2008'10.24.Fri
まるで吐息から何から奪うかの様に、熱い咥内に舌を伸ばして深く貪る。何度も何度も違う角度からそれを繰り返せば、隙間から漏れる苦しそうな呻き声。色気の欠片も無いその声も、今は興奮を煽るものでしかない。それさえも飲み込む様に口を塞ぎ続ければ、弱々しく胸を叩かれ漸く解放した。
ゆっくりと顔を離していくと次第に見えてくるのは生理的な涙に頬を濡らす彼。この姿が何とも扇情的で、だからこそ何時もぎりぎりまで貪るのを止められないのかも知れない。何時もは胡散臭いおっさんでしかないのに、何故こんなにも変わるのか。これが彼に溺れる理由なんだろうけど。
「は、……ちょ、…ゆー、り」
咎める様に俺の腕を掴んで来るけれど、その手には殆ど力は入っていない。易々とその手を引き剥がしてシーツに押さえ付けた。焦ったり恥じたりと変化の激しい彼の表情を眺めながら、手早く上着を脱がせていく。シャツ越しに心臓魔導器の魔核に触れれば、ぴくりと身体が揺れた。
人外の鼓動は速いペースで脈打っていて、余りに顕著なそれに笑いながら彼の顔を見れば、面白いくらい真っ赤に染まっている。年齢を忘れてしまいそうな位の初々しい少女の様なその様子に、愛しい気持ちが込み上げてくる。彼を護ってやりたい、と。
「………、レイヴン」
何時しか固く閉じられていた瞼に優しく口付け、睫を濡らしている涙を舐め取りながら静かに名前を呼んだ。微かに開かれた瞼から翡翠が垣間見える。
それはまるで宝石の様に綺麗で。
「愛してる」
そう言って、見開かれたそこに啄む様に優しいキスを降らせた。
「強請れば与えられますか。」
選択制お題より。
配布元:Abandon
甘いユリレイを目指してみた。
ゆっくりと顔を離していくと次第に見えてくるのは生理的な涙に頬を濡らす彼。この姿が何とも扇情的で、だからこそ何時もぎりぎりまで貪るのを止められないのかも知れない。何時もは胡散臭いおっさんでしかないのに、何故こんなにも変わるのか。これが彼に溺れる理由なんだろうけど。
「は、……ちょ、…ゆー、り」
咎める様に俺の腕を掴んで来るけれど、その手には殆ど力は入っていない。易々とその手を引き剥がしてシーツに押さえ付けた。焦ったり恥じたりと変化の激しい彼の表情を眺めながら、手早く上着を脱がせていく。シャツ越しに心臓魔導器の魔核に触れれば、ぴくりと身体が揺れた。
人外の鼓動は速いペースで脈打っていて、余りに顕著なそれに笑いながら彼の顔を見れば、面白いくらい真っ赤に染まっている。年齢を忘れてしまいそうな位の初々しい少女の様なその様子に、愛しい気持ちが込み上げてくる。彼を護ってやりたい、と。
「………、レイヴン」
何時しか固く閉じられていた瞼に優しく口付け、睫を濡らしている涙を舐め取りながら静かに名前を呼んだ。微かに開かれた瞼から翡翠が垣間見える。
それはまるで宝石の様に綺麗で。
「愛してる」
そう言って、見開かれたそこに啄む様に優しいキスを降らせた。
「強請れば与えられますか。」
選択制お題より。
配布元:Abandon
甘いユリレイを目指してみた。
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2008'10.17.Fri
それは、偽りの。
ぼろぼろに崩れ落ちた建物の残骸の中で、一際激しく壊れている一角。かつては空を見上げる広い祭壇だった其処は、今や無様に壊れ果て、大きな岩石がその存在を主張するばかり。人が入るのを拒絶する様なその空間に、私は立っていた。
かつて其処は私が貴方を終わらせた場所。貴方と決別した私が、俺が貴方と初めて直に向き合い、刃を向けた場所。結果的には直接手を下した訳では無いけれど、貴方が此処で生を終わらせたのは周知の事実。今目の前に在るこの巨大な塊が貴方を押し潰したのだから。
未だ回収されていない貴方の身体は、今もまだその固く重い岩の下に埋もれているのだろうか。貴方から偽りの生を受けた俺が生き残り、私を生き返らせた貴方が先に逝ってしまうなんて何という皮肉。いや、それは私が俺として貴方に向き合った際に覚悟していた事。けれど、貴方の最期の姿をこの目で見る事さえ出来ないなんて。
