2009'04.25.Sat
噛みつく様に繰り返される一時の戯れ。それは不毛な行為以外の何物でも無い、今ではお決まりの挨拶みたいなものだ。
路地裏にこそこそ隠れておきながら咥内を貪り合って、いつバレるかというスリルを感じているのだ。まぁこれは俺だけだと思うけれど。
近頃は息子の方ともこんな事をしてると知ったら目の前のこいつはどう思うんだろう。薄く目を開けて、そこから見える鳶色を眺めてそう考える。
舌使いも息継ぎも全然違うこの親子だけれど(てかロイドは慣れてないだけかも知れないけどさ)、目の色だけはほんとそっくり。
髪の色はちょっと違うけど、ロイドも下ろしたらそっくりなのかもしれない。今度試してみようか。
「考え事とは随分余裕があるのだな」
「俺様がキス位でどうにかなる程生方じゃない事、知ってるでしょ天使様」
「どうだかな」
何だかんだ言って意地っ張りで負けず嫌いなのもそっくりだよな。独占欲も強いし。それが満更じゃない俺も俺だけど。
「お前はふらふらし過ぎなのだ」
「それは今更でしょーよ、俺様は可愛い子の誘いは断れないの」
笑いながらそう言ってまたキスを強請れば、不機嫌に眉間に皺を寄せて遮られる。
「男にだって足を開くだろう、お前は」
「……ねぇ天使様、怒ってんの」
常のこの男ならば決して言わない様な珍しい台詞に、これは随分と機嫌が悪いなと、何か癪に触っただろうかと頭を捻る。
「さぁ、どうだろうな」
そう惚けながら不敵な笑みを浮かべる。あんたのそんな顔が結構好きだったりするんだよな。そんな事を考えていれば不意にちくりと感じる痛み。見れば首筋に軽く噛み付かれていた。
入念に噛まれ吸われて、その後離れていく顔は何だか勝ち誇った様な顔をしていて、これはしっかりと痕を残されたな、とぼんやり思う。つか、それよりも。
(自分の息子相手に本気で嫉妬すんなって)
痕の付いているだろう部分を撫でながら昨晩の事を思い出す。確かロイドも同じ様にここに噛み付いていた。
ほんと、似た者親子だ。その間を行き来して、それでいてそれが満更じゃない俺も救い様の無い馬鹿だけれど。
でも。
あんた達が俺に触れてくる手は、とても温かくて心地良いんだよ。
だから、さ。
「あんただけは、俺を捨てないでよ」
(最期にあいつを裏切る俺を見捨てないで)
縋る様に伸ばされた手のひらを握り返す少し大きいそれは、じんわりと暖かった。
後日談
「あれ、何かここ、濃くなってるような」
「気のせいでしょ、ほらこっち向けって」
「おいっ、ん……ぷはぁ、……なぁ、何かゼロス、焦ってないか」
「何で俺様がロイド君相手に焦んなきゃいけないのよ、ほら集中しろや、下手くそなんだからよ」
「下手くそは余計だっ……くっそー…いつか泣かしてやるからな」
「ま、精々精進するんだな、ハニー」
とりあえずクラゼロ大好きです。
クラゼロお題も消化しないとなぁ(苦笑
路地裏にこそこそ隠れておきながら咥内を貪り合って、いつバレるかというスリルを感じているのだ。まぁこれは俺だけだと思うけれど。
近頃は息子の方ともこんな事をしてると知ったら目の前のこいつはどう思うんだろう。薄く目を開けて、そこから見える鳶色を眺めてそう考える。
舌使いも息継ぎも全然違うこの親子だけれど(てかロイドは慣れてないだけかも知れないけどさ)、目の色だけはほんとそっくり。
髪の色はちょっと違うけど、ロイドも下ろしたらそっくりなのかもしれない。今度試してみようか。
「考え事とは随分余裕があるのだな」
「俺様がキス位でどうにかなる程生方じゃない事、知ってるでしょ天使様」
「どうだかな」
何だかんだ言って意地っ張りで負けず嫌いなのもそっくりだよな。独占欲も強いし。それが満更じゃない俺も俺だけど。
「お前はふらふらし過ぎなのだ」
「それは今更でしょーよ、俺様は可愛い子の誘いは断れないの」
笑いながらそう言ってまたキスを強請れば、不機嫌に眉間に皺を寄せて遮られる。
「男にだって足を開くだろう、お前は」
