2009'09.10.Thu
今年のロイゼロ記念で上げていた拍手文。
ログが行方不明になってずっと放置してました(苦笑
「……ロイド君、どうしたんだよ、これ」
「なんか面白いもの無いかって言ったら、ユーリがくれたんだよ」
「何でこんな物持ってんだよあの野郎は」
「何か……ウサギルド?とか言ってた様な。あ、ちなみにゼロスのはこっちな」
「……なに、これ俺様が付けるわけ?」
「当たり前だろ。だから赤いのを貰ってきたんだ」
「……うわーんロイド君がマニアックに染まってるー」
「ずべこべ言わずに付けろって、な」
「うぅ……その笑みがとっても怖いんですけど」
「ゼ、ロ、ス」
「わかった、わかったから、迫ってくんなっての」
「やっぱりすっげー似合ってるな!」
「………、嬉しくねぇよ」
「だめだろゼロス喋ったら、ウサギは鳴けないんだからさ」
「………は、」
「それに寂しいと死んじまうんだよな、だからほら、ゼロス」
ぎゅっ。
「ぇ、ちょっと…ロイ、ド?」
「こうやって放さないでいてやるから」
「………、」
「どうしたんだゼロス、顔真っ赤だぞ?」
「……………ほんと、ずるいって、の」
「あーもー泣くなよ」
「泣いてない、し」
「わかった、わかったから、ほら」
「ぅ……」
「……愛してるよ、ゼロス」
「………、ぅう」
「だから泣くなって…」
とりあえずひたすら甘いを目指したような記憶があります…。
ログが行方不明になってずっと放置してました(苦笑
「……ロイド君、どうしたんだよ、これ」
「なんか面白いもの無いかって言ったら、ユーリがくれたんだよ」
「何でこんな物持ってんだよあの野郎は」
「何か……ウサギルド?とか言ってた様な。あ、ちなみにゼロスのはこっちな」
「……なに、これ俺様が付けるわけ?」
「当たり前だろ。だから赤いのを貰ってきたんだ」
「……うわーんロイド君がマニアックに染まってるー」
「ずべこべ言わずに付けろって、な」
「うぅ……その笑みがとっても怖いんですけど」
「ゼ、ロ、ス」
「わかった、わかったから、迫ってくんなっての」
「やっぱりすっげー似合ってるな!」
「………、嬉しくねぇよ」
「だめだろゼロス喋ったら、ウサギは鳴けないんだからさ」
「………は、」
「それに寂しいと死んじまうんだよな、だからほら、ゼロス」
ぎゅっ。
「ぇ、ちょっと…ロイ、ド?」
「こうやって放さないでいてやるから」
「………、」
「どうしたんだゼロス、顔真っ赤だぞ?」
「……………ほんと、ずるいって、の」
「あーもー泣くなよ」
「泣いてない、し」
「わかった、わかったから、ほら」
「ぅ……」
「……愛してるよ、ゼロス」
「………、ぅう」
「だから泣くなって…」
とりあえずひたすら甘いを目指したような記憶があります…。
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2009'09.10.Thu
ログといっても流してないやつです。
ゲームごとに流したかったんですが、ユリレイとかアレレイとか、全く書けなかったので放置に。
最後のは、全テイルズという選択肢のお礼のつもりでしたが、これも日の目を見る事はなかった物です(苦笑
アレシュヴァ
首筋に触れる手のひらはひんやりと冷たく、金属独特の硬さが体温を完全に遮っている。彼のその手のひらの体温を感じることはもう殆ど無くなってしまった。勿論優しい指先などもう何年も見ていない。当たり前だ。道具を使う時にそんな風に触れたりはしないのだから。
「考え事とは余裕だな、シュヴァーン」
金属に纏われたその指先に髪を絡め取られ避けていた視線を無理矢理交わされる。紅く光る瞳はとても冷たい。何も感じていない。ただ無機質に道具を眺めている。
何が原因だったのか、自分には分からない。ただゆっくりと流れていく時間の中で彼が変わっていったのは事実。自分も同じだ。彼に感じていた尊敬の念はもう諦めに変わっている。変わらないのは愛情のみだ。可笑しなものだ、こんな状態でも彼を愛しているのは変わらない。私も彼も歪んでいる。
「言葉で言っても分からぬか」
冷たく吐き捨てられ髪を掴んでいた手を解放する。何も支えるものが無くなった身体は重力に従い床に落ちた。固い床に頭を強打する痛みに微かに声を上げれば、彼は薄く笑った。
「ならば直接身体に教える迄の事」
その言葉に、身体が震えた。
レイリタ
その細い指が髪を撫でる度、何だかいけない事をさせている様な気分になる。別に何らやましい事をしている訳では無いのだけれど。
「なぁ……リタっち、おっさんの髪の毛弄ってて楽しいの」
無言で続けられるその行為に堪らなくなってそう問い掛ければ、漸くその手が止められる。ほっと一息付くも今度は髪紐を解かれた。ばさばさと落ちる髪に流石に焦りが生じる。別に直ぐ結う事は出来るけれど、彼女に髪を下ろした姿はもう二度と見せたく無かった。
「ちょっ…流石に」
「別に髪型でうだうだ思ったりしないわよ」
焦る俺を尻目にそう呆れた様に呟いて、下ろされた髪を更に撫でた。数回撫でれば跳ねていた髪も落ち着いて、そこにはあの時と同じ姿の俺が居るんだろう。
「……俺様が怖くないの」
左目に掛かる髪の隙間から彼女を眺めながら、恐る恐る問い掛ける。すると彼女は俺を真っ直ぐ見つめて口を開いた。
「あんたは、あんた。今はレイヴンなんでしょ。なら怖い訳無いじゃない」
他テイルズ(モジェ)
ちりん、ちりんと揺れるその音。何だか聞き覚えのある音に、思い出そうと頭を捻れば出て来た記憶。
「あぁ、あれじゃ、猫の首輪じゃ」
「何ですか、いきなり叫んで。変な行動は迷惑だから止めて下さいよ」
とっさに吠えれば、目の前の低い位置で揺れてた髪が振り返る。つられてまたちりんと音も揺れるが、視線は突き刺さる様に冷たい。
「何じゃジェー坊冷たいのう、ちょいとばかしその鈴が猫みたいじゃと思っただけじゃ」
「何馬鹿な事を言ってるんですか」
「ちりちり鳴ってて、煩くないんか」
「僕はモーゼスさんみたいに野生で生きていませんから。余計なお世話です」
「それにしては気にしとる様に見えるんじゃがな」
紫の瞳が軽く見開いて、直ぐ様寂しそうに伏せられる。良くは分からないが、触れてはいけない事だったろうか。どうしようかと回転が速くはない頭で考えていれば、伏せられていた瞳が真っ直ぐに見つめていて。
「……全く、貴方には本当に敵いませんね」
少し困った様に、笑っていた。
他にもスパーダとかジューダスとかデュークとか関連のCP挙げてたんですが、結局手に付かず。
もう今更なんで、全部上げて終わりにします。
ゲームごとに流したかったんですが、ユリレイとかアレレイとか、全く書けなかったので放置に。
最後のは、全テイルズという選択肢のお礼のつもりでしたが、これも日の目を見る事はなかった物です(苦笑
アレシュヴァ
首筋に触れる手のひらはひんやりと冷たく、金属独特の硬さが体温を完全に遮っている。彼のその手のひらの体温を感じることはもう殆ど無くなってしまった。勿論優しい指先などもう何年も見ていない。当たり前だ。道具を使う時にそんな風に触れたりはしないのだから。
「考え事とは余裕だな、シュヴァーン」