「あんたは、ずるいな」
私には全てを棄てさせておいて、俺には貴方を棄てさせてくれなかった。明確な別れが有りさえすれば、過去として忘れていく事も出来たかも知れないのに。こんな風に微かな期待を残して逝くなんて。
手に持っていた小さな花をその岩石の側に置けば、それは直ぐに風に吹かれて海へと散っていく。自然と笑いがこみ上げてきた。俺が手向ける事も貴方は否定するのか。
先程と何ら変わらないその空間を背に向けて、其処を後にする。視界から見えるぎりぎりの場所で一度振り返り、最後に其処を見上げて笑顔で、一言。
「さようなら、大将」
偽りの挨拶で、お別れを。
奥村愛子さんの曲を久しぶりに聞いてたら、なんかアレシュヴァアレレイに聴こえたので(笑
他にもいろいろ書きたくなったよ。
2008'10.14.Tue
「…あの者は一体何者なのだ」
手を振り少年を見送る彼の背中を眺めながら、小さく問う。すると彼は静かに微笑を湛えつつ先ほどと同じ事を繰り返した。
「それは僕にも解らないよ」
その声色は先程の心配を含んだものではなく、とても冷たいものになっていて、それは常に聞いている主としての声色そのものだった。彼の豹変振りに、何か企んでいるのかと思ってしまう。
「…では何故匿っているのだ」
その冷酷な顔に、悲しさに似た感情が湧き上がるが、それは極力心の内に隠して、冷静を押し通しながら続けて問う。すると私の葛藤など分かりきっているのか、嘲笑うかのような笑みと口調で答えを返された。
「あれは、この世界のものじゃない」
「何…」
「僕には分かる。あれはマナとは違う『もの』で成り立ってる。そんなのはこの世界じゃありえないからね」
返ってきた答えは突飛したものだった。意味が分からず聞き返せば、エルフの血を引かない君には分かるわけがないよね、と暗に言われる。少なからず歯痒く感じるが、今はそれを気にしている場合ではない。
まさかと思う私の予想を肯定するように彼は続ける。
「それに少しだけだけどオリジンの力の干渉を感じた。あれは時空間を越える力を持っている。別世界のものを連れてきてもおかしくは無い」
「…それは、あの者が別の世界の人間だと…」
別の世界が存在しないと、言い切ることは私には出来ない。それはかつてデリスカーラーンの存在を知った時から分かっていた事だ。絶対など、存在しない。
オリジンが今の状態から干渉を行ったというのは気になるが、しかしそれ以外の理由は私にも思い付かなかった。
ならばと彼の意見の肯定を得る為に私の予想を伝えれば、返ってきたのは意外にも否定の言葉だった。
「ふふ…それはおかしいな。多分あれは人間ではないからね」
「……、ではハーフエルフだと」
「違うな。あれは人間でもハーフエルフでも、無い。人間そっくりの…偽物だよ」
薄い笑いを浮かべながら彼は楽しそうに答えを述べ始める。それはまるで新しい玩具を見つけた子供の様だった。
漸く15話を上げれました。
ミトスばっかでジェイド出てないとか言わないで(苦笑
あと3、4話したら出てくると思う、ので。
2008'09.12.Fri
親衛隊に見張られた異常な病室から漸く出れたのは終戦から1週間も経ってからの事。この左胸の魔導器について一切他言しないと、また変わらぬ忠誠を誓えと強要されて、そうしなければここから出さないと脅されていた。あの方を疑いたくはないが、状況は全て異常だった。忠誠など誓える筈も無かったが、終戦からの情報を全く聞くことが出来ない状況は不安で仕方が無かったのだ。仲間は部下は本当に生きていないのだろうか。彼女は、キャナリは無事なのだろうか。考えればきりが無かった。仮初めの忠誠を誓う事で、念願の外に出ることを許されたのだ。
「ではお前の目で、全てを見てくればいい」
部屋を出る際のあの方の薄笑いだけは、何故か気になって仕方が無かった。
情報を得るために騎士団本部に向かえば、擦れ違う者全てに奇妙な目で見られた。生きていたのか、と声を掛けてくる者もいた。嫌な考えが頭を巡る。それを振り払うかのように足早に情報部の扉を潜った。