「……ねぇ天使様、怒ってんの」
常のこの男ならば決して言わない様な珍しい台詞に、これは随分と機嫌が悪いなと、何か癪に触っただろうかと頭を捻る。
「さぁ、どうだろうな」
そう惚けながら不敵な笑みを浮かべる。あんたのそんな顔が結構好きだったりするんだよな。そんな事を考えていれば不意にちくりと感じる痛み。見れば首筋に軽く噛み付かれていた。
入念に噛まれ吸われて、その後離れていく顔は何だか勝ち誇った様な顔をしていて、これはしっかりと痕を残されたな、とぼんやり思う。つか、それよりも。
(自分の息子相手に本気で嫉妬すんなって)
痕の付いているだろう部分を撫でながら昨晩の事を思い出す。確かロイドも同じ様にここに噛み付いていた。
ほんと、似た者親子だ。その間を行き来して、それでいてそれが満更じゃない俺も救い様の無い馬鹿だけれど。
でも。
あんた達が俺に触れてくる手は、とても温かくて心地良いんだよ。
だから、さ。
「あんただけは、俺を捨てないでよ」
(最期にあいつを裏切る俺を見捨てないで)
縋る様に伸ばされた手のひらを握り返す少し大きいそれは、じんわりと暖かった。
後日談
「あれ、何かここ、濃くなってるような」
「気のせいでしょ、ほらこっち向けって」
「おいっ、ん……ぷはぁ、……なぁ、何かゼロス、焦ってないか」
「何で俺様がロイド君相手に焦んなきゃいけないのよ、ほら集中しろや、下手くそなんだからよ」
「下手くそは余計だっ……くっそー…いつか泣かしてやるからな」
「ま、精々精進するんだな、ハニー」
とりあえずクラゼロ大好きです。
クラゼロお題も消化しないとなぁ(苦笑
PR
2009'04.24.Fri
いつも夢に見るのはあの瞬間。
流れ出す血は服を真っ赤に染めてなお止まる事は無い。激しい痛みが左胸を突き刺しているのに身体は麻痺したかの様に動かない。視界さえも真っ赤に染まって為す術も無い儘、ただ固い岩に横たわっている。
朦朧としてくる意識の中では、死というものを直に感じて恐怖を通り越して諦めかけていた。もう自分は死ぬんだと、そう意識を閉ざそうとして、最期に。
真っ赤な鎧に銀髪の姿が見えた。
死の瞬間は未だに鮮明に覚えているのだ。何度でも繰り返す夢の中で、自分は何度も死を迎える。終わることは無い終焉を繰り返すのだ。
そしていつも最期には彼の姿を見て、夢は終わる。その先には決して進みはしない。当たり前だ、死の先など存在する筈は無いのだから。
けれども自分はこうして過去の死を夢に見続けている。矛盾したこの状況に零れるのは苦笑ばかりだ。死んだ筈の自分が夢を見ているだなんて。
死んだ後を夢に見たことは決してない。あの頃は全てが曖昧で夢に残る様な事が無かっただけかもしれない。あの時から10年経とうとも、見るのはあの日のあの瞬間までだ。
それは彼と相対してからも変わりはしなかった。現実は彼らのお陰で明るいものに成りつつあるのに、夢の中では未だにあの頃の優しい彼が笑い掛けている。その先に在るのは絶望だと知っているのに、夢の中の自分は同じく彼に笑い返していた。
終わらない、まるで走馬灯の様な、その夢。
「勝手に忘れるなって?全く、勘弁して欲しいわ」
ほらまた、落ちた夢の中でもう一度、最初から最期までを繰り返すのだ。
選択制お題より。
配布元:Abandon
一度死んでるから見るのは走馬灯だけなおっさん。ユーリと寝てても夢で見るのはアレクセイばかりだから、起きた瞬間は訳が分からなくて、泣きそうになってたりしたら可愛いよね(笑
2009'04.16.Thu
とんとん、と閉じられた扉を控え目に叩く。だが、部屋は静まり返っていて、求めていた返事は返って来ない。鍵は掛かっていないようで、ゆっくりとノブを回せばかちゃりと小さな音を立てて開いた。
「……スパーダ、入るよ」
勝手に入るのも悪いと思ったけれど片手に抱えたものが冷めてしまうし、仕方無く一言だけ断って部屋に入る。