金属に纏われたその指先に髪を絡め取られ避けていた視線を無理矢理交わされる。紅く光る瞳はとても冷たい。何も感じていない。ただ無機質に道具を眺めている。
何が原因だったのか、自分には分からない。ただゆっくりと流れていく時間の中で彼が変わっていったのは事実。自分も同じだ。彼に感じていた尊敬の念はもう諦めに変わっている。変わらないのは愛情のみだ。可笑しなものだ、こんな状態でも彼を愛しているのは変わらない。私も彼も歪んでいる。
「言葉で言っても分からぬか」
冷たく吐き捨てられ髪を掴んでいた手を解放する。何も支えるものが無くなった身体は重力に従い床に落ちた。固い床に頭を強打する痛みに微かに声を上げれば、彼は薄く笑った。
「ならば直接身体に教える迄の事」
その言葉に、身体が震えた。
レイリタ
その細い指が髪を撫でる度、何だかいけない事をさせている様な気分になる。別に何らやましい事をしている訳では無いのだけれど。
「なぁ……リタっち、おっさんの髪の毛弄ってて楽しいの」
無言で続けられるその行為に堪らなくなってそう問い掛ければ、漸くその手が止められる。ほっと一息付くも今度は髪紐を解かれた。ばさばさと落ちる髪に流石に焦りが生じる。別に直ぐ結う事は出来るけれど、彼女に髪を下ろした姿はもう二度と見せたく無かった。
「ちょっ…流石に」
「別に髪型でうだうだ思ったりしないわよ」
焦る俺を尻目にそう呆れた様に呟いて、下ろされた髪を更に撫でた。数回撫でれば跳ねていた髪も落ち着いて、そこにはあの時と同じ姿の俺が居るんだろう。
「……俺様が怖くないの」
左目に掛かる髪の隙間から彼女を眺めながら、恐る恐る問い掛ける。すると彼女は俺を真っ直ぐ見つめて口を開いた。
「あんたは、あんた。今はレイヴンなんでしょ。なら怖い訳無いじゃない」
他テイルズ(モジェ)
ちりん、ちりんと揺れるその音。何だか聞き覚えのある音に、思い出そうと頭を捻れば出て来た記憶。
「あぁ、あれじゃ、猫の首輪じゃ」
「何ですか、いきなり叫んで。変な行動は迷惑だから止めて下さいよ」
とっさに吠えれば、目の前の低い位置で揺れてた髪が振り返る。つられてまたちりんと音も揺れるが、視線は突き刺さる様に冷たい。
「何じゃジェー坊冷たいのう、ちょいとばかしその鈴が猫みたいじゃと思っただけじゃ」
「何馬鹿な事を言ってるんですか」
「ちりちり鳴ってて、煩くないんか」
「僕はモーゼスさんみたいに野生で生きていませんから。余計なお世話です」
「それにしては気にしとる様に見えるんじゃがな」
紫の瞳が軽く見開いて、直ぐ様寂しそうに伏せられる。良くは分からないが、触れてはいけない事だったろうか。どうしようかと回転が速くはない頭で考えていれば、伏せられていた瞳が真っ直ぐに見つめていて。
「……全く、貴方には本当に敵いませんね」
少し困った様に、笑っていた。
他にもスパーダとかジューダスとかデュークとか関連のCP挙げてたんですが、結局手に付かず。
もう今更なんで、全部上げて終わりにします。
2009'09.10.Thu
ログ続きです。
アビス…多いな(苦笑
ルクアシュ
一体何故こうなったのか。
同じ声で情けなく名を呼ばれ怒りを覚えていたはずなのに、気が付けば同じ宿になり、同じ部屋になっていた。
周りも謀ったかの様にそれを受け入れ、元々調子の良い奴らは喜んであの屑の宣言を認めたのだ。
「どうしたんだよ、アッシュ」
どうしたもこうしたもあるものか。全く誰しも俺の意志を無視しやがって。
「黙れ近寄るな、屑が」
そう言った筈なのに目の前にはレプリカの顔があって、あろうことか俺の身体に乗り上げている。上に乗られた体勢に身動きが取れず、引き剥がそうと暴れても疲れるばかりだ。
「アッシュって綺麗だよな」
俺の苦労も露知らず、呑気な声でそう言う奴の顔は何だか真剣で。そのギャップに息を飲んだ。
するとゆっくり顔が近付いてきて、何故か視線を外せず固まっている俺の顔に触れそうになり。
とっさに力一杯突き飛ばした。
「いってえ……酷いよアッシュ」
「酷いのはどっちだこの劣化レプリカが」
叫びながら部屋を飛び出せば、焦った様な声が遠くから聞こえた。
静まり返った夜の街に心臓の音が煩く響いた。
ガイアシュ
ベルケンドへ向かう道中、先頭を歩く俺には彼の姿は見えない。背後で声は聞こえるけれど、それは決して俺に対するものではない。まるで俺が居ないかのように、彼は明るく話している。
ユリアシティでの邂逅も酷く冷めたものだった。予想はしていた。ヴァンから話を聞く前から何となく分かっていたことだ。けれどいざ目の前でそんな態度を取られれば、寂しさを感じずには居られなかった。
何を今更、ルークの名を棄ててから過去には縋らないと決めた筈だ。それでも彼の視界に入りたいと思っている俺は、自負していたよりは女々しいのかも知れない。
「………ガイ」
「そんな風に俺を呼ぶのは止めてくれないか」
無意識に彼の名前を呟くと、それに呼応する様に彼の声が聞こえた。いきなりのそれに、驚愕を隠せずに振り返る。
「な……」
「その縋るような目も止めてくれよ、ルークと勘違いしそうだ」
何故気配に気付かなかったのか。振り返った先には目の前に彼が居て、やはり変わらない冷たい瞳で冷たい言葉を吐かれる。ならば何故声を掛けてきたんだ、そのまま無視されて居れば諦めることも出来るというのに。
(何故そんな風に期待を持たせる、叶わぬ想いなど虚しいだけだろう)
ヴァンアシュ
がちゃん、と抜けた剣が床に落ちて音を立てる。どくどくと止まることの無い腹部の血が辺りを赤く染めていた。しくじったと思うももう遅く、霞む視界の中、どうせならばあの人の最期だけは見ておきたかった、ともう叶わないだろう事を考える。あの人は、彼らに倒されるのだろう。そうなると思っているし、そうならなければならないのだ。
「……先に逝ってるから、あんたは後から来い、よ」
力の入らない身体を壁に預け、ずるずると座り込む。瞳を閉じれば今までの事が鮮明に思い出された。これが走馬燈かと苦笑して、その内容に更に苦笑した。
(何だよ、殆どあんたが占めてるじゃねえか)
辛い記憶が殆どの中で、必ずと言って良いほど側にはあの人がいた。我ながら未練たらしい。あの人の腕を振り払ったのは自分自身だと言うのに。
「ヴァン、せんせい」
最期の最期に、涙が溢れた。
アッシュ受(ギンアシュ)
「今日は絶対に安静です。勝手に抜け出したりしたら、おいらアルビオール出しませんからね」
前々から身体に違和感は感じていた。しかしこの今の状況でのんびり休んでなどいられない。朦朧とする頭を押して飛び回っていたら、案の定倒れるに至ってしまった。それでも止まるわけには行かないと、宿から出ようとすれば先程の台詞だ。
移動手段を絶たれた以上、やむなく宿に留まるしかなかった。渋々ベッドで横になる俺を、こいつは過剰なまでに気に掛けていた。別に只の風邪なんだ、一晩も寝れば治るだろうに。
「俺はもう平気だ、お前こそ休んだらどうなんだ」
「そんなにだるそうにしててどこが平気なんですか、アッシュさんは無理しすぎなんですよ」
そう言いながら新しく変えたんだろう冷たいタオルを額に乗せられる。そのひんやりとした温度が火照ったそこには気持ちよかった。それに気が抜けたのか、眠気が襲ってくる。
