2009'01.03.Sat
「………、流石に気が滅入るなこれは」
目に入るのは人、人、人ばかり。まるで蟻の大群の様に蠢いている。いつも以上に人が多くなっているダングレストの広場には、様々な露店が店を構えていた。カロル曰く、新年祝いの祭のようなものらしい。偶然にも補給の為に街に立ち寄った俺達は折角だからと見て回ることにしたのだ。
けれどいざ向かえばあまりの人の多さに身動き一つ取れない様な状態で、早々に気疲れしそうだった。カロルやレイヴンは慣れているのか、それなりに楽しんでいるのが遠目で見える。
「ユーリっ見て下さい、うしにんだるまですっ」
いきなりぴょこんと現れた桃色が抱えるそれは白くて丸い人形で、見たこともないものだった。それを嬉しそうに抱えているエステルの姿に首を傾げる。
「こんな変な人形がどうかしたのか」
「ユーリ、だるま見たこと無いんです」
きょとんとした顔で見上げながらそう言われて、再度記憶を探ってみたがやはり思い付く物はない。
「残念ながら、な」
「だるま、年始めなどによく売られる縁起を担ぐ人形。特にダングレストを中心に広まっている、です」
「へぇ、俺は帝都から出たこと無かったから知らなかったんだな」
「私も本でしか見たこと無かったんです、まさかこの目で見れるなんて夢みたいです」
そう言われて改めて見れば縁起が良さそうにも見えなくはない、と思う。エステルからすればうしにん型は特に珍しいから目に付いてしまったらしいが。
他にも色々と珍しい物が売っているらしく、目を輝かせながら店を回る彼女を微笑ましく思いながら眺めていれば、背後から掛かる聞き慣れた声。
「楽しんでるかい、青年」
「ぼちぼちな」
振り向きながらそう答えれば、目の前には想像通りの人物がいた。遠くで街の人達と話していたと思ったが、いつの間にか近くまで来ていたらしい。
「それにしては珍しく疲れてるっぽいけど」
「こんな凄い人混み滅多に無いからな、慣れてねぇんだよ」
「……まぁ、ザーフィアスの年越しは静かに過ごすのが普通だからね、おっさんも最初は戸惑ったもんよ」
そう言いながらも軽々と人混みをすり抜け、少し人の引いた静かな場所に辿り着く。その移動の間に取ったのか、両手には何か飲み物が握られていた。
「この辺ならちょっとは静かだし良いでしょ。これ、この辺の名物なんだけど飲むかい、青年なら好きだと思うわよ」
「何だよ、これ」
「甘酒っていう祝い酒よ、青年好きでしょ甘いの」
渡されたものを見てみればそれはとろりと白い酒で、甘い匂いが漂っていた。飲んでみればそれは随分と甘くで美味しかった。酒にしては甘過ぎるかも知れないが、俺には丁度良い甘さだ。これは癖になるかもしれない。
「美味いな、この酒」
「良かったらこれも飲むかい、俺様の分まで貰ったけど俺様甘いの苦手だし」
「サンキュ、おっさん」
差し出された酒を快く受け取って飲めばやっぱり美味い。これは一瓶くらいは買っておきたいな。この人混みを戻るのを考えると少し滅入るがそれ以上の価値はあるとみた。
「青年ってほんと、甘いものと酒が好きねぇ。俺様の常識じゃ考えられないわよ」
どうやら顔が緩んでたらしく、呆れたように呟きながらおっさんがこっちを見ていた。その視線に流石に気恥ずかしくなって顔を背ければ、更には笑われる始末。
「………、笑うことはねぇだろ」
「あー…ごめんねぇ、青年が何だか可愛くって」
けたけたと笑っている彼の姿は年上だと思えない程可愛くて、何となく、ただ何となく、キスをした。
「っ、ちょっと青年いきなり過ぎっ、てか甘っ」
目を見開きながら口を拭う彼をちょっと寂しく想って、更に深く舌を絡めれば飲みきれなかったんだろう唾液が喉元を伝う。舌を這わせてそれを舐めれば少し甘い気がした。