少し入った先にあるベッドの上、横たわっている彼の姿が見えた。
「あれ……スパーダ、寝ちゃってるの?」
腕に隠されて表情は見えない。取り敢えずお盆をテーブルに置いて、彼の顔を覗き込んだ。
「………、んだよ」
漸く彼の顔が見えそうという距離で、ぼそりと彼の口が動いた。未だ顔は見えないけれど、やっぱりまだ起きていたらしい。
「夕飯、スパーダの分持ってきたんだけど……」
そう言ってテーブルを指差せば、体を起こして一瞥してから小さく溜め息を吐かれた。
「いらねぇ、って言っただろーが」
「駄目だよ、明日だって移動するんだし、体力持たないよ」
「そんな柔じゃねーよ俺は」
そう言いながらも渋々起き上がりテーブルに向かって、お盆に並べられた食事に手を付け始めた。その仕草はやっぱり優雅で、さっきのお兄さんの姿と被る。
「……あのなぁ、そうやって見られてっと食べ難いだろ」
ぼーっとそんな事を考えていたら知らぬ間に彼の事を眺め続けていた様で、居辛そうに彼が呟く。その声は何だかいつもより覇気が無くて、やっぱり気にしているのかと思ってしまう。
「あ、……ごめん」
「つーかよ、言いたい事あるならはっきり言えっつーの」
焦った様にそう謝れば、彼は面倒くさそうに顔を顰めて言う。きっと僕の思っている事なんて気付いているんだ。どう返せば良いか分からなくて部屋には静寂が訪れる。徐々に気まずくなる空気に意を決して口を開いた。
「スパーダは、家には帰らないの?」
「はっ、あれ聞いといてよく言えるぜ、誰が帰るかあんなとこ」
「お兄さんはスパーダを探してくれたんだよ」
「親父に言われて仕方無くだろ、そう言ってたじゃねえか」
「で、でもきっと心配して……っ」
がちゃん、と音を立てて力任せに置かれる食器。座っていた椅子を勢い良く倒して彼が立ち上がった。
「何も知らねぇ癖に好き勝手事言うんじゃねえよ」
「そんなつもりじゃ……」
「どうせ可哀想だとか思ってんだろ、大きなお世話だぜ」
吐き捨てる様にそう言ってまたベッドに向かい毛布に包まってしまう。有無を言わさない拒絶にただ呆然と立ち尽くした。やっぱりリカルドさんの言っていた様にそっとしておくべきだったのかな、なんて思いもしたけれど、それじゃいけない気もするんだ。
「……だって」
「あん、まだ何かあんのかよ」
「だって、何も教えてくれないじゃないか。教えてくれないから知らないし分からないんだ。分からないのにスパーダのあんな顔見たら気になるに決まってるよっ」
怪訝な顔をする彼を見ない振りをして、一気に思っていた事を吐き出した。最後は半ば叫びの様になっていて、彼が呆気に取られているのが分かった。
「……お前に分かってもらうつもりはねぇよ」
「駄目だよっ」
困った様に顔を背ける彼に、一言強く言い放ってそれを咎める。逃げる様に毛布に顔を隠そうとする彼の腕を掴んだ。
「僕達は仲間なんだから、スパーダの事もちゃんと知りたい」
そう言ってその顔を真っ直ぐ見つめれば、そこで漸く彼の目元が赤く染まっているのに気付いた。その姿にまた胸が苦しくなる。
「……一人で泣いてて欲しくないよ」
息をのむ彼をゆっくり抱き締めれば、く曇った嗚咽が小さく零れ始める。震える翡翠の髪を静かに撫でながら、その声が消えるまでずっとそうしていた。
「本当に、良いの」
翌朝ハルトマンさんの家を後にして道具調達もそこそこに再び街の外へと出る。前を歩いている彼の姿はいつもと変わらない。無理している様にも見えるその姿にそう問い掛ければ、思っていたよりもすっきりとした顔を返された。
「ん、別に良いんじゃねえの」
「別にって……」
「どうせ俺は戻る気ねぇし、それに俺達は仲間なんだろ、ダチは裏切らない主義だからな」
そう言って彼らしい笑い声を上げながらぽんぽんと頭を軽く叩かれる。その様子に安心して、僕も笑いながら頭を押さえてそれに応えた。
「ちょっとあんた達煩いわよっ」
後ろからそうイリアに怒られて、また二人で笑ってしまう。呆れた様な声が後ろから聞こえたのに気付いていたけれど、不思議と気にはならなかった。