「今日は何も考えずにゆっくり休んで下さい」
その声が遠くに聞こえて、そのまま直ぐに眠りに落ちた。
「……全く、こんな小さな身体で多くのものを背負い過ぎなんだよな」
ピオジェ
最初はいつもの、習慣になっている二人での飲みだった筈だ。奴の任務が一区切りし、翌日が休暇だからと俺が奴の部屋に酒を持ち込み、一杯誘った。
そう、何ら変わらないいつもの事だ。その筈だったのに。
「……おい、ジェイド」
「なんですかぁ、へーか」
珍しく速いペースで酒を空けていた奴の姿に嫌な予感がすれば、思った通り直ぐに酔い潰れて今はこの様だ。まったく死霊使いの名が泣くぞ。
仄かに赤く染まった頬が元々白いこいつの顔を素晴らしく彩っていて、その妖艶な姿に息を呑む。その上いつもは冷たい視線が熱で潤んでいては、もう抑えて入られなかった。
朝日の差す光に沈んでいた思考が浮上してゆっくりと目を開ければ、そこは自室のベッドの上。移動した覚えは無く、昨晩の記憶を思い出せば彼との酒盛りの途中から記憶が無い。彼の姿を探すも見当たらない。
(私としたことが、とんだ失態ですね)
痛む頭を抑えながら取り敢えずシャワーでも浴びようと浴室へと向かえば、居ないと思っていた彼と鉢合わせした。
「へ、いか」
「やっと起きたか、ジェイド」
「迷惑を掛けてしまって、申し訳ありません」
そう言って深々と謝れば彼は唖然とした顔で一瞬固まり、直ぐ様笑い飛ばしていた。
「ん、あぁ別に気にしなくていい、珍しいものも見れたしな」
そう言って笑う彼は、何だかいつもより爽やかだった。
ルクジェ
目の前で彼がその綺麗な瞳を閉じてその指先に集中している。正しくはその先の俺の脈の音を聞いていた。伏せられた長い睫毛が揺れるたび、そのあまりの綺麗さにどきどきせずに居られなかった。その瞼がゆっくりと開いて思わず声を上げれば、綺麗な微笑が返された。
「一体何を考えているんですか、これじゃ正確な脈が取れませんよ」
そう含んだ声で言われれば恥ずかしさに顔が熱くなるばかりで、それを見て優しく微笑む彼に、もう心臓はここぞとばかりにどきどきしていた。
「……聞いていますか、ルーク」
少し呆れた様な声でそう言われて、はっと彼を見ればそこには心配そうな表情の彼が居て。
(ジェイドには悪いけど、多分俺今幸せだよ)
彼を悲しませない為にも、今はまだ死にたくないと、強く思った。
ジェイド受(ディスジェ)
かたかたと音を立てて譜業の盤面を叩く彼を背後から眺める。何時もならば煩く騒がしい彼もこの時ばかりは一言も発する事無く一心不乱に譜業に向かっていた。
(こういう所は全く変わってないんですね)
僅か3時間程で組み立てられた譜業は、一般では決して出回らないであろう精密な物で、その彼の天才振りに久しぶりに感嘆した。何故常はあんなに馬鹿らしいのか、本当に分からない。
「……何ですか、ジェイド」
終わってしまった暇つぶしに興味を無くした様に目もくれず、静かに振り返る。紫の瞳はつまらなそうに私を眺め、そう言った。その無機質な瞳に自然と笑みが浮かぶ。
「サフィール、貴方に頼みたい事があるんですよ」
奥底に隠した興奮を勘ぐられ無い様、自覚しているわざとらしい楽しそうな声でそう言い放てば、彼は驚いた様に目を見開いた。
「貴方が頼み事なんて珍しいですね」
「まぁ、貴方位しか自由に使えるのがいなかっただけですが」
実際には罪人である彼を連れる許可を得るのに結構苦労させられたのだが、他の人間には頼める様な事ではないし、彼の譜業の技術は不可欠なのだ。
「………、あの子供ですか」
不意に吐かれた台詞に、一瞬息を飲んだ。常日頃あれ程抜けているのに、何故こうも変な所で聡いのか。突き刺す様な紫の視線が真っ直ぐに入ってくる。それは直ぐ様哀れむ様なものに変わり、溜め息と共に横にそれた。
「まぁ、貴方がその気なら私に止めることは出来ませんよ」
そこには無機質な瞳は、無かった。
ジェピ
扉を開けた瞬間漂ってきた強いアルコールの匂い。いきなりのそれに顔を顰めながら中に入れば、案の定、彼が自分の部屋のソファーに堂々と居座り速いペースで酒を開けていた。
「……へーか」
「おぅじぇいど、じゃましてるぜ」
呆れたように呼びかければ返ってくる返事はどこか舌ったらずで、これは相当飲んでいるなと、頭を抱えた。かくいう彼は、人の悩みなど知らずに新しい瓶の栓を抜こうとしている。全く、一体何処からこんなに持ち込んだのか。
「陛下、いくらなんでも飲みすぎですよ…貴方らしくも無い」
「おれらしいというのはどういうことだ」
彼が持っていた瓶を奪い取りそう言えば、彼は青い瞳を曇らせてそう呟く。常の彼らしくないその弱々しい物言いに戸惑う。
原因に思い当たる物を考えて見れば、そう言えば今日帝国のはずれに位置する街がキムラスカとの抗争に巻き込まれ、死者が出たとの報告があった。その報告ではたった数名の死者だったが。
「全く…、本当貴方らしいですよ」
「……じぇいど」
「今日一日ですよ、明日にはいつも通りの貴方で居てください」
(この国を憂う貴方を、私は護り続けますから)
ピオニー受(ガイピオ)
「今日からお前にはこいつらの面倒を見てもらう」
新たに母国に屋敷を構え漸く落ち着いた矢先、滅多に無いだろう皇帝陛下直々のお呼び出し。緊張しながら陛下の私室に向かえば、ぶぅぶぅと鳴き声を上げながら部屋を闊歩する彼らを指差されて、まさかと思いきや案の定言われたその台詞。
「陛下のブウサギを、ですか」
「何だ、こいつらの世話が出来るのに何の不満があるというんだ」
戸惑いを隠し切れていなかったのだろう俺の表情を見ては、唇を尖らせて不貞腐れている彼に思わず苦笑が漏れた。
「……ガイラルディア」
「あ、申し訳ありません陛下。まさか俺みたいな者が、陛下の大切なブウサギの世話を任されるとは思っていなくて」
「お前だから頼むんだ、ガイラルディア」
そう言う視線は至極真剣なもので、思わず息を飲んでしまった。やはりそうされると皇帝の威厳を感じずにはいられない。
「……光栄です、陛下。その任喜んで承りました」
「ま、貴族で動物の世話が出来る奴なんてお前くらいしかいないしな」
(あ、やっぱりそうですか……)
ノーマル(アシュナタ)
「やはり、女としてこのままではいけないと思いますの」
トントンと規則正しいリズムを刻む彼の姿を眺めながらそう呟く。するとその音は止み、彼が困った様な顔で振り返るのが見えた。
「前にも言ったが、ナタリア、お前は王女なんだから……」
「貴方だって王族ではありませんか、努力すれば私だって出来る様になる筈ですわ」
そう言ってまな板の上に置かれた包丁を手に取れば、焦った様に彼がそれを引き止める。
「いや、待てナタリア。確かにその通りだが焦っても仕方ないだろう。………俺が教えてやるから」
「まぁアッシュ、宜しいんですの」
「お前が、上手くなりたいのなら俺は別に」
「………なんかもー二人の世界ですよねぇ、あれみんなのご飯だって気付いてるのかなぁ」
「まぁアッシュが付いていれば食べれないものが出来ることは無いでしょう、良い迷惑ですが」
「……ねぇーガイどうにかアッシュを止めてきてよ」
「俺には無理だって……」
次はヴェスで出来てたものと…?