「……ね、ねぇ、せーねん酔ってる、でしょ」
「俺はこれ位じゃ酔わねぇよ、おっさんが可愛いのがいけないんだって」
「確実に酔ってるっての、それは。………はぁ、もう良いわ」
文句を言いながらもゆっくりと伸びてくる腕を掴んで首に回した。幸い周りに今は人が居ないし、このまま勢いだと思った矢先。
「あ、ちょっと待って」
そう言われて腕を突っぱねられた。
「何だよ良いところだったのに」
「このままだと忘れそうだから言わせてもらうわ」
「明けましておめでとう、ユーリ」
今年も宜しくお願いするわね。そう笑顔で言い放つレイヴンはあまりにも可愛くて、返事をするのも忘れて惚けてしまう程だった。
選択制お題より。
配布元:Abandon
取り敢えず帝都は海外、ダングレスト周辺は日本にして書いてみました。
なんで頭にエステル出てくるのか本当分からない(苦笑
遅くなりましたが、年賀文とさせて頂きます。
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2008'12.28.Sun
青く晴れ渡った空は雲一つ無く、風を受けて優雅に飛ぶ鳥達が見えるだけ。つい数ヶ月前までこの空を覆っていた禍々しい存在は微か程にも見えはしない。変われる筈も無いと思っていた人々は、不便になった生活の中でそれでも一生懸命生きていた。これらは全てあの者達の成果なのだろう。友の愛した世界の為、朽ちようと覚悟していた私自身も今こうしてこの世界に生き残っている。不思議なものだ。あれ程死を覚悟して長い時間を独りで生きてきたのに、いざそれが無意味になれば、安堵せずには居られなかったのだから。
「デューク」
己を呼ぶ声にゆっくりと振り返れば真っ黒なそれがこちらに向かって立っている。嘗て剣を交えた筈のそれは、何故かよく行く先に現れる。干渉する理由も無いだろうと何時だかそれに問うたが、お節介焼きなんだよきっと、と的を得ない返答があるだけだった。別に何をする訳でも無い。ただ私の横に立って少し言葉を交わすだけ。最初こそ戸惑ったが、続けばそれは日常になる。
「あんたも本当、意地っ張りだよな」
そう言って視線を向ける先は、先程まで私が見ていた風景。高台から眺めるそれは人一人居ない、自然本来の在るべき姿だ。
「………何が言いたい」
「分かってんだろ、あんたなら」
迷いの無い真っ直ぐな視線が突き刺す。それは対峙したあの瞬間から何も変わっていない。それに対して、私は。
「私は、友の想いに殉じると決めたのだ、今更」
「………なぁ、世界は変わったんだ。あんたが人を拒否し続ける理由も無いだろ。第一、あんたの友人はそんな事望んでないと思うけどな」
黒いそれが視界を埋める。今迄変わる事の無かった互いの距離が急に詰められ、まるで侵食するようなその黒に苛立った。
「お前に一体何が分かる」
「分からねぇよ」
より一層狭くなる距離に後退れば、不意に伸びてきた腕に動きを封じられた。長年人と接してこなかった私にはそれは余りに不愉快で、力の限り振り払えばそれは呆気なく解放された。
「俺達は今を生きてるんだ、過去にばかり囚われてる奴の考えてる事なんか分からねぇ」
「……ならば私に関わるな」
「言っただろ、お節介焼きなんだって。そんな顔してるあんたを放っては置けなくてな」
すると先程の突き刺す様な視線は和らぎ、まるで何かを愛でる様なものに変わる。その変わり様に戸惑いを隠せずに居れば、再び伸ばされる腕。しかしそれは先程とは違い、目の前に差し出されたまま動かない。
「………、何だこれは」
「なぁデューク、俺達と一緒に来ないか。あんたの愛してる世界の為に、あんたの力が必要なんだよ」