「………では、あの部隊で生き残ったのは私だけ、だと」
そこで聞いたのは最も聞きたくない内容だった。あの場所にいた者で生きていた者はいない。後援の部隊が辿り着いた時には全員が事切れていた、と。私自身もアレクセイ隊に保護されていると情報が入るまで死んだのだろうと思われていたのだ。別部隊だったキャナリも、崖の下で遺体が発見されたと言う。
まるで生きている心地がしなかった。私だけが唯独り生き返り、取り残された。あの状況で唯一生き残ったという事実が私の地位を一部隊長から小隊長へと変えさせたが、それは更なる孤立を生むだけだった。中には私が部下を捨ててアレクセイ隊長の元に逃げ込んだのだろうと言う者もいた。彼に忠誠を誓ったという事実がそれを裏付けてしまっていた。
「全てを見た感想はどうだったかな、シュヴァーンよ」
彼があの時振りに声を掛けてきたのは、私が孤独に押し潰されそうになっていた時だった。あの時と同じ薄笑いを張り付けて、彼は私の部屋に入ってきた。
「苦渋の思いで忠誠を誓った割には、酷い答えしか得られなかっただろう」
可笑しそうに笑う彼に、私は踊らされていたのかと思うととても悔しい気持ちになった。誰のせいでこんな事になったと思っている。
「……あなたは、私を生き長らえさせて何がしたいと言うんですか」
あの時あのまま仲間と共に死なせてくれていれば、この様な苦しみを受けずに済んだのだ。それなのに、何故。
「お前の力が、私には必要なのだよ」
切羽詰まった様にそう問い掛ければ、返ってきたのは酷く優しい響き。錯覚しそうなその甘さを振り払う様に、声を荒げる。
「何故私なんだ、私はこんな結果は望んでいない……」
「ならばもう死んだと思えばいい」
取り乱す私を冷たく一瞥して、彼は一言予想もしていなかった台詞を吐いた。あまりのその言葉に何も言えずに居る私を無視して彼は続ける。
「何も考えず私の道具としてだけ存在していれば、こんな些細な事に苦しむ必要もない」
死にたかったんだろう、と薄く笑われて息を飲む。こんな事認めるわけにはいかないと頭では叫んでいるのに、伸ばされた手が何故こんなにも魅力的に見えるのだ。
「他の奴らとは違って、私はお前を必要としているのだよ。私の元に来い、シュヴァーン」
甘く囁かれる台詞がゆっくりと脳に浸透していき、気が付けば私は、伸ばされたその手をしっかりと掴んでいた。
これなんてヴァンアシュだよ(笑
最初に書いたアレシュヴァの続きみたいな話。寧ろこれ連載したいほどなんですが。
甘い、とは言い難いですよね(苦笑
こんなんでよかったでしょうかね。
「ではお前の目で、全てを見てくればいい」
部屋を出る際のあの方の薄笑いだけは、何故か気になって仕方が無かった。
情報を得るために騎士団本部に向かえば、擦れ違う者全てに奇妙な目で見られた。生きていたのか、と声を掛けてくる者もいた。嫌な考えが頭を巡る。それを振り払うかのように足早に情報部の扉を潜った。
「………では、あの部隊で生き残ったのは私だけ、だと」
そこで聞いたのは最も聞きたくない内容だった。あの場所にいた者で生きていた者はいない。後援の部隊が辿り着いた時には全員が事切れていた、と。私自身もアレクセイ隊に保護されていると情報が入るまで死んだのだろうと思われていたのだ。別部隊だったキャナリも、崖の下で遺体が発見されたと言う。
まるで生きている心地がしなかった。私だけが唯独り生き返り、取り残された。あの状況で唯一生き残ったという事実が私の地位を一部隊長から小隊長へと変えさせたが、それは更なる孤立を生むだけだった。中には私が部下を捨ててアレクセイ隊長の元に逃げ込んだのだろうと言う者もいた。彼に忠誠を誓ったという事実がそれを裏付けてしまっていた。
「全てを見た感想はどうだったかな、シュヴァーンよ」
彼があの時振りに声を掛けてきたのは、私が孤独に押し潰されそうになっていた時だった。あの時と同じ薄笑いを張り付けて、彼は私の部屋に入ってきた。
「苦渋の思いで忠誠を誓った割には、酷い答えしか得られなかっただろう」
可笑しそうに笑う彼に、私は踊らされていたのかと思うととても悔しい気持ちになった。誰のせいでこんな事になったと思っている。