アビス…多いな(苦笑
ルクアシュ
一体何故こうなったのか。
同じ声で情けなく名を呼ばれ怒りを覚えていたはずなのに、気が付けば同じ宿になり、同じ部屋になっていた。
周りも謀ったかの様にそれを受け入れ、元々調子の良い奴らは喜んであの屑の宣言を認めたのだ。
「どうしたんだよ、アッシュ」
どうしたもこうしたもあるものか。全く誰しも俺の意志を無視しやがって。
「黙れ近寄るな、屑が」
そう言った筈なのに目の前にはレプリカの顔があって、あろうことか俺の身体に乗り上げている。上に乗られた体勢に身動きが取れず、引き剥がそうと暴れても疲れるばかりだ。
「アッシュって綺麗だよな」
俺の苦労も露知らず、呑気な声でそう言う奴の顔は何だか真剣で。そのギャップに息を飲んだ。
するとゆっくり顔が近付いてきて、何故か視線を外せず固まっている俺の顔に触れそうになり。
とっさに力一杯突き飛ばした。
「いってえ……酷いよアッシュ」
「酷いのはどっちだこの劣化レプリカが」
叫びながら部屋を飛び出せば、焦った様な声が遠くから聞こえた。
静まり返った夜の街に心臓の音が煩く響いた。
ガイアシュ
ベルケンドへ向かう道中、先頭を歩く俺には彼の姿は見えない。背後で声は聞こえるけれど、それは決して俺に対するものではない。まるで俺が居ないかのように、彼は明るく話している。
ユリアシティでの邂逅も酷く冷めたものだった。予想はしていた。ヴァンから話を聞く前から何となく分かっていたことだ。けれどいざ目の前でそんな態度を取られれば、寂しさを感じずには居られなかった。
何を今更、ルークの名を棄ててから過去には縋らないと決めた筈だ。それでも彼の視界に入りたいと思っている俺は、自負していたよりは女々しいのかも知れない。
「………ガイ」
「そんな風に俺を呼ぶのは止めてくれないか」
無意識に彼の名前を呟くと、それに呼応する様に彼の声が聞こえた。いきなりのそれに、驚愕を隠せずに振り返る。
「な……」
「その縋るような目も止めてくれよ、ルークと勘違いしそうだ」
何故気配に気付かなかったのか。振り返った先には目の前に彼が居て、やはり変わらない冷たい瞳で冷たい言葉を吐かれる。ならば何故声を掛けてきたんだ、そのまま無視されて居れば諦めることも出来るというのに。
(何故そんな風に期待を持たせる、叶わぬ想いなど虚しいだけだろう)
ヴァンアシュ
がちゃん、と抜けた剣が床に落ちて音を立てる。どくどくと止まることの無い腹部の血が辺りを赤く染めていた。しくじったと思うももう遅く、霞む視界の中、どうせならばあの人の最期だけは見ておきたかった、ともう叶わないだろう事を考える。あの人は、彼らに倒されるのだろう。そうなると思っているし、そうならなければならないのだ。
「……先に逝ってるから、あんたは後から来い、よ」
力の入らない身体を壁に預け、ずるずると座り込む。瞳を閉じれば今までの事が鮮明に思い出された。これが走馬燈かと苦笑して、その内容に更に苦笑した。
(何だよ、殆どあんたが占めてるじゃねえか)
辛い記憶が殆どの中で、必ずと言って良いほど側にはあの人がいた。我ながら未練たらしい。あの人の腕を振り払ったのは自分自身だと言うのに。
「ヴァン、せんせい」
最期の最期に、涙が溢れた。
アッシュ受(ギンアシュ)
「今日は絶対に安静です。勝手に抜け出したりしたら、おいらアルビオール出しませんからね」
前々から身体に違和感は感じていた。しかしこの今の状況でのんびり休んでなどいられない。朦朧とする頭を押して飛び回っていたら、案の定倒れるに至ってしまった。それでも止まるわけには行かないと、宿から出ようとすれば先程の台詞だ。
移動手段を絶たれた以上、やむなく宿に留まるしかなかった。渋々ベッドで横になる俺を、こいつは過剰なまでに気に掛けていた。別に只の風邪なんだ、一晩も寝れば治るだろうに。
「俺はもう平気だ、お前こそ休んだらどうなんだ」
「そんなにだるそうにしててどこが平気なんですか、アッシュさんは無理しすぎなんですよ」
そう言いながら新しく変えたんだろう冷たいタオルを額に乗せられる。そのひんやりとした温度が火照ったそこには気持ちよかった。それに気が抜けたのか、眠気が襲ってくる。
「今日は何も考えずにゆっくり休んで下さい」
その声が遠くに聞こえて、そのまま直ぐに眠りに落ちた。
「……全く、こんな小さな身体で多くのものを背負い過ぎなんだよな」
ピオジェ
最初はいつもの、習慣になっている二人での飲みだった筈だ。奴の任務が一区切りし、翌日が休暇だからと俺が奴の部屋に酒を持ち込み、一杯誘った。
そう、何ら変わらないいつもの事だ。その筈だったのに。
「……おい、ジェイド」
「なんですかぁ、へーか」
珍しく速いペースで酒を空けていた奴の姿に嫌な予感がすれば、思った通り直ぐに酔い潰れて今はこの様だ。まったく死霊使いの名が泣くぞ。
仄かに赤く染まった頬が元々白いこいつの顔を素晴らしく彩っていて、その妖艶な姿に息を呑む。その上いつもは冷たい視線が熱で潤んでいては、もう抑えて入られなかった。
朝日の差す光に沈んでいた思考が浮上してゆっくりと目を開ければ、そこは自室のベッドの上。移動した覚えは無く、昨晩の記憶を思い出せば彼との酒盛りの途中から記憶が無い。彼の姿を探すも見当たらない。
(私としたことが、とんだ失態ですね)
痛む頭を抑えながら取り敢えずシャワーでも浴びようと浴室へと向かえば、居ないと思っていた彼と鉢合わせした。
「へ、いか」
「やっと起きたか、ジェイド」
「迷惑を掛けてしまって、申し訳ありません」
そう言って深々と謝れば彼は唖然とした顔で一瞬固まり、直ぐ様笑い飛ばしていた。
「ん、あぁ別に気にしなくていい、珍しいものも見れたしな」