「……てか、何よあれ」
「何やルカ兄ちゃんとスパーダ兄ちゃん仲良しになってるなあ、うち羨ましいわぁ」
「スパーダの奴、もっと落ち込んでるかと思ったのに」
「ミルダのお陰だろうな」
「そうですね、スパーダ君良い表情してるもの、ルカ君は凄いなぁ」
と言うことで、例の続きです。
もう完全に新しく書いたものになります。本当に前に何が書きたかったのか思い出せませんでした(苦笑
前編の流れに対して少しおかしい気もしますが、何分1年も開いていれば仕方ないですよ、もう。
こんなんで満足していただけるか分かりませんが、良かったですかね。
あとこれ、久しぶりに記号が復活してます。一年間鍵括弧と三点だけで頑張ってみたんですが、今後もはてなだけは復活してこうと思ってます。やっぱり私如きでは表現に限界を感じました(苦笑
「……スパーダ、入るよ」
勝手に入るのも悪いと思ったけれど片手に抱えたものが冷めてしまうし、仕方無く一言だけ断って部屋に入る。
少し入った先にあるベッドの上、横たわっている彼の姿が見えた。
「あれ……スパーダ、寝ちゃってるの?」
腕に隠されて表情は見えない。取り敢えずお盆をテーブルに置いて、彼の顔を覗き込んだ。
「………、んだよ」
漸く彼の顔が見えそうという距離で、ぼそりと彼の口が動いた。未だ顔は見えないけれど、やっぱりまだ起きていたらしい。
「夕飯、スパーダの分持ってきたんだけど……」
そう言ってテーブルを指差せば、体を起こして一瞥してから小さく溜め息を吐かれた。
「いらねぇ、って言っただろーが」
「駄目だよ、明日だって移動するんだし、体力持たないよ」
「そんな柔じゃねーよ俺は」
そう言いながらも渋々起き上がりテーブルに向かって、お盆に並べられた食事に手を付け始めた。その仕草はやっぱり優雅で、さっきのお兄さんの姿と被る。
「……あのなぁ、そうやって見られてっと食べ難いだろ」
ぼーっとそんな事を考えていたら知らぬ間に彼の事を眺め続けていた様で、居辛そうに彼が呟く。その声は何だかいつもより覇気が無くて、やっぱり気にしているのかと思ってしまう。
「あ、……ごめん」
「つーかよ、言いたい事あるならはっきり言えっつーの」
焦った様にそう謝れば、彼は面倒くさそうに顔を顰めて言う。きっと僕の思っている事なんて気付いているんだ。どう返せば良いか分からなくて部屋には静寂が訪れる。徐々に気まずくなる空気に意を決して口を開いた。
「スパーダは、家には帰らないの?」
「はっ、あれ聞いといてよく言えるぜ、誰が帰るかあんなとこ」
「お兄さんはスパーダを探してくれたんだよ」
「親父に言われて仕方無くだろ、そう言ってたじゃねえか」
「で、でもきっと心配して……っ」
がちゃん、と音を立てて力任せに置かれる食器。座っていた椅子を勢い良く倒して彼が立ち上がった。
「何も知らねぇ癖に好き勝手事言うんじゃねえよ」
「そんなつもりじゃ……」
「どうせ可哀想だとか思ってんだろ、大きなお世話だぜ」
吐き捨てる様にそう言ってまたベッドに向かい毛布に包まってしまう。有無を言わさない拒絶にただ呆然と立ち尽くした。やっぱりリカルドさんの言っていた様にそっとしておくべきだったのかな、なんて思いもしたけれど、それじゃいけない気もするんだ。
「……だって」
「あん、まだ何かあんのかよ」
「だって、何も教えてくれないじゃないか。教えてくれないから知らないし分からないんだ。分からないのにスパーダのあんな顔見たら気になるに決まってるよっ」
怪訝な顔をする彼を見ない振りをして、一気に思っていた事を吐き出した。最後は半ば叫びの様になっていて、彼が呆気に取られているのが分かった。
「……お前に分かってもらうつもりはねぇよ」
「駄目だよっ」
困った様に顔を背ける彼に、一言強く言い放ってそれを咎める。逃げる様に毛布に顔を隠そうとする彼の腕を掴んだ。