久しぶりに触った他人の手のひらは、思いの外温かかった。その温もりは何故か不愉快では無くて。
エルシフルよ、私はお前の想いを叶えられたのだろうか。この世界を、お前は喜んでいるのだろうか。もしそうでなければ、私はお前を裏切った事になるのだろうな。
今迄の想いは朽ち果てた、しかし新しい想いを胸に、私は生きよう。
選択制お題より。
配布元:Abandon
結構放置していたユリデュク馴れ初め。デュークさんよく分かんない(汗
まぁ、ここから色々あって相思相愛になる二人。ユリデュクはラブラブが良いんです(笑
取り敢えず書き終えたよ、電車の中で(爆
そろそろビックサイトなので頑張ってきます。
「デューク」
己を呼ぶ声にゆっくりと振り返れば真っ黒なそれがこちらに向かって立っている。嘗て剣を交えた筈のそれは、何故かよく行く先に現れる。干渉する理由も無いだろうと何時だかそれに問うたが、お節介焼きなんだよきっと、と的を得ない返答があるだけだった。別に何をする訳でも無い。ただ私の横に立って少し言葉を交わすだけ。最初こそ戸惑ったが、続けばそれは日常になる。
「あんたも本当、意地っ張りだよな」
そう言って視線を向ける先は、先程まで私が見ていた風景。高台から眺めるそれは人一人居ない、自然本来の在るべき姿だ。
「………何が言いたい」
「分かってんだろ、あんたなら」
迷いの無い真っ直ぐな視線が突き刺す。それは対峙したあの瞬間から何も変わっていない。それに対して、私は。
「私は、友の想いに殉じると決めたのだ、今更」
「………なぁ、世界は変わったんだ。あんたが人を拒否し続ける理由も無いだろ。第一、あんたの友人はそんな事望んでないと思うけどな」
黒いそれが視界を埋める。今迄変わる事の無かった互いの距離が急に詰められ、まるで侵食するようなその黒に苛立った。
「お前に一体何が分かる」
「分からねぇよ」
より一層狭くなる距離に後退れば、不意に伸びてきた腕に動きを封じられた。長年人と接してこなかった私にはそれは余りに不愉快で、力の限り振り払えばそれは呆気なく解放された。
「俺達は今を生きてるんだ、過去にばかり囚われてる奴の考えてる事なんか分からねぇ」
「……ならば私に関わるな」
「言っただろ、お節介焼きなんだって。そんな顔してるあんたを放っては置けなくてな」
すると先程の突き刺す様な視線は和らぎ、まるで何かを愛でる様なものに変わる。その変わり様に戸惑いを隠せずに居れば、再び伸ばされる腕。しかしそれは先程とは違い、目の前に差し出されたまま動かない。
「………、何だこれは」
「なぁデューク、俺達と一緒に来ないか。あんたの愛してる世界の為に、あんたの力が必要なんだよ」
久しぶりに触った他人の手のひらは、思いの外温かかった。その温もりは何故か不愉快では無くて。
エルシフルよ、私はお前の想いを叶えられたのだろうか。この世界を、お前は喜んでいるのだろうか。もしそうでなければ、私はお前を裏切った事になるのだろうな。
今迄の想いは朽ち果てた、しかし新しい想いを胸に、私は生きよう。
選択制お題より。
配布元:Abandon
結構放置していたユリデュク馴れ初め。デュークさんよく分かんない(汗
まぁ、ここから色々あって相思相愛になる二人。ユリデュクはラブラブが良いんです(笑
取り敢えず書き終えたよ、電車の中で(爆
そろそろビックサイトなので頑張ってきます。
2008'12.25.Thu
ゆっくりと足音を立てないように忍び込む、彼等の寝室。簡素なベッドの枕元に静かに置くのは小さな小包。目的を果たせば後は早々に部屋を立ち去るだけ。
音も立てずに扉を閉めれば、堪えきれず安堵の溜め息が漏れてしまった。
「真っ黒な服のサンタなんて聞いたこと無いわよ」