そう言って笑う彼は、何だかいつもより爽やかだった。
ルクジェ
目の前で彼がその綺麗な瞳を閉じてその指先に集中している。正しくはその先の俺の脈の音を聞いていた。伏せられた長い睫毛が揺れるたび、そのあまりの綺麗さにどきどきせずに居られなかった。その瞼がゆっくりと開いて思わず声を上げれば、綺麗な微笑が返された。
「一体何を考えているんですか、これじゃ正確な脈が取れませんよ」
そう含んだ声で言われれば恥ずかしさに顔が熱くなるばかりで、それを見て優しく微笑む彼に、もう心臓はここぞとばかりにどきどきしていた。
「……聞いていますか、ルーク」
少し呆れた様な声でそう言われて、はっと彼を見ればそこには心配そうな表情の彼が居て。
(ジェイドには悪いけど、多分俺今幸せだよ)
彼を悲しませない為にも、今はまだ死にたくないと、強く思った。
ジェイド受(ディスジェ)
かたかたと音を立てて譜業の盤面を叩く彼を背後から眺める。何時もならば煩く騒がしい彼もこの時ばかりは一言も発する事無く一心不乱に譜業に向かっていた。
(こういう所は全く変わってないんですね)
僅か3時間程で組み立てられた譜業は、一般では決して出回らないであろう精密な物で、その彼の天才振りに久しぶりに感嘆した。何故常はあんなに馬鹿らしいのか、本当に分からない。
「……何ですか、ジェイド」
終わってしまった暇つぶしに興味を無くした様に目もくれず、静かに振り返る。紫の瞳はつまらなそうに私を眺め、そう言った。その無機質な瞳に自然と笑みが浮かぶ。
「サフィール、貴方に頼みたい事があるんですよ」
奥底に隠した興奮を勘ぐられ無い様、自覚しているわざとらしい楽しそうな声でそう言い放てば、彼は驚いた様に目を見開いた。
「貴方が頼み事なんて珍しいですね」
「まぁ、貴方位しか自由に使えるのがいなかっただけですが」
実際には罪人である彼を連れる許可を得るのに結構苦労させられたのだが、他の人間には頼める様な事ではないし、彼の譜業の技術は不可欠なのだ。
「………、あの子供ですか」
不意に吐かれた台詞に、一瞬息を飲んだ。常日頃あれ程抜けているのに、何故こうも変な所で聡いのか。突き刺す様な紫の視線が真っ直ぐに入ってくる。それは直ぐ様哀れむ様なものに変わり、溜め息と共に横にそれた。
「まぁ、貴方がその気なら私に止めることは出来ませんよ」
そこには無機質な瞳は、無かった。
ジェピ
扉を開けた瞬間漂ってきた強いアルコールの匂い。いきなりのそれに顔を顰めながら中に入れば、案の定、彼が自分の部屋のソファーに堂々と居座り速いペースで酒を開けていた。
「……へーか」
「おぅじぇいど、じゃましてるぜ」
呆れたように呼びかければ返ってくる返事はどこか舌ったらずで、これは相当飲んでいるなと、頭を抱えた。かくいう彼は、人の悩みなど知らずに新しい瓶の栓を抜こうとしている。全く、一体何処からこんなに持ち込んだのか。
「陛下、いくらなんでも飲みすぎですよ…貴方らしくも無い」
「おれらしいというのはどういうことだ」
彼が持っていた瓶を奪い取りそう言えば、彼は青い瞳を曇らせてそう呟く。常の彼らしくないその弱々しい物言いに戸惑う。
原因に思い当たる物を考えて見れば、そう言えば今日帝国のはずれに位置する街がキムラスカとの抗争に巻き込まれ、死者が出たとの報告があった。その報告ではたった数名の死者だったが。
「全く…、本当貴方らしいですよ」
「……じぇいど」
「今日一日ですよ、明日にはいつも通りの貴方で居てください」
(この国を憂う貴方を、私は護り続けますから)
ピオニー受(ガイピオ)
「今日からお前にはこいつらの面倒を見てもらう」
新たに母国に屋敷を構え漸く落ち着いた矢先、滅多に無いだろう皇帝陛下直々のお呼び出し。緊張しながら陛下の私室に向かえば、ぶぅぶぅと鳴き声を上げながら部屋を闊歩する彼らを指差されて、まさかと思いきや案の定言われたその台詞。
「陛下のブウサギを、ですか」
「何だ、こいつらの世話が出来るのに何の不満があるというんだ」
戸惑いを隠し切れていなかったのだろう俺の表情を見ては、唇を尖らせて不貞腐れている彼に思わず苦笑が漏れた。
「……ガイラルディア」
「あ、申し訳ありません陛下。まさか俺みたいな者が、陛下の大切なブウサギの世話を任されるとは思っていなくて」
「お前だから頼むんだ、ガイラルディア」
そう言う視線は至極真剣なもので、思わず息を飲んでしまった。やはりそうされると皇帝の威厳を感じずにはいられない。
「……光栄です、陛下。その任喜んで承りました」
「ま、貴族で動物の世話が出来る奴なんてお前くらいしかいないしな」
(あ、やっぱりそうですか……)
ノーマル(アシュナタ)
「やはり、女としてこのままではいけないと思いますの」
トントンと規則正しいリズムを刻む彼の姿を眺めながらそう呟く。するとその音は止み、彼が困った様な顔で振り返るのが見えた。
「前にも言ったが、ナタリア、お前は王女なんだから……」
「貴方だって王族ではありませんか、努力すれば私だって出来る様になる筈ですわ」
そう言ってまな板の上に置かれた包丁を手に取れば、焦った様に彼がそれを引き止める。
「いや、待てナタリア。確かにその通りだが焦っても仕方ないだろう。………俺が教えてやるから」
「まぁアッシュ、宜しいんですの」
「お前が、上手くなりたいのなら俺は別に」
「………なんかもー二人の世界ですよねぇ、あれみんなのご飯だって気付いてるのかなぁ」
「まぁアッシュが付いていれば食べれないものが出来ることは無いでしょう、良い迷惑ですが」
「……ねぇーガイどうにかアッシュを止めてきてよ」
「俺には無理だって……」
次はヴェスで出来てたものと…?