「……あなたは、私を生き長らえさせて何がしたいと言うんですか」
あの時あのまま仲間と共に死なせてくれていれば、この様な苦しみを受けずに済んだのだ。それなのに、何故。
「お前の力が、私には必要なのだよ」
切羽詰まった様にそう問い掛ければ、返ってきたのは酷く優しい響き。錯覚しそうなその甘さを振り払う様に、声を荒げる。
「何故私なんだ、私はこんな結果は望んでいない……」
「ならばもう死んだと思えばいい」
取り乱す私を冷たく一瞥して、彼は一言予想もしていなかった台詞を吐いた。あまりのその言葉に何も言えずに居る私を無視して彼は続ける。
「何も考えず私の道具としてだけ存在していれば、こんな些細な事に苦しむ必要もない」
死にたかったんだろう、と薄く笑われて息を飲む。こんな事認めるわけにはいかないと頭では叫んでいるのに、伸ばされた手が何故こんなにも魅力的に見えるのだ。
「他の奴らとは違って、私はお前を必要としているのだよ。私の元に来い、シュヴァーン」
甘く囁かれる台詞がゆっくりと脳に浸透していき、気が付けば私は、伸ばされたその手をしっかりと掴んでいた。
これなんてヴァンアシュだよ(笑
最初に書いたアレシュヴァの続きみたいな話。寧ろこれ連載したいほどなんですが。
甘い、とは言い難いですよね(苦笑
こんなんでよかったでしょうかね。
2008'09.10.Wed
建物の端、長い廊下を渡った先に冷たく湿った暗いその部屋はある。その一番奥の囚人を閉じ込める為の鉄格子に囲まれた空間で、彼は固いベッドの上で横たわっていた。頑丈な錠の付いた扉に手を掛ければ、鍵は開いていたらしく金属音を立てながら簡単に開いた。そのままベッドの横に立つと、漸く閉じていた瞳を開けて彼は口を開いた。
「どうしたのよ、わざわざこんな所に」
「心臓の魔導器を見に来たわ」
そう用件をはっきり言えば、少し驚いたのか微動だにしていなかった身体を少し揺らして起き上がる。訝しげな顔でこっちを見ながら、困ったように言葉を続けた。
「……エステル嬢ちゃんの事で調べものしてんじゃなかったのかね」
「そうよ、だから早く魔導器見せなさいよ」
「いやいや、おっさん意味が分かんないんだけど」
「うだうだうるさいわね、剥くわよ」
「分かったから、それは勘弁してほしいわ」
反論を諦めたのか渋々上着を脱ぎ始める。直ぐに晒された逞しい胸元にはやはり不自然に魔導器が蠢いていた。制御パネルを呼び出してみれば、そこは普通の魔導器と変わらないようで、複雑な術式が空間に浮かび上がる。
「解析するから邪魔しないでよ」
術式越しに彼の顔を見ながら意識は術式に集中してパネルを操作していく。最初は何か言いたげだったが、結局何も言うこと無く、部屋には操作音と独り言だけが響いた。
「………やっぱりこの術式で生命エネルギーを動力に変換してるのね、でこっちの術式で心臓の、つまりポンプの働きを制御してる……あの子の場合はエアルの調整だからそこは宙の戒典の術式にしないと、でもこの術式とあの術式を同時に組み上げるとなるとまた別の術式が必要になるか……待って、この術式だと生命エネルギーを取り入れるのに、体内に入れないと無理だから、あの子の武装魔導器を元には出来ない……でもそれじゃああの子に負担が掛かるし、やっぱりこれでも駄目か………」
「なぁ、リタっち」
「何よ、邪魔しないでって言ったでしょ」
考えに耽っていると不意に彼が術式越しに声を掛けてくる。急に集中を切らされて苛つきながら彼の顔を見れば、随分と真剣な顔をしていた。
「………、魔核を皮膚に触れさせれば生命エネルギーは取り込み可能なんだって、さ」
そこから発せられたのは先程まで悩んでいた事の解決策だった。予想もしていなかったその言葉に、今迄の独り言を全て聞かれていたのかと思うと急に恥ずかしくなる。それを誤魔化すように早口で言葉を続けた。
「え……、それを早く言いなさいよ。でも、それが本当ならあの子の武装魔導器でも……」