「僕達は仲間なんだから、スパーダの事もちゃんと知りたい」
そう言ってその顔を真っ直ぐ見つめれば、そこで漸く彼の目元が赤く染まっているのに気付いた。その姿にまた胸が苦しくなる。
「……一人で泣いてて欲しくないよ」
息をのむ彼をゆっくり抱き締めれば、く曇った嗚咽が小さく零れ始める。震える翡翠の髪を静かに撫でながら、その声が消えるまでずっとそうしていた。
「本当に、良いの」
翌朝ハルトマンさんの家を後にして道具調達もそこそこに再び街の外へと出る。前を歩いている彼の姿はいつもと変わらない。無理している様にも見えるその姿にそう問い掛ければ、思っていたよりもすっきりとした顔を返された。
「ん、別に良いんじゃねえの」
「別にって……」
「どうせ俺は戻る気ねぇし、それに俺達は仲間なんだろ、ダチは裏切らない主義だからな」
そう言って彼らしい笑い声を上げながらぽんぽんと頭を軽く叩かれる。その様子に安心して、僕も笑いながら頭を押さえてそれに応えた。
「ちょっとあんた達煩いわよっ」
後ろからそうイリアに怒られて、また二人で笑ってしまう。呆れた様な声が後ろから聞こえたのに気付いていたけれど、不思議と気にはならなかった。
「……てか、何よあれ」
「何やルカ兄ちゃんとスパーダ兄ちゃん仲良しになってるなあ、うち羨ましいわぁ」
「スパーダの奴、もっと落ち込んでるかと思ったのに」
「ミルダのお陰だろうな」
「そうですね、スパーダ君良い表情してるもの、ルカ君は凄いなぁ」
と言うことで、例の続きです。
もう完全に新しく書いたものになります。本当に前に何が書きたかったのか思い出せませんでした(苦笑
前編の流れに対して少しおかしい気もしますが、何分1年も開いていれば仕方ないですよ、もう。
こんなんで満足していただけるか分かりませんが、良かったですかね。
あとこれ、久しぶりに記号が復活してます。一年間鍵括弧と三点だけで頑張ってみたんですが、今後もはてなだけは復活してこうと思ってます。やっぱり私如きでは表現に限界を感じました(苦笑
2009'04.01.Wed
それは見てるだけで痛々しいものだった。彼の弓を引く指があの日から微かに震えているのを知っている。それを隠す為に後衛にばかり周り、弓を変形させる回数が極端に減ったのも知っている。彼が未だに、あの名前に囚われているのも知っている。それを隠そうと必死に去勢を張る姿に胸を痛める事しか出来無いのだ。
彼は決して泣き顔を見せた事はない。それはドンが死んだ時も同じだったし、あの時も同じだろうとは思ってはいた。思ってはいたが、実際に全くその素振りを見せない彼を見ると、こっちの方が泣きたくなってくるのが現状だ。
「だから、泣けよおっさん」
部屋に一人居る所をわざわざ忍び込んで押さえ付けながらそう強要してみても、彼には届きはしない。いや、届いていたとしても応えはしない。わかってはいるさ。それがあんたの決めた道だってな。だがそれであんだが苦しんでるのをほっとける程出来た人間じゃないんだよ、俺は。
「………、なんで青年の方が泣きそうな顔してんのよ」
ゆるゆると伸びてくる腕は俺の頬に触れる。その先の顔は苦笑というより困惑に近くて、それが余計に辛かった。
「あんたが泣かねぇから」
「おっさんは、泣けないの。大人の青年なら分かってるでしょ」
まるで子供をあやす様な素振りで頭を撫でながら遠くを見つめる。その翡翠色の瞳には俺の顔など映っていない。決して交わることのない視線が、狭い部屋を飛び交っていた。
「あんたをそこまでさせるのは一体何なんだよ」
「良い大人はそう簡単に泣くもんじゃ無いでしょ」
「泣いて良い時もあるだろうが」
それを無理矢理俺に向かせてそう言えば、うっすらと開く唇は震えるばかりで。少しの静寂の後、諦めた溜め息と共に小さく呟いた。
「………、分かってて言うんだからユーリってほんと意地悪いわ」
「分かってるなら応えてくれよ」