2009'09.10.Thu
前にマガで流したアンケートのお礼小話。
空メでアンケ代わりだったので、CP毎にお礼文でした。
ヴェスのも流す気でいたのに、結局放置になったという(苦笑
とりあえず多いので分けます。
まずはシンフォ。
ロイゼロ
ぱたぱたと駆ける音が聞こえてきたと思えば、後ろからぎゅっと抱き締めてくる二本の腕。振り返れば紅い髪が肩の辺りでふわふわ揺れている。
「どうしたんだ、ゼロス」
呼び掛けてみても顔を埋めたまま動く様子は無い。その様子が何だか小さな子供の様で、可愛いなぁと思いつつも、その腕を優しく引き剥がして顔を覗き込んだ。
紅い髪に包まれた白い顔の中心で、翡翠色の眼が揺れている。その瞳と眼が合った瞬間、ぱちりと音を立てて瞬き、その白い頬が赤く染まった。
(理由は分からないけど、可愛いから良いか)
そう微笑みながら、真っ赤に染まった頬にキスを落とした。
クラゼロ
夜も更けた路地裏。暗い闇の中そこに紛れるように立っている男を見つけ、静かに近付く。けれど彼には分かっていたのか、微動だにせずに閉じていた瞳をゆっくり開いて、微かに溜め息を吐いた。
「何よ天使サマ、俺と会うのがそんなに嫌」
ふざけるようにそう言えば鋭い視線が更に鋭くなった。そんなに怒ることでも無いだろうに。こっちはわざわざ時間を作ってやってんだっての。
「……他人の夜遊びに文句は言わないが」
静かな声と共に腕を掴まれた。鋭い視線は俺の首筋辺りに突き刺さっている。自分からは見えないが、多分先程の女に跡でも付けられたんだろう。
「なら俺様がどうしようと勝手でしょ」
そう言って腕を振り払おうとするが、思いの外強い力にびくともしない。
「……おい、ちょっと天使サマ」
「しかし、恋人の夜遊びは許す訳にはいかんな」
意地悪く笑いながらそう言って、首筋に噛み付くように口付けられた。
ミトゼロ
真っ赤に染まったその空間にふわりと降り立つ。鼻を突く血の香りが更に舞い上がった。
「お前はそれで良かったのかい」
紅い髪を真っ赤に染めた彼にそう問い掛ける。答えが返ってこない事は知っている。けれども言わずには居られなかった。
割られた輝石の散らばる胸元に手を添えれば、そこは酷く冷たかった。閉じられたまま開く事の無くなった唇に指を添えれば、そこには生前の柔らかさのかけらも無くて。
その固い唇に最初で最後の優しいキスを落とした。
「お前は本当に哀れな子だね、ゼロス」
ゼロス受(ジニゼロ)
ぱらぱらと本を捲る彼を横から眺めていた。その表情はいつもとは違い真剣で、何だか不思議な気持ちになってしまう。
「何ぼーっとしてんだ、がきんちょ」
僕の視線に気付いた彼がその手を止めて怪訝な顔で見てくる。何だか残念に思いながらも、何でもないとノートに視線を戻した。
「ほら、さっき言った公式の解答ここに載ってるだろ、だからこれを…」
それを横から指差す彼の言葉を聞いていれば、やっぱり彼は頭が良いんだろうなと分かる。何でそれを隠そうとするのかは分からないけど。
「おい、ジーニアス。お前さっきから何か上の空じゃねえの。俺様からは教わるのは癪だってか」
考え事をしている僕が気になって仕方が無いのか、少し苛立ちながら拗ねた様にペンを置く彼に笑いが漏れる。
「てめ、」
「だってゼロスが可愛いのがいけないんだよ」
そう言うと、予想外の言葉に固まってしまう彼に、更に笑いが漏れた。
エミリヒ
「リヒターさん」
聞き慣れたアステルの声でそう呼ばれるのに、未だ慣れない。姿さえ同じなのだ。見る度にアステルが戻ってきたと錯覚してしまいそうになる。それを咎めるかのように、その呼び方で辿々しく彼は俺を呼ぶのだ。
「……エミル」
そして俺は俺に言い聞かせるように彼の名を呼ぶ。そうでもしなければ混同してしまいそうだった。
「リヒターさんは僕と生きてるんです」
最初の頃とは違う強い声で彼は言う。まるでアステルみたいに。目を閉じればもうどちらかなんて分からない。
このまま、錯覚したまま過ごして行ければ良いのに。
「僕はアステルさんとは違う、前をみて下さい。リヒターさん」
翡翠の眼が俺を見つめていた。
リヒター受(アスリヒ)
彼が俺のせいで陰口を叩かれている事は知っている。唯でさえその才能に嫉妬している奴は多いのだ。その上ハーフエルフを友人と言っていれば、良く思わない奴らが増えるのは目に見えていた。
「俺と関わるのは、もう止めろ」
「何で、僕はリヒターだから仲良くしたいのに」
だからと思って忠告しても、彼は聞く耳を持たない。何だかんだ言っても彼は頑固なのだ。
「リヒターは気に病む必要は無いんだ、言いたい奴には言わせておけば良い」
その自信はどこから来るのか。全く気にした様子も無く言い放つ彼に苦笑する。まるで俺が世話焼きみたいじゃないか。
そう言えば彼は笑って。
「みたいって、だってリヒターはそうじゃない」
意地悪くそう言った。
ノーマル(ゼロしい)
それは何らいつもと変わらない。
街に着けば必ずと言っていいほど彼はふらりとどこかに消え、気が付けば知らない女と楽しそうに談笑している。そう、いつもの事だ。皆もそれが当たり前かのように触れずにいて、あたしも同じ様に気にしないようにしていた。
彼の、あの顔を見るまでは。
いつものように彼が消えて、皆が宿に向かった時、何故かあたしは宿には行かずに街を歩いていた。まるで彼みたいだと思いながらも、ふらふらと街を眺めていれば、遠くに見えた彼の姿。
街中で声を掛けたんだろう女に手を振り別れる彼に、声を掛けようと近付こうとした瞬間。
ふと消えた、彼の表情。
まるで氷の様に冷たく無表情の彼に恐怖を覚えた。茫然と立ち尽くすあたしに気付いたのか、またいつもの表情に戻りへらへらと笑う。
「あれぇ、珍しいじゃねえの。しいなが一人でふらふらしてるなんて」
「……別に良いじゃないかい」
そのいつもの様子に、まるでさっきのは錯覚だったのかと思えてくる。戸惑うあたしを知ってか知らずか、彼はいつもの様に軽口を続ける。その声は耳には入らず、あの彼の表情だけが頭から離れなかった。
(もしかしてあいつの本当の顔は、)
次はアビス。
空メでアンケ代わりだったので、CP毎にお礼文でした。
ヴェスのも流す気でいたのに、結局放置になったという(苦笑
とりあえず多いので分けます。
まずはシンフォ。
ロイゼロ
ぱたぱたと駆ける音が聞こえてきたと思えば、後ろからぎゅっと抱き締めてくる二本の腕。振り返れば紅い髪が肩の辺りでふわふわ揺れている。
「どうしたんだ、ゼロス」
呼び掛けてみても顔を埋めたまま動く様子は無い。その様子が何だか小さな子供の様で、可愛いなぁと思いつつも、その腕を優しく引き剥がして顔を覗き込んだ。
紅い髪に包まれた白い顔の中心で、翡翠色の眼が揺れている。その瞳と眼が合った瞬間、ぱちりと音を立てて瞬き、その白い頬が赤く染まった。
(理由は分からないけど、可愛いから良いか)
そう微笑みながら、真っ赤に染まった頬にキスを落とした。
クラゼロ
夜も更けた路地裏。暗い闇の中そこに紛れるように立っている男を見つけ、静かに近付く。けれど彼には分かっていたのか、微動だにせずに閉じていた瞳をゆっくり開いて、微かに溜め息を吐いた。
「何よ天使サマ、俺と会うのがそんなに嫌」
ふざけるようにそう言えば鋭い視線が更に鋭くなった。そんなに怒ることでも無いだろうに。こっちはわざわざ時間を作ってやってんだっての。
「……他人の夜遊びに文句は言わないが」
静かな声と共に腕を掴まれた。鋭い視線は俺の首筋辺りに突き刺さっている。自分からは見えないが、多分先程の女に跡でも付けられたんだろう。
「なら俺様がどうしようと勝手でしょ」
そう言って腕を振り払おうとするが、思いの外強い力にびくともしない。
「……おい、ちょっと天使サマ」
「しかし、恋人の夜遊びは許す訳にはいかんな」
意地悪く笑いながらそう言って、首筋に噛み付くように口付けられた。
ミトゼロ
真っ赤に染まったその空間にふわりと降り立つ。鼻を突く血の香りが更に舞い上がった。
「お前はそれで良かったのかい」
紅い髪を真っ赤に染めた彼にそう問い掛ける。答えが返ってこない事は知っている。けれども言わずには居られなかった。
割られた輝石の散らばる胸元に手を添えれば、そこは酷く冷たかった。閉じられたまま開く事の無くなった唇に指を添えれば、そこには生前の柔らかさのかけらも無くて。
その固い唇に最初で最後の優しいキスを落とした。
「お前は本当に哀れな子だね、ゼロス」
ゼロス受(ジニゼロ)
ぱらぱらと本を捲る彼を横から眺めていた。その表情はいつもとは違い真剣で、何だか不思議な気持ちになってしまう。