開いていた解析画面を全て閉じ終えて、瞳を閉じて頭の中で必要な術式の理論を組み立てていく。どうにか形になる術式が出来そうだと、一息吐いて漸く瞳を開けば、先程と変わらない真剣な表情をした彼が、目の前にいた。
「嬢ちゃんに、俺と同じ魔導器を付けるつもりなのね」
「……仕組みだけよ、あんたがそれが出来るって言ったんじゃない」
「まぁ……言ったけど、ね。いいのか、嬢ちゃんが外に出られなくなっても」
気に掛けていた事を彼も気付いて居たようで、まるでそれを良しとする事を咎めるかのように、いつもとは違う鋭い口調で言われる。その眼差しが、痛い。
「………しょうがない、でしょ。それしか方法が無いんだもの」
「でも嬢ちゃんは無理にでも行くって言いそうだけどね」
「それでも、あたしが絶対止める。……あの子にもう辛い思いはさせたくない」
あたしだって散々悩んだのだ。だからもしこの方法が駄目なら、また違う方法を探す事が出来ると、少しの可能性も考えてここに来た。やっぱり思っていた通りの結果になったけれど。
「……まぁ、最善の方法がそれしか無いなら仕方ないわな。でもさ、リタっち」
俯いていた頭を上げられ、再び視線が交わる。とても綺麗な翡翠色が優しく笑っていた。
「エステル嬢ちゃんの心配する前に、まず自分の心配しないとな」
そう言って不意に伸びてきた指先で目元を優しく撫でられた。いきなりの事に息を飲む。けれど、その指先は何だか心地良くて、何だかとても気恥ずかしくなった。
「な、な、なにするのよ」
「隈、結構酷いぜ、あんまり寝てないんでしょ。リタっち、無茶し過ぎ」
「………、その台詞まんまあんたに返すわよ」
「何よリタっち、俺様の事心配してくれてたのね。おっさん嬉しいわ」
腕を振り払えばいつもと同じ調子で茶化したような口振りが返される。それに呆れつつも、何だか安心して力が抜けた。
「………なんか馬鹿らしくなってきた。あたしもう戻るわ、術式完成させないといけないし」
「もう戻るのかい、寂しいわねぇ。おっさんもう少しリタっちと一緒に居たかったわ」
扉に手を掛ければそんな台詞を背後で吐かれる。呆れたように溜め息を吐いて、もう一度振り返った。
「明日だって一緒でしょ。馬鹿な事言わないでよ」
「そうね、おっさんもこの身体で頑張ってるし………エステル嬢ちゃんだって同じだと思うけどな」
笑みを浮かべた表情のまま、含みを持った言葉を言われる。その笑みが諭すような雰囲気を持っていて、その示す先が簡単に解ってしまう。
「もう少し信じても良いんじゃないの」
その言葉を背後に聞きながら、あたしは逃げるように部屋を後にした。
(信じてない訳じゃない。でもあんたの苦しそうな姿を見る度、不安になって仕方ないのよ)
一番書きたかったのはあのリタの独り言だったりします(笑
取り敢えず術式とはパソコンのプログラミングみたいな感じかなぁと勝手な解釈して書いてみました。いろいろ詰め込んだ感は否めない。
リク下さった方、こんなレイリタでよかったでしょうか。
まだリクは受け付けてますので、よかったらどうぞ拍手などに一言下さいませ。
「どうしたのよ、わざわざこんな所に」
「心臓の魔導器を見に来たわ」
そう用件をはっきり言えば、少し驚いたのか微動だにしていなかった身体を少し揺らして起き上がる。訝しげな顔でこっちを見ながら、困ったように言葉を続けた。
「……エステル嬢ちゃんの事で調べものしてんじゃなかったのかね」
「そうよ、だから早く魔導器見せなさいよ」
「いやいや、おっさん意味が分かんないんだけど」
「うだうだうるさいわね、剥くわよ」
「分かったから、それは勘弁してほしいわ」
反論を諦めたのか渋々上着を脱ぎ始める。直ぐに晒された逞しい胸元にはやはり不自然に魔導器が蠢いていた。制御パネルを呼び出してみれば、そこは普通の魔導器と変わらないようで、複雑な術式が空間に浮かび上がる。
「解析するから邪魔しないでよ」
術式越しに彼の顔を見ながら意識は術式に集中してパネルを操作していく。最初は何か言いたげだったが、結局何も言うこと無く、部屋には操作音と独り言だけが響いた。