身体を起こしても向き合った姿勢のまま、少し茶化す様にそう笑えば今度は苦笑を浮かべる。けれどぼさぼさに乱れた髪の中の瞳は決して笑っていなかった。
「だめ、よ。おっさんにもどうなるか分かんないんだもの」
「恐いのか」
「………恐い、か。どうなんだろうね、俺長い間死んでたから、分かんないのよ」
暗い影を落とし始める瞳に、どうしようもない焦りを感じて勢い良く肩を掴んだ。微かに顰められた眉を見なかった振りをして、柄もなく声を荒げた。
「おっさんは今ここで生きてるだろうが」
その俺の様子に流石に驚いたのか、翡翠色の瞳を微かに見開かせて、戸惑い気味にたじろぐ。
「生きてるなら、時には訳分かんなくなる位感情に任せても良いだろ。ぐちゃぐちゃになったとしても、それが生きてるって事だ。格好付けた振りして逃げんな、レイヴン」
真っ直ぐにその瞳を見つめながらそう言えば、びくりと身体を震わせて息を飲む。苦しそうに歪む表情に胸が痛んだ。
「……、自分勝手な事を言ってるのは分かってんだがな、でも」
「いや、いいのよ……ほんとごめんね、駄目なおっさんで。………ありがと、ユーリ」
そう言って真っ直ぐに見つめ返される瞳は、乾ききったままだった。
選択制お題より。
配布元:Abandon
先月マガで流したやつですが、ランク入ってる割に近頃サイトにユリレイが少ないので流用(苦笑
後でちゃんと新しいものを書きます。多分。
4月馬鹿は絵で許して(汗
彼は決して泣き顔を見せた事はない。それはドンが死んだ時も同じだったし、あの時も同じだろうとは思ってはいた。思ってはいたが、実際に全くその素振りを見せない彼を見ると、こっちの方が泣きたくなってくるのが現状だ。
「だから、泣けよおっさん」
部屋に一人居る所をわざわざ忍び込んで押さえ付けながらそう強要してみても、彼には届きはしない。いや、届いていたとしても応えはしない。わかってはいるさ。それがあんたの決めた道だってな。だがそれであんだが苦しんでるのをほっとける程出来た人間じゃないんだよ、俺は。
「………、なんで青年の方が泣きそうな顔してんのよ」
ゆるゆると伸びてくる腕は俺の頬に触れる。その先の顔は苦笑というより困惑に近くて、それが余計に辛かった。
「あんたが泣かねぇから」
「おっさんは、泣けないの。大人の青年なら分かってるでしょ」
まるで子供をあやす様な素振りで頭を撫でながら遠くを見つめる。その翡翠色の瞳には俺の顔など映っていない。決して交わることのない視線が、狭い部屋を飛び交っていた。
「あんたをそこまでさせるのは一体何なんだよ」
「良い大人はそう簡単に泣くもんじゃ無いでしょ」
「泣いて良い時もあるだろうが」
それを無理矢理俺に向かせてそう言えば、うっすらと開く唇は震えるばかりで。少しの静寂の後、諦めた溜め息と共に小さく呟いた。
「………、分かってて言うんだからユーリってほんと意地悪いわ」
「分かってるなら応えてくれよ」
身体を起こしても向き合った姿勢のまま、少し茶化す様にそう笑えば今度は苦笑を浮かべる。けれどぼさぼさに乱れた髪の中の瞳は決して笑っていなかった。
「だめ、よ。おっさんにもどうなるか分かんないんだもの」
「恐いのか」
「………恐い、か。どうなんだろうね、俺長い間死んでたから、分かんないのよ」
暗い影を落とし始める瞳に、どうしようもない焦りを感じて勢い良く肩を掴んだ。微かに顰められた眉を見なかった振りをして、柄もなく声を荒げた。
「おっさんは今ここで生きてるだろうが」
その俺の様子に流石に驚いたのか、翡翠色の瞳を微かに見開かせて、戸惑い気味にたじろぐ。
「生きてるなら、時には訳分かんなくなる位感情に任せても良いだろ。ぐちゃぐちゃになったとしても、それが生きてるって事だ。格好付けた振りして逃げんな、レイヴン」
真っ直ぐにその瞳を見つめながらそう言えば、びくりと身体を震わせて息を飲む。苦しそうに歪む表情に胸が痛んだ。
「……、自分勝手な事を言ってるのは分かってんだがな、でも」
「いや、いいのよ……ほんとごめんね、駄目なおっさんで。………ありがと、ユーリ」