「何ぼーっとしてんだ、がきんちょ」
僕の視線に気付いた彼がその手を止めて怪訝な顔で見てくる。何だか残念に思いながらも、何でもないとノートに視線を戻した。
「ほら、さっき言った公式の解答ここに載ってるだろ、だからこれを…」
それを横から指差す彼の言葉を聞いていれば、やっぱり彼は頭が良いんだろうなと分かる。何でそれを隠そうとするのかは分からないけど。
「おい、ジーニアス。お前さっきから何か上の空じゃねえの。俺様からは教わるのは癪だってか」
考え事をしている僕が気になって仕方が無いのか、少し苛立ちながら拗ねた様にペンを置く彼に笑いが漏れる。
「てめ、」
「だってゼロスが可愛いのがいけないんだよ」
そう言うと、予想外の言葉に固まってしまう彼に、更に笑いが漏れた。
エミリヒ
「リヒターさん」
聞き慣れたアステルの声でそう呼ばれるのに、未だ慣れない。姿さえ同じなのだ。見る度にアステルが戻ってきたと錯覚してしまいそうになる。それを咎めるかのように、その呼び方で辿々しく彼は俺を呼ぶのだ。
「……エミル」
そして俺は俺に言い聞かせるように彼の名を呼ぶ。そうでもしなければ混同してしまいそうだった。
「リヒターさんは僕と生きてるんです」
最初の頃とは違う強い声で彼は言う。まるでアステルみたいに。目を閉じればもうどちらかなんて分からない。
このまま、錯覚したまま過ごして行ければ良いのに。
「僕はアステルさんとは違う、前をみて下さい。リヒターさん」
翡翠の眼が俺を見つめていた。
リヒター受(アスリヒ)
彼が俺のせいで陰口を叩かれている事は知っている。唯でさえその才能に嫉妬している奴は多いのだ。その上ハーフエルフを友人と言っていれば、良く思わない奴らが増えるのは目に見えていた。
「俺と関わるのは、もう止めろ」
「何で、僕はリヒターだから仲良くしたいのに」
だからと思って忠告しても、彼は聞く耳を持たない。何だかんだ言っても彼は頑固なのだ。
「リヒターは気に病む必要は無いんだ、言いたい奴には言わせておけば良い」
その自信はどこから来るのか。全く気にした様子も無く言い放つ彼に苦笑する。まるで俺が世話焼きみたいじゃないか。
そう言えば彼は笑って。
「みたいって、だってリヒターはそうじゃない」
意地悪くそう言った。
ノーマル(ゼロしい)
それは何らいつもと変わらない。
街に着けば必ずと言っていいほど彼はふらりとどこかに消え、気が付けば知らない女と楽しそうに談笑している。そう、いつもの事だ。皆もそれが当たり前かのように触れずにいて、あたしも同じ様に気にしないようにしていた。
彼の、あの顔を見るまでは。
いつものように彼が消えて、皆が宿に向かった時、何故かあたしは宿には行かずに街を歩いていた。まるで彼みたいだと思いながらも、ふらふらと街を眺めていれば、遠くに見えた彼の姿。
街中で声を掛けたんだろう女に手を振り別れる彼に、声を掛けようと近付こうとした瞬間。
ふと消えた、彼の表情。
まるで氷の様に冷たく無表情の彼に恐怖を覚えた。茫然と立ち尽くすあたしに気付いたのか、またいつもの表情に戻りへらへらと笑う。
「あれぇ、珍しいじゃねえの。しいなが一人でふらふらしてるなんて」
「……別に良いじゃないかい」
そのいつもの様子に、まるでさっきのは錯覚だったのかと思えてくる。戸惑うあたしを知ってか知らずか、彼はいつもの様に軽口を続ける。その声は耳には入らず、あの彼の表情だけが頭から離れなかった。
(もしかしてあいつの本当の顔は、)
次はアビス。
2009'08.31.Mon
永久天使性結晶症なゼロスのお話。
長くなったので2つに分けました(苦笑
「何故、隠すのだ」
部屋に着いて直ぐに彼が放ったのはその一言。それを聞いた瞬間、誤魔化しの笑みを浮かべようとするも、やっぱり誤魔化せ無いかと諦めて、用意された椅子に座りながら、溜め息を吐いた。
その俺の様子を静かに眺めながら、けれど素早く俺のグローブを外していく。されるが儘、彼の驚きの顔を眺めていた。
「ここまで進行していたとは……」
彼が見つめていたのは俺の腕。白い肌に浮き出る様に表れているのは結晶化した皮膚。まるで石そのものの様になったそこは、無機質な硬さを示していた。
「……前に言った筈だろう、お前はクルシスの輝石に、」
「拒絶反応があるから極力付けるな、だろ?」
静かに放たれる言葉に、その続きを先に言いながら苦笑すれば、見なくても分かるほど発せられる怒気。まるで言い付けを守らない子供を叱る様なそれに、いや、寧ろその通りかと更に苦笑した。
「……何が、可笑しいのだ」
「いんや、別に。つか仕方ないでしょうよ、これ付けねぇと俺様達ここに来れないし」
そう言えば彼は唯無言で俺を見つめてくる。その真っ直ぐな視線に段々居心地が悪くなってきて、部屋を後にしようと立ち上がった。
「待て、神子よ」
「……何だよ、お叱りはもう終わったでしょ」
すると再び腕を掴まれて、また椅子に座らされる。訳が分からず戸惑っていれば、目の前に出されたのは今まで必死に集めてきた、コレットの、そしてこの俺の症状を治す事が出来る素材。
マナリーフとジルコン、そしてマナのかけらだった。
しかもドワーフにしか出来ない筈の精製も既にされていると、薬状のそれらを手渡される。後は飲むだけだ、と。
「なんで、これ……」
「かつての神子の中にも同じ症状になった者は居たからな、もしもの為にと貯蓄されていたのだ」
いきなりの事に面食らっていれば、何事も無かった様に素っ気なく返される。少し考えれば分かる事だ、なのに思い浮かびもしなかった事実に恥ずかしくなって、それを誤魔化す様に極めて冷静に言葉を返した。
「だからってなんで俺に、……」
「こうでもしなければお前は隠し通すつもりだろう?」
問えば、ふっ、と目に見えるように軽く笑われて、そう言葉を続けられる。まるで全てを見抜かれているようで、かなわない、と肩を竦めた。
「………わかったよ、貰っとくわ」
渋々そう言って手渡された薬をまじまじと見る。その辺で見る物と変わりない粉末状のそれは、とても綺麗な色をしていた。意を決してそれを口に流し込む。全て飲み込めば、ぐらりと視界が揺れた。
ふと目を開くと視界に映ったのは天井。ゆっくりと周りを見渡せば、そこで漸く自分がベッドで寝ている事に気が付いた。慌てて飛び起きれば、横から聞こえてきたのは苦笑。
「何をそこまで慌てているのだ、先程からは数分しか経っていないぞ」
そう言われて、途端に恥ずかしくなり顔を背けた。そのまま己の腕を見れば先程よりは引いた症状に、小さく安堵する。
「それよりも、皆が待っているんではないのか」
「……はぁ、だからさっき慌てたんだろーが」
まるで心配する様に、しかしのん気に言われたそれに、呆れの溜め息を吐く。それに更に苦笑していた彼は、一転して真面目な声色で小さく呟いた。
「無理はするな、……ゼロス」
まるで父親の様な優しげな声に、一瞬動きが止まる。けれど直ぐ様それに応える様に、
「……、ありがと」
そう小さく呟いて、真っ赤になった顔を見せない様に彼に背を向けて、今度こそ部屋を後にした。
「ゼロスっ!!どこ行ってたんだよ心配したんだぞっ!」
「わりぃロイド君、俺様広くて迷っちまってたわ」
案の定、街の中央に戻れば凄い顔した皆が待ちかまえていた。いつもの様に茶化しながらその叱咤をかわせば、そのまま呆れられる。いつも通りのそれに、ばれてないなと安心した。
「ねぇ……ゼロス」
移動を再開して少しした頃、後ろからコレットに呼び止められる。彼女からは珍しいな、と振り向いてそれに応えれば、小さな手のひらが、俺の腕を掴んできた。
「身体はもう大丈夫なの?」
心配そうな声でこっそり呟かれたその言葉に、驚きを隠せなかった。動けずにいる俺に、更に彼女は続ける。
「さっきのゼロス、辛そうだったから」
そう言う彼女は、俺よりもずっと辛そうに身体を引きずっている。そんな彼女だからこそ俺の異変に気付いたんだろうか。
「心配しなくても俺様はへーきだぜぇ、今度は、」
コレットちゃんの番でしょ。
そう最後に小さく呟けば、返ってくるのは安堵の微笑み。それにまた俺も微笑み返して、他の皆にはばれない様に二人で小さく笑った。
「歪曲した無痛。」
選択制お題より。
配布元:Abandon
10万打リクエストで永久天使性結晶症なゼロスを唯一気付いたクラトスがこっそり治す、でした。
コレットは気付いてるんで唯一じゃなくなってしまいましたが、彼女なら気付いてると思いまして。神子んび最高(笑
なんか色々詰め込んだら長くなってしまいました。久しぶりだよこんな長いの。
オタオタ様、こんなので宜しかったでしょうか?