「………やっぱりこの術式で生命エネルギーを動力に変換してるのね、でこっちの術式で心臓の、つまりポンプの働きを制御してる……あの子の場合はエアルの調整だからそこは宙の戒典の術式にしないと、でもこの術式とあの術式を同時に組み上げるとなるとまた別の術式が必要になるか……待って、この術式だと生命エネルギーを取り入れるのに、体内に入れないと無理だから、あの子の武装魔導器を元には出来ない……でもそれじゃああの子に負担が掛かるし、やっぱりこれでも駄目か………」
「なぁ、リタっち」
「何よ、邪魔しないでって言ったでしょ」
考えに耽っていると不意に彼が術式越しに声を掛けてくる。急に集中を切らされて苛つきながら彼の顔を見れば、随分と真剣な顔をしていた。
「………、魔核を皮膚に触れさせれば生命エネルギーは取り込み可能なんだって、さ」
そこから発せられたのは先程まで悩んでいた事の解決策だった。予想もしていなかったその言葉に、今迄の独り言を全て聞かれていたのかと思うと急に恥ずかしくなる。それを誤魔化すように早口で言葉を続けた。
「え……、それを早く言いなさいよ。でも、それが本当ならあの子の武装魔導器でも……」
開いていた解析画面を全て閉じ終えて、瞳を閉じて頭の中で必要な術式の理論を組み立てていく。どうにか形になる術式が出来そうだと、一息吐いて漸く瞳を開けば、先程と変わらない真剣な表情をした彼が、目の前にいた。
「嬢ちゃんに、俺と同じ魔導器を付けるつもりなのね」
「……仕組みだけよ、あんたがそれが出来るって言ったんじゃない」
「まぁ……言ったけど、ね。いいのか、嬢ちゃんが外に出られなくなっても」
気に掛けていた事を彼も気付いて居たようで、まるでそれを良しとする事を咎めるかのように、いつもとは違う鋭い口調で言われる。その眼差しが、痛い。
「………しょうがない、でしょ。それしか方法が無いんだもの」
「でも嬢ちゃんは無理にでも行くって言いそうだけどね」
「それでも、あたしが絶対止める。……あの子にもう辛い思いはさせたくない」
あたしだって散々悩んだのだ。だからもしこの方法が駄目なら、また違う方法を探す事が出来ると、少しの可能性も考えてここに来た。やっぱり思っていた通りの結果になったけれど。
「……まぁ、最善の方法がそれしか無いなら仕方ないわな。でもさ、リタっち」
俯いていた頭を上げられ、再び視線が交わる。とても綺麗な翡翠色が優しく笑っていた。
「エステル嬢ちゃんの心配する前に、まず自分の心配しないとな」
そう言って不意に伸びてきた指先で目元を優しく撫でられた。いきなりの事に息を飲む。けれど、その指先は何だか心地良くて、何だかとても気恥ずかしくなった。
「な、な、なにするのよ」
「隈、結構酷いぜ、あんまり寝てないんでしょ。リタっち、無茶し過ぎ」
「………、その台詞まんまあんたに返すわよ」
「何よリタっち、俺様の事心配してくれてたのね。おっさん嬉しいわ」
腕を振り払えばいつもと同じ調子で茶化したような口振りが返される。それに呆れつつも、何だか安心して力が抜けた。
「………なんか馬鹿らしくなってきた。あたしもう戻るわ、術式完成させないといけないし」
「もう戻るのかい、寂しいわねぇ。おっさんもう少しリタっちと一緒に居たかったわ」
扉に手を掛ければそんな台詞を背後で吐かれる。呆れたように溜め息を吐いて、もう一度振り返った。
「明日だって一緒でしょ。馬鹿な事言わないでよ」
「そうね、おっさんもこの身体で頑張ってるし………エステル嬢ちゃんだって同じだと思うけどな」
笑みを浮かべた表情のまま、含みを持った言葉を言われる。その笑みが諭すような雰囲気を持っていて、その示す先が簡単に解ってしまう。
「もう少し信じても良いんじゃないの」
その言葉を背後に聞きながら、あたしは逃げるように部屋を後にした。
(信じてない訳じゃない。でもあんたの苦しそうな姿を見る度、不安になって仕方ないのよ)
一番書きたかったのはあのリタの独り言だったりします(笑
取り敢えず術式とはパソコンのプログラミングみたいな感じかなぁと勝手な解釈して書いてみました。いろいろ詰め込んだ感は否めない。
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