そう言って真っ直ぐに見つめ返される瞳は、乾ききったままだった。
選択制お題より。
配布元:Abandon
先月マガで流したやつですが、ランク入ってる割に近頃サイトにユリレイが少ないので流用(苦笑
後でちゃんと新しいものを書きます。多分。
4月馬鹿は絵で許して(汗
2009'03.27.Fri
それぞれ少し歪んでる二人。濁してるけどある意味危険。
「ねぇ、ロイド。ロイドは、俺が死んだら愛してくれる」
夜も深い時間。いつもの様に二人で包まりながら何気なく戯れていれば、不意に吐き出されたその台詞。先程までの熱も相まって甘える様に聴こえたそれは、響きとは裏腹にそれまでの熱を吹き飛ばすような冷たい内容を持っていた。
「何言ってるんだよ、死ぬなんて」
「仮定の話だって。で、どうなの、愛してくれるの」
繰り返される同じ質問。それは変わらず睦言の様に甘く響く。せがまれた口付けに応えながら彼の顔を見れば、そこにはただ口付けを受け入れて恍惚としている綺麗な顔があるだけだ。漠然とした不安が残るけれど、それは気のせいなのだろうか。
「うーん、愛してやりたいけど、死んだら何も無いだろ。過去に縛られてても虚しいだけだし」
「そうかぁ…、やっぱりそうくるよな」
そう言うと困った様に笑いながら伸ばされる指先。俺の顔を確かめる様にゆっくりと撫でながら降りていく。彼らしくないその儚げな行動に疑問を感じずには居られなかった。
「どうしたんだよ、ゼロス。お前何か今日おかしいぞ」
「……おかしいのかもな、俺って」
堪えきれずそう言えば、撫でていた指先をさっと引っ込め、より一層困った様な顔で呟く。縋る様な瞳が俺を見ていた。
「動いてるのが、気持ち悪いんだ。ロイドはこんなに格好いいのに、なんで動いてるのかなぁ、って思うんだよ。だったら俺もロイドからしたら気持ち悪いのかなぁ、なんて」
馬鹿みたいだよなぁ、と困った様に笑って、でも泣きそうな目をして、そう言った。その姿はとても儚げで、綺麗だった。
「ねぇ、こんな俺でも嫌いにならないでくれる」
「なる訳無いだろ、そんなことぐらいで」
まるで消えそうな位弱々しい声で呟く彼に、強い調子でそう応える。すると一瞬きょとんとした顔をして、小さく笑った。
「そんな事、なのかよ……、悩んでた俺様ほんと馬鹿みたいじゃねぇか」
「だってゼロスはゼロスだろ」
そう言って少し冷えた身体を抱き締めれば、今度は声を出して笑う。聞き慣れたその声に少し安心して、抱き締めていた腕に力を込めた。
「……、ロイド」
「それに、俺もお前に言わないといけない事が、あるんだ。俺だけ黙ってるなんて、なんか悪いし」
耳元でそう呟いて、耳たぶを軽く食む。くすぐったそうに身を捩りながらも、それを受け入れる彼に、さらに言葉を続けた。
「俺さ、お前のことがずっと欲しかったんだ」
「……何、それ今更でしょ」
「そうじゃないんだ。なんていうかさ、ゼロスはすごく綺麗だし、可愛いし。見てるだけでなんか腹の中がくすぐったくなるんだよ」
そう言って上げた顔は、まるでさっきのゼロスみたいに困った様な顔をしてるんだろう。怪訝な顔が目に入った。
「俺もおかしいかな、なんて思って言ってなかったんだけどさ」
その視線がなんか痛くて、逃げるように首筋に顔を埋める。彼の匂いが直に感じられて、心地良かった。それにまた腹がくすぐったくなって、情けなくなる。
「何だよ、お互い様じゃねぇかよ」
そう笑う声が上から降ってきて、同時に頭を軽く叩かれる。そのまま顔を上げさせられて、口付けられた。
「ロイドもロイドなんだろ、だったらしたい様にして良いんだぜ」
そう甘く呟く彼に、耐えきれず噛み付く様に唇を食んだ。
選択制お題より。
配布元:Abandon
思ったより普通になりました。
ちょっと物足りないですが理性が働いたようです(苦笑
本当に書きたかった物はあとでこっそり隠れ家あたりに投下しときます。