リクエストありがとうございました!
長くなったので2つに分けました(苦笑
「何故、隠すのだ」
部屋に着いて直ぐに彼が放ったのはその一言。それを聞いた瞬間、誤魔化しの笑みを浮かべようとするも、やっぱり誤魔化せ無いかと諦めて、用意された椅子に座りながら、溜め息を吐いた。
その俺の様子を静かに眺めながら、けれど素早く俺のグローブを外していく。されるが儘、彼の驚きの顔を眺めていた。
「ここまで進行していたとは……」
彼が見つめていたのは俺の腕。白い肌に浮き出る様に表れているのは結晶化した皮膚。まるで石そのものの様になったそこは、無機質な硬さを示していた。
「……前に言った筈だろう、お前はクルシスの輝石に、」
「拒絶反応があるから極力付けるな、だろ?」
静かに放たれる言葉に、その続きを先に言いながら苦笑すれば、見なくても分かるほど発せられる怒気。まるで言い付けを守らない子供を叱る様なそれに、いや、寧ろその通りかと更に苦笑した。
「……何が、可笑しいのだ」
「いんや、別に。つか仕方ないでしょうよ、これ付けねぇと俺様達ここに来れないし」
そう言えば彼は唯無言で俺を見つめてくる。その真っ直ぐな視線に段々居心地が悪くなってきて、部屋を後にしようと立ち上がった。
「待て、神子よ」
「……何だよ、お叱りはもう終わったでしょ」
すると再び腕を掴まれて、また椅子に座らされる。訳が分からず戸惑っていれば、目の前に出されたのは今まで必死に集めてきた、コレットの、そしてこの俺の症状を治す事が出来る素材。
マナリーフとジルコン、そしてマナのかけらだった。
しかもドワーフにしか出来ない筈の精製も既にされていると、薬状のそれらを手渡される。後は飲むだけだ、と。
「なんで、これ……」
「かつての神子の中にも同じ症状になった者は居たからな、もしもの為にと貯蓄されていたのだ」
いきなりの事に面食らっていれば、何事も無かった様に素っ気なく返される。少し考えれば分かる事だ、なのに思い浮かびもしなかった事実に恥ずかしくなって、それを誤魔化す様に極めて冷静に言葉を返した。
「だからってなんで俺に、……」
「こうでもしなければお前は隠し通すつもりだろう?」
問えば、ふっ、と目に見えるように軽く笑われて、そう言葉を続けられる。まるで全てを見抜かれているようで、かなわない、と肩を竦めた。
「………わかったよ、貰っとくわ」
渋々そう言って手渡された薬をまじまじと見る。その辺で見る物と変わりない粉末状のそれは、とても綺麗な色をしていた。意を決してそれを口に流し込む。全て飲み込めば、ぐらりと視界が揺れた。
ふと目を開くと視界に映ったのは天井。ゆっくりと周りを見渡せば、そこで漸く自分がベッドで寝ている事に気が付いた。慌てて飛び起きれば、横から聞こえてきたのは苦笑。
「何をそこまで慌てているのだ、先程からは数分しか経っていないぞ」
そう言われて、途端に恥ずかしくなり顔を背けた。そのまま己の腕を見れば先程よりは引いた症状に、小さく安堵する。
「それよりも、皆が待っているんではないのか」
「……はぁ、だからさっき慌てたんだろーが」
まるで心配する様に、しかしのん気に言われたそれに、呆れの溜め息を吐く。それに更に苦笑していた彼は、一転して真面目な声色で小さく呟いた。
「無理はするな、……ゼロス」
まるで父親の様な優しげな声に、一瞬動きが止まる。けれど直ぐ様それに応える様に、
「……、ありがと」
そう小さく呟いて、真っ赤になった顔を見せない様に彼に背を向けて、今度こそ部屋を後にした。
「ゼロスっ!!どこ行ってたんだよ心配したんだぞっ!」
「わりぃロイド君、俺様広くて迷っちまってたわ」
案の定、街の中央に戻れば凄い顔した皆が待ちかまえていた。いつもの様に茶化しながらその叱咤をかわせば、そのまま呆れられる。いつも通りのそれに、ばれてないなと安心した。
「ねぇ……ゼロス」
移動を再開して少しした頃、後ろからコレットに呼び止められる。彼女からは珍しいな、と振り向いてそれに応えれば、小さな手のひらが、俺の腕を掴んできた。
「身体はもう大丈夫なの?」
心配そうな声でこっそり呟かれたその言葉に、驚きを隠せなかった。動けずにいる俺に、更に彼女は続ける。
「さっきのゼロス、辛そうだったから」
そう言う彼女は、俺よりもずっと辛そうに身体を引きずっている。そんな彼女だからこそ俺の異変に気付いたんだろうか。
「心配しなくても俺様はへーきだぜぇ、今度は、」
コレットちゃんの番でしょ。
そう最後に小さく呟けば、返ってくるのは安堵の微笑み。それにまた俺も微笑み返して、他の皆にはばれない様に二人で小さく笑った。
「歪曲した無痛。」
選択制お題より。
配布元:Abandon
10万打リクエストで永久天使性結晶症なゼロスを唯一気付いたクラトスがこっそり治す、でした。
コレットは気付いてるんで唯一じゃなくなってしまいましたが、彼女なら気付いてると思いまして。神子んび最高(笑
なんか色々詰め込んだら長くなってしまいました。久しぶりだよこんな長いの。
オタオタ様、こんなので宜しかったでしょうか?
リクエストありがとうございました!
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