口調でそう続けて、真っ直ぐに俺を見つめてくる。何も言えずにいる俺に、少し笑って。
「私は人と精霊を見守ることを、諦めてはいないぞ」
自信満々にそう言い放った。
「・・・本当に、ミラは強いよな」
胸を張って堂々としているその姿に、思わずそう零れる。それを聞いて、また彼女は笑った。

「何、私はただ人間が好きなだけだよ」

その顔は、まるで全てを愛する母親みたいな、優しい笑顔だった。


「はは・・・本当、適わねえわ」



選択制お題より。
配布元:Abandon

アルミラというか精神的ミラアル(笑

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2011'09.22.Thu
言ってたアルヴィン文。
短めで独白物。一応ネタバレしてるのでご注意を。




見慣れた上品で綺麗な文字で綴られた名前があるその紙に記された、その答えに、何かぽっかりと胸に開いたような気がした。それでいて寧ろ抑えていたものが溢れ出すような、そんな気さえして、複雑なその思いを誤魔化すように、大きく息を吐いた。

今までの思いは何だったのだろうか。結局独りで足掻き続けていただけなのか。

もしあの人が帰ることを諦めてしまったのだとしても、それでも、俺はその願いを叶えたいのだ。
どんなに惨めな人間になり果てようと、それだけは、どうしても譲れない。

だからさ、こんな醜い俺をどうか連れて行ってくれ。たった一人じゃ禄なこともできない俺に、願いを叶えさせてくれ。

俺は、そのためなら、きっと。


そうみんなに聞こえるように呟きながら、全くもって酷い男だと内心で自嘲した。


選択制お題より。
配布元:Abandon


あの手紙が来たとこあたり。きっとあのお母さんは文字綺麗だと思う。名門だし。
まだアルヴィンの感情を掴み切れてないので練習もかねて。

拍手[3回]

2011'08.20.Sat
リハビリ文です。短め。甘々。


旅の途中、立ち寄った宿屋の一室。酷い雨音が響き渡る部屋で、息を潜めて隠れる様に舌を絡める。
くちゃりと時折合間から漏れる音は、しかし締め切った窓に当たる水滴によってかき消され、唾液と熱だけがその間を行き交っていた。
今まで何度も行ってきた、仲間には秘密のこの行為。とてつもない背徳感に、頭がくらくらする。
「は、ぁ・・・」
どれくらいそうしていたんだろう。気がつけば堪えきれずにゆっくりと唇を離して、足りなくなった酸素を肺に吸い込んでいた。
朦朧とする頭で彼を見つめるも、焦点が上手く定まらない。必死に落ち着こうと深呼吸をしていれば、温かい手のひらが頭を優しく撫でる。

「愛しているよ・・・リタ」

耳元を撫でる酷く優しい声。漸く定まった焦点で改めて彼を見れば、そこにあったのは私しか知らないとても穏やかな彼の顔で。

「・・・知ってる、わよ」

またいつもの様に、彼しか知らない泣き顔で私は笑うのだ。


選択制お題より
配布元:Abandon



甘々?(笑
甘々なんです私にとっては!
久しぶりにまともに文書きましたが、前みたくはやっぱり難しいですね(苦笑

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2010'10.13.Wed
も一個拍手ログ。
ちょっと狂い系なおっさん。




『死に切れなさに泣き笑い。』


ねぇ、わかってる?これ全部、青年のせいなのよ?
責任とってよ、ねぇ。



鋭い太刀筋は迷うことなく、一点を目指して振り下ろされる。
硬い金属同士がぶつかり合う耳を刺す様な高い音が、暗い神殿内に響き渡った。
その音に互いに怯むことなど無い。
ただ同じその応酬が繰り返されるだけ。

痺れを切らした彼が、力を込めるその一瞬だけを、それだけを狙って無心に応え続けている。

なんて、歪んでるんだろうね、俺は。

その刃がこの偽物の心臓を貫くのを、ずっとずっと夢見ながら偽りの旅を続けて来たのだ。
この青年ならばきっと迷い無く、俺を切り捨ててくれるはずだからと。


振り落としては弾かれ、振り上げてくれば弾く。流石に腕に痺れを感じ始める頃、それまで詰めていた間合いを少し、開ける。それを追いかける様に、力の籠もった一線が、俺目掛けて、放たれて。

避ける事無く、その身に受けた。


驚いた様に見開かれた瞳が、綺麗に、見える。
あれ、だって俺、青年に切られて死んだ筈でしょ。なんでこんなに視界がはっきりしてるのかね。前に死んだ時は直ぐに視界は歪んで消えた筈なのに。
茫然と目の前の光景を眺めていれば、不意に心臓に激痛が走る。偽物の、くせに。

見ればそこは貫かれてはいなくて、ただ一筋の亀裂が走っているだけ。
今もこの俺を生かそうと、光を溢れさせていた。

「……は、はは、なんで……?」

なんで、俺を死なせてくれないの?


あまりに久しぶりの涙は、虚しさと共に無機質な床へと、消えた。



選択制お題より。
配布元:Abandon


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