するとその溜め息が合図になったのか、いつの間にか背後に構えていた彼が茶化すようにそう言った。
「たまには赤じゃなくてもいいだろ」
「本当に構わずにはいられないのねぇ、青年人良すぎ」
「あいつらもここの所頑張ってたからな、これくらいのイベントはあった方が良いだろ」
「寧ろ、無駄遣いするなーってリタっち辺りは起こるかもよ」
「そん時はおっさんがフォローしてくれよ」
そう言いながら小さく笑って自分たちの部屋に向かう。誰も居ない部屋は冷え切っていた。即座に備え付けられた暖炉に薪をくべて暖を取る。
「やっぱ寒ぃな、おっさんが大人しく部屋に居てくれれば火も残ってたかもしれないのに」
「無言で部屋を抜け出した青年が悪いんでしょ、そんな事されたら何かあると思うじゃない」
「察せよ、大人だろ」
「いいじゃないいいじゃない、お子様方はバレてないんだからさ」
そんな会話を続けていれば漸く火が大きくなり部屋全体が暖まってくる。先程から寒さに微かに震えていた彼は、今は何事も無い様にベッドの上に横たわっていた。
「それは別にどうでも良いんだけどな」
「あらそうなの」
「朝になれば結局バレるだろ、流石にそこまでお子様じゃ無いだろうし」
「まぁ、確かにそうだわね。じゃなんでそんなに気にしてるのよ、青年」
少し口を尖らせながらそう言う彼に苦笑しながら、身を起こして彼の元へ向かう。横に立って彼の顔を見下ろせば、戸惑った様な顔をしていた。
「な、なによ青年」
「………無自覚、なのが質悪いんだよな」
そのままシーツの上に無造作に置かれた手を握れば、それはひんやりと冷たかった。ぺちぺちと頬を叩いてみても同じく冷たい。ゆっくりと赤くなってきて漸く暖まってる感じだ。
「ちょ、ユーリ、どうしたのよっ」
「んー…、おっさんを暖めてるんだよ、寒がりの癖にわざわざ身体冷やしやがって」
「別にこれ位どうって事無いわよ」
「嘘付けって、震えてた癖に」
そう言えばしまった、とでもいう様な表情を浮かべて、そのまま腕の中で大人しくなる。抱き締めてみれば一層身体が冷えているのが分かった。
「まぁ、おっさんがそれだけ嫉妬してくれたって事だもんな」
腕の中の顔は真っ赤に染まっていて、ぱくぱくと面白く動いている唇に口付けれは、そこだけはとても暖かかった。
「メリークリスマス、レイヴン」
選択制お題より。
配布元:Abandon
本当は拍手文にしようと思ってたんですが間に合わなかったのでこっちに載せました。
レイヴンは多分無自覚に嫉妬してたんだと思います。それに気付いたユーリは嬉しいんだけど、全くこんなに冷えちゃってもう、みたいな感じ(笑
ちなみにユーリのプレゼントはアクセサリーとかそんな感じのものかと。
音も立てずに扉を閉めれば、堪えきれず安堵の溜め息が漏れてしまった。
「真っ黒な服のサンタなんて聞いたこと無いわよ」
するとその溜め息が合図になったのか、いつの間にか背後に構えていた彼が茶化すようにそう言った。
「たまには赤じゃなくてもいいだろ」
「本当に構わずにはいられないのねぇ、青年人良すぎ」
「あいつらもここの所頑張ってたからな、これくらいのイベントはあった方が良いだろ」
「寧ろ、無駄遣いするなーってリタっち辺りは起こるかもよ」
「そん時はおっさんがフォローしてくれよ」
そう言いながら小さく笑って自分たちの部屋に向かう。誰も居ない部屋は冷え切っていた。即座に備え付けられた暖炉に薪をくべて暖を取る。
「やっぱ寒ぃな、おっさんが大人しく部屋に居てくれれば火も残ってたかもしれないのに」
「無言で部屋を抜け出した青年が悪いんでしょ、そんな事されたら何かあると思うじゃない」
「察せよ、大人だろ」
「いいじゃないいいじゃない、お子様方はバレてないんだからさ」