「ねぇ、ロイド。ロイドは、俺が死んだら愛してくれる」
夜も深い時間。いつもの様に二人で包まりながら何気なく戯れていれば、不意に吐き出されたその台詞。先程までの熱も相まって甘える様に聴こえたそれは、響きとは裏腹にそれまでの熱を吹き飛ばすような冷たい内容を持っていた。
「何言ってるんだよ、死ぬなんて」
「仮定の話だって。で、どうなの、愛してくれるの」
繰り返される同じ質問。それは変わらず睦言の様に甘く響く。せがまれた口付けに応えながら彼の顔を見れば、そこにはただ口付けを受け入れて恍惚としている綺麗な顔があるだけだ。漠然とした不安が残るけれど、それは気のせいなのだろうか。
「うーん、愛してやりたいけど、死んだら何も無いだろ。過去に縛られてても虚しいだけだし」
「そうかぁ…、やっぱりそうくるよな」
そう言うと困った様に笑いながら伸ばされる指先。俺の顔を確かめる様にゆっくりと撫でながら降りていく。彼らしくないその儚げな行動に疑問を感じずには居られなかった。
「どうしたんだよ、ゼロス。お前何か今日おかしいぞ」
「……おかしいのかもな、俺って」
堪えきれずそう言えば、撫でていた指先をさっと引っ込め、より一層困った様な顔で呟く。縋る様な瞳が俺を見ていた。
「動いてるのが、気持ち悪いんだ。ロイドはこんなに格好いいのに、なんで動いてるのかなぁ、って思うんだよ。だったら俺もロイドからしたら気持ち悪いのかなぁ、なんて」
馬鹿みたいだよなぁ、と困った様に笑って、でも泣きそうな目をして、そう言った。その姿はとても儚げで、綺麗だった。
「ねぇ、こんな俺でも嫌いにならないでくれる」
「なる訳無いだろ、そんなことぐらいで」
まるで消えそうな位弱々しい声で呟く彼に、強い調子でそう応える。すると一瞬きょとんとした顔をして、小さく笑った。
「そんな事、なのかよ……、悩んでた俺様ほんと馬鹿みたいじゃねぇか」
「だってゼロスはゼロスだろ」
そう言って少し冷えた身体を抱き締めれば、今度は声を出して笑う。聞き慣れたその声に少し安心して、抱き締めていた腕に力を込めた。
「……、ロイド」
「それに、俺もお前に言わないといけない事が、あるんだ。俺だけ黙ってるなんて、なんか悪いし」
耳元でそう呟いて、耳たぶを軽く食む。くすぐったそうに身を捩りながらも、それを受け入れる彼に、さらに言葉を続けた。
「俺さ、お前のことがずっと欲しかったんだ」
「……何、それ今更でしょ」
「そうじゃないんだ。なんていうかさ、ゼロスはすごく綺麗だし、可愛いし。見てるだけでなんか腹の中がくすぐったくなるんだよ」
そう言って上げた顔は、まるでさっきのゼロスみたいに困った様な顔をしてるんだろう。怪訝な顔が目に入った。
「俺もおかしいかな、なんて思って言ってなかったんだけどさ」
その視線がなんか痛くて、逃げるように首筋に顔を埋める。彼の匂いが直に感じられて、心地良かった。それにまた腹がくすぐったくなって、情けなくなる。
「何だよ、お互い様じゃねぇかよ」
そう笑う声が上から降ってきて、同時に頭を軽く叩かれる。そのまま顔を上げさせられて、口付けられた。
「ロイドもロイドなんだろ、だったらしたい様にして良いんだぜ」
そう甘く呟く彼に、耐えきれず噛み付く様に唇を食んだ。
選択制お題より。
配布元:Abandon
思ったより普通になりました。
ちょっと物足りないですが理性が働いたようです(苦笑
本当に書きたかった物はあとでこっそり隠れ家あたりに投下しときます。
カレンダー
カテゴリー
最新記事
2013
/
05
/
03
(
Fri
)
17
:
37
:
24
)
2013
/
03
/
06
(
Wed
)
22
:
28
:
45
)
2012
/
07
/
27
(
Fri
)
07
:
30
:
39
)
2012
/
04
/
13
(
Fri
)
22
:
29
:
04
)
2012
/
02
/
16
(
Thu
)
02
:
05
:
21
)