そんな会話を続けていれば漸く火が大きくなり部屋全体が暖まってくる。先程から寒さに微かに震えていた彼は、今は何事も無い様にベッドの上に横たわっていた。
「それは別にどうでも良いんだけどな」
「あらそうなの」
「朝になれば結局バレるだろ、流石にそこまでお子様じゃ無いだろうし」
「まぁ、確かにそうだわね。じゃなんでそんなに気にしてるのよ、青年」
少し口を尖らせながらそう言う彼に苦笑しながら、身を起こして彼の元へ向かう。横に立って彼の顔を見下ろせば、戸惑った様な顔をしていた。
「な、なによ青年」
「………無自覚、なのが質悪いんだよな」
そのままシーツの上に無造作に置かれた手を握れば、それはひんやりと冷たかった。ぺちぺちと頬を叩いてみても同じく冷たい。ゆっくりと赤くなってきて漸く暖まってる感じだ。
「ちょ、ユーリ、どうしたのよっ」
「んー…、おっさんを暖めてるんだよ、寒がりの癖にわざわざ身体冷やしやがって」
「別にこれ位どうって事無いわよ」
「嘘付けって、震えてた癖に」
そう言えばしまった、とでもいう様な表情を浮かべて、そのまま腕の中で大人しくなる。抱き締めてみれば一層身体が冷えているのが分かった。
「まぁ、おっさんがそれだけ嫉妬してくれたって事だもんな」
腕の中の顔は真っ赤に染まっていて、ぱくぱくと面白く動いている唇に口付けれは、そこだけはとても暖かかった。
「メリークリスマス、レイヴン」
選択制お題より。
配布元:Abandon
本当は拍手文にしようと思ってたんですが間に合わなかったのでこっちに載せました。
レイヴンは多分無自覚に嫉妬してたんだと思います。それに気付いたユーリは嬉しいんだけど、全くこんなに冷えちゃってもう、みたいな感じ(笑
ちなみにユーリのプレゼントはアクセサリーとかそんな感じのものかと。
2008'12.11.Thu
捏造多数です、注意。
街の中でも特に見晴らしの良い場所にそれはあった。小さい、けれど綺麗な墓石が二つ、寄り添うように建てられていた。その前には、多分毎日換えているのだろう、綺麗なキルタンサスの花が二輪供えられていた。
「あっちで二人幸せにやってるのかね」
その小さな呟きに答える者は、誰も居ない。
「シュヴァーン、あなたきっと剣の方が向いてるわよ」
そう言って彼女が指差すのは少し離れた場所にある練習用の的。決して小さくはないそれに、矢は一本も刺さっていない。周りの壁が無惨に穴だらけになっているだけだ。
「もっと練習すれば絶対当たるようになるって」
「それ以前に弓の才能無いんじゃないのか」
「……なんだよイエガー、嫌味かよ」
「本当の事を言ったまでさ」
横で同じ様に弓を射っていた筈の彼は、早々と練習を切り上げたのか自分の練習の傍観に入っていた。隣の的は美しい程中心にばかり矢が刺さっている。
「でも本当に私は勿体無いと思うのよね。シュヴァーンあんなに剣技上手いんだもの、弓士より剣士の方が似合うわよ」
「というより、このままだと弓技試験落ちるぞお前、本当に大丈夫か」
「うぅ…それだけは勘弁だって」
先程までの茶化す様な視線から本格的に心配している視線に変わって、何だか居たたまれなくなる。しかし悲しいかな、的の中心は未だ綺麗なままだ。
「……全くお前は。キャナリ、此処あと何時間使えるんだ」
「えーと、あと1時間半かしらね」
「そんなに無いな、ほらシュヴァーン早く弓を構え直せ」
「え、なんだよいきなり」
「俺が直々に教えてやると言ってるんだよ」
そう言って無理矢理弓を構え直されたかと思えば、後ろから腕を掴まれて型から直される。彼女が笑っているのが目に入ってしまい、途端に恥ずかしくなった。けれどそこで抵抗するのもどうかと思い、どうにか我慢して彼の指導を受け続けた。30分近く型について散々言われ、その通りに矢を放ってみれば。
「……これでも当たらないのかよ」
今までと変わらず的に掠りもしなかった。
「シュヴァーン、お前本当に才能無いんじゃないか」
「……、流石に俺もそう思っちゃった……」
「もう諦めたらシュヴァーン。何なら私がアレクセイ小隊長に転属の話しましょうか」
「そりゃ酷いぜキャナリ、俺だって必死なのにー」
泣きそうな声でそう言えば、二人とも楽しそうに笑っていた。
手に持っていた一輪のキルタンサスをその二輪の横に供えれば、そこには三輪のキルタンサス。まるでそれはあの頃の様に、仲良く寄り添って並んでいた。
「本当に、どこでずれちゃったんだろうねぇ」
でも俺はまだそっちに行っちゃいけないみたいだからさ、もう少し会えるのが遅くなるけど、勘弁してよね。
選択制お題より。
配布元:Abandon
と言うことで捏造キャナリとイエガー。
攻略本から推測するにキャナリとイエガーは同僚らしく、アレクセイが上官とあったからイエガーは騎士だったんですよ多分。しかも貴族っぽい。なのでイエガーはルー語も無く普通に格好いい感じを目指してみました。
この3人が仲良かったら良いなぁと。多分この後シュヴァーンは案の定試験に落ちて、アレクセイの下剣士の道に進むんですよ。で見返す為に弓練習しまくってああなったと(笑
で、レイヴンのとこだけ描いてみた物↓



街の中でも特に見晴らしの良い場所にそれはあった。小さい、けれど綺麗な墓石が二つ、寄り添うように建てられていた。その前には、多分毎日換えているのだろう、綺麗なキルタンサスの花が二輪供えられていた。
「あっちで二人幸せにやってるのかね」
その小さな呟きに答える者は、誰も居ない。
「シュヴァーン、あなたきっと剣の方が向いてるわよ」
そう言って彼女が指差すのは少し離れた場所にある練習用の的。決して小さくはないそれに、矢は一本も刺さっていない。周りの壁が無惨に穴だらけになっているだけだ。
「もっと練習すれば絶対当たるようになるって」
「それ以前に弓の才能無いんじゃないのか」
「……なんだよイエガー、嫌味かよ」
「本当の事を言ったまでさ」
横で同じ様に弓を射っていた筈の彼は、早々と練習を切り上げたのか自分の練習の傍観に入っていた。隣の的は美しい程中心にばかり矢が刺さっている。
「でも本当に私は勿体無いと思うのよね。シュヴァーンあんなに剣技上手いんだもの、弓士より剣士の方が似合うわよ」
「というより、このままだと弓技試験落ちるぞお前、本当に大丈夫か」
「うぅ…それだけは勘弁だって」
先程までの茶化す様な視線から本格的に心配している視線に変わって、何だか居たたまれなくなる。しかし悲しいかな、的の中心は未だ綺麗なままだ。
「……全くお前は。キャナリ、此処あと何時間使えるんだ」
「えーと、あと1時間半かしらね」
「そんなに無いな、ほらシュヴァーン早く弓を構え直せ」
「え、なんだよいきなり」
「俺が直々に教えてやると言ってるんだよ」
そう言って無理矢理弓を構え直されたかと思えば、後ろから腕を掴まれて型から直される。彼女が笑っているのが目に入ってしまい、途端に恥ずかしくなった。けれどそこで抵抗するのもどうかと思い、どうにか我慢して彼の指導を受け続けた。30分近く型について散々言われ、その通りに矢を放ってみれば。
「……これでも当たらないのかよ」
今までと変わらず的に掠りもしなかった。
「シュヴァーン、お前本当に才能無いんじゃないか」
「……、流石に俺もそう思っちゃった……」
「もう諦めたらシュヴァーン。何なら私がアレクセイ小隊長に転属の話しましょうか」
「そりゃ酷いぜキャナリ、俺だって必死なのにー」
泣きそうな声でそう言えば、二人とも楽しそうに笑っていた。
手に持っていた一輪のキルタンサスをその二輪の横に供えれば、そこには三輪のキルタンサス。まるでそれはあの頃の様に、仲良く寄り添って並んでいた。
「本当に、どこでずれちゃったんだろうねぇ」
でも俺はまだそっちに行っちゃいけないみたいだからさ、もう少し会えるのが遅くなるけど、勘弁してよね。
選択制お題より。
配布元:Abandon
と言うことで捏造キャナリとイエガー。
攻略本から推測するにキャナリとイエガーは同僚らしく、アレクセイが上官とあったからイエガーは騎士だったんですよ多分。しかも貴族っぽい。なのでイエガーはルー語も無く普通に格好いい感じを目指してみました。
この3人が仲良かったら良いなぁと。多分この後シュヴァーンは案の定試験に落ちて、アレクセイの下剣士の道に進むんですよ。で見返す為に弓練習しまくってああなったと(笑
で、レイヴンのとこだけ描いてみた物↓
2008'12.08.Mon
「『彼』が呼んでいる」
サイバックから少し離れた森の奥、定期報告の為に向かったその場所で、最初に言われたのはその一言。またいつもの様に一方的に行動の指示を出されるのだとばかり思っていたのに、その予想外の言葉に一瞬戸惑う。
「……俺様何かしたっけ」
続けて自然と出たのはその台詞だった。同時にこのまま宿に戻らなくても済むだろうかと記憶を探った。別に約束等思い出せなかったし大丈夫だろうと高を括る。あった所で彼の命令より優先するものではない筈。
「そうではない、あれが直々に今後の行動を指示するそうだ」
「それはそれは、まためずらしーなぁ。わかったぜ、これから行くんだろ」
そう言って彼の腕を掴めば空間が一瞬歪む。いつになってもこの瞬間は慣れない。ぞわりと背筋を走る感覚に目を瞑れば、次に開けた時に見えるのはあの見慣れた異質な街。
「お前に会わせたいものがいるんだ」
呼び出され向かった部屋で、彼はそう楽しそうに言った。こんなにも楽しそうにしている彼を見るのは久し振りで、何が彼をそうさせたのかと興味を持たずにはいられなかった。だからこそこっちも快く了承すればそいつに会うことになる。まぁ、拒否する事なんて元々出来はしないけれど。
しかし、そこで見たのは。
「……ミトス様、こいつが何だって言うんですか」
何とも情けない笑みを浮かべた唯のガキだった。
「ルーク、この人はゼロスだよ。僕の友達」
俺の質問を綺麗に無視して、そのガキに向かって俺を『友達』だと紹介する彼に、何を考えてるんだと怪訝な顔を向けてしまえば、怖いほど冷たい笑みが返される。それはしっかりとガキの視界からは外されていて、ルークと呼ばれたガキはそんな彼の様子に気付きもしない。
「へぇ…俺はルーク。よろしくな、ゼロス」
案の定、無邪気な笑顔を俺に向けて自己紹介を始めた。その様子が何故か見た目以上にガキ臭い。しかし、ルークと言う名前をどこかで聞いたような気がするんだけど。
「そう言えば、ミトスも偉い人だったりするのか」
先ほど俺が彼を呼んだときの敬称を思い出したのか、ガキが首をかしげて聞いてくる。その台詞に背筋に悪寒を感じて彼を見れば。
「そんなことは無いよ。ねぇ、ゼロス」
そこには今まで見たことも無いような綺麗な少年の微笑があった。
話がそんなに進展してないですね(苦笑
ミトス様の出番も後1話かな。それからはやっとまたジェイドが出てきます。
しかしまぁ、世間はヴェスだというのに本当ずれてるよね(苦笑
でも今ユリデュク書いてるから次はそれが載せられればいいかな